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INTERVIEW

Japanese

LILI LIMIT

2016年07月号掲載

LILI LIMIT

Member:牧野 純平(Vo) 土器 大洋(Gt)

Interviewer:山口 智男

-今まではソングライターとして歌詞も曲も自分が作らないといけない。もちろん作れる自信もあると考えていたわけですね?

牧野:そうなんです。でも、『#apieceofcake』を聴き直したり、歌詞を読み直したりして、個人的にはめちゃくちゃ反省したんです。中途半端だなって。そこで、僕は詞をもっと大切にしたいと思ったし、メロディは土器に任せた方が僕よりも絶対いいものができるんじゃないかなと思って。それまでは歌詞も曲も作らないといけないような気がしてたんですけど、でも、そうじゃなくても大丈夫、彼なら大丈夫だと思って任せました。

土器:最初は、俺でいいのか?と思いました。メロディを世に発表したことがほとんどないんですよ。唯一の作品が、でんぱ組.incさんの「永久ゾンビーナ」(2016年4月リリースの『GOGO DEMPA』収録曲)(笑)。それが唯一、僕が作ったメロディが世に出た曲だったんですよ。"LILI LIMIT"という名義で、僕が作ったメロディを牧野が歌って、まず大丈夫なのかなって不安もありました。けどこの3年間、牧野の歌を聴いてきて、今の牧野の技術を考えたうえで、歌って気持ちいいと思える、本人も気づいてないようなベストなメロディとか、歌詞がもっとポップに聴こえる音符の長さとかを提供できるという自信もありました。そこは試してみたいと前から思ってたんですよ。今回、それができたのは良かったし、結果、いいものになったと思います。

-最初にできたのが「Living Room」?

牧野:何曲かまとめて作ってたんですよ。その流れで、まず表題曲を選ぼうってことになって、そのときはまだメロも歌詞もないオケだけの状態だったんですけど、"これじゃないか!? イントロからグッとくるし、ライヴの風景が見えるから、これにしようぜ"って。そこから歌詞に手をつけたんで、「Living Room」が最初って言っていいと思います。でも、最初はタイトルが違ったんですよ。Ki/oon Musicからデビューするし、(Ki/oon Musicに所属していた)SUPERCARから影響を受けているし、じゃあ、タイトルは(SUPERCARの曲からタイトルを拝借して)"DRIVE"にしようぜって。"DRIVE"ってタイトルからイメージを広げて歌詞を書こうとしたんですけど、まったく書けなくて。1ヶ月間、ずっと書いては消して、書いては消してって繰り返してたら、本当にわけがわからなくなって。それで1回リセットしようと思って、昼間、自分の家のリビング・ルームでオケを聴いていたら、めちゃくちゃ僕の住んでいる家と合って、いっそのこと"Living Room"ってタイトルで曲を書いてみようって書いてみたら、すごく自信のある歌詞がすぐに書けて。

-今回の4曲って、たぶん牧野さんが住んでいる"4階建ての5階"(※『#apieceofcake』収録の「seta gaya」の歌詞の一節)の部屋で生まれた感情や物語を綴ったものだと思うんですけど、そういうコンセプトは「Living Room」ができたことで生まれたものなんですか?

牧野:そうですね。「Living Room」の歌詞を書き終えたとき、じゃあ次はどこの部屋で聴こうかなって、いろいろな部屋で聴いてたら、そういう歌詞になりました。

-今回、曲調、歌メロともにすごくポップになった印象がある。『#apieceofcake』のときも"リスナーと距離が近づいた"とおっしゃっていましたけど、今回はさらに近づいた。逆にリスナーからすると、ハードルが下がったとも言えるわかりやすさがありますよね?

牧野:土器が曲を作ってきたとき、それはめちゃくちゃ感じました。でも、僕が歌いやすいメロディで、そこもちゃんと考えてくれてるんだなって、そういうところもある意味ポップだと思いました。歌詞もそれに合わせて、ポップにいこうと考えて、今回の4曲は1組のカップルがそれぞれ主人公なんですけど、そういう設定があった方が届くんじゃないかって。特に「Kitchen」(Track.2)はめちゃくちゃポップというか、ウケがいい曲にしたかった。「Living Room」も恋愛(ソング)っぽいニュアンスがあるけど、「Kitchen」は本当に、西野カナさんを超えるぐらい胸をキュンとさせる歌詞を書けたらなと思って、思いっきりポップにしました。

-たしかに歌詞もわかりやすくなりましたよね。物語や歌詞に込められている気持ちは、前作よりもストレートに伝わってきます。それを考えると、前作は難しかったのかなって。

牧野:難しかったと思います。時間が経ってから読み返してみると、何を歌っているんだろうってところがちょいちょいあって。それはマズいんですけど(笑)、でも、今回は土器にメロを任せたぶん、歌詞に専念できたので――歌詞を書く仕事は、最近はベテラン以外、あまりもらえないらしいということを本で読んだので、そういうところにも立ち向かっていきたいと考えたんですけど、それなら今のままじゃダメだと思ったんですよ。このままじゃ歌詞を書く仕事をもらえないし、LILI LIMITも羽ばたかないしってことを考えて、よりわかりやすくしました。

-でも、決して薄っぺらくなっていない。そこはさすがだと思いました。例えば、あんなにアーバンでオシャレな「Bed Room」(Track.4)に、"お味噌汁ある暮らし"ってフレーズを入れるなんて天才なんじゃないかって(笑)。

牧野:ありがとうございます(笑)。歌詞を書いているいろいろなアーティストにインタビューしている本があるんですよ。その中で曽我部(恵一/サニーデイ・サービス)さんが"どれだけ普遍的な言葉で違和感を作り出せるか。それがないと歌詞としての面白さも日常的なものも伝わらない"ということをおっしゃってたんですよ。それを不意に思い出したタイミングでちょうど味噌汁を飲んでいて(笑)。僕は毎朝、味噌汁を飲むから、それを書いてみたらすごいハマッてしまいました。ただ、"お味噌汁ある暮らし"が今の中高生に伝わるのかっていう(笑)。

土器:"味噌汁=家庭"というイメージってまだあるのかなって(笑)。

-その一方で、Track.3「Unit Bath」は、さっき言っていた"優しさと狂気"の狂気をちょっと感じるというか、怖いところがある。そんなところもLILI LIMITというか、牧野さんらしい。

土器:この曲の歌詞は映像が浮かびますよね。

牧野:正直、優しさしか書けない時期があって。例えば、「Boys eat Noodle」(『141121』収録曲)みたいに直接的に狂気を表現したくなくて。"文学的"って言ったら薄っぺらくなるんですけど、そういうアプローチをしてみたら、案外、そういうふうに思えてもらえてて良かったです。ありがとうございます(笑)。