Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

かろうじて人間

かろうじて人間

Member:harogi(Gt/Vo) u(Ba/Cho) 鮭(Dr) 宮田 涼介(Gt)

Interviewer:岡本 貴之

-アコギで弾き語りしたものをスタジオでセッションしてアレンジしていくんですか?

宮田:それぞれが個々のパートを考えてきて、スタジオで1回みんなで通して演奏したものを編曲していく感じでやっています。

u:でもこのアルバムはそんなに詰められてないよね。わりとパッと"こんな感じで"っていうかさ。

宮田:初期衝動的ですね、本当に。

harogi:逆に勢いが出たかもしれないよね。1stミニ・アルバムっぽくなった気がします。

-メンバーそれぞれが音楽を始めたときには、"こうなりたい"というものがあったんですか?

宮田:僕はこのバンドをやる前からソロ(インスト)で活動はしていたんですけど、もともとプロのミュージシャンになりたいという気持ちがあったわけじゃなくて、趣味で始めたのがいつの間にか大きくなっていた感じですね。

鮭:僕も、プロになりたいとかは思っていなかったんですけど、一生ドラムをやっていけたらなとは思っていて。もともと高校と大学ではジャズをメインにやっていたので、プロにならずともお店に行って気楽にセッションとかやって、その程度でいいかなと思っていたんです。でもこういうバンドをやる機会があって"久々に思い切りロックをやってみるか"と思いまして。巡り合わせというか、運が良かったなと思っています。

u:僕は普通に音楽は好きなんですけど、どちらかというと創作する方が好きなんですよね。

宮田:創作が好きな4人なんで。創作という行為に生き様を見出しているというか。

u:それはあるね。

宮田:仕事とか趣味とかそういう次元じゃなくて、作って表現するという行為自体に生き様を感じるというか。音楽とか創作というのは、自分の思想とか価値観をぶつけることだと思うんです。4人にとってそれが共通の認識としてあるんですよね。

-その4人で集まったバンド名が"かろうじて人間"というのはどういう由来があるんでしょうか。

harogi:今の自分はマイナス思考全開な人間なんですけど、高校1年生くらいになるまでは、憂鬱知らずで、クラスに1人はいる、"はっちゃけバカ"なキャラクターだったんですよ。"またバカやってるよ"みたいな。そうやって周りが笑ってくれるのが嬉しかったというか。ただ、高1か高2くらいで、いろいろ悩むことがあって。それは自分が同性愛者だということもあり。

-え、そうなんですか。

harogi:はい、そうなんです(笑)。自分で言うのもなんですけど、クラスでは人気者的な立場だったんですけど、それ故にいろいろと人間関係のいざこざに巻き込まれたり、落ち込んでいた時期があって。だけど、周りの中では明るくてバカやってるキャラクターができ上がっていて。しばらく落ち込んでいたら、周りに励まされるかと思いきや"お前結構つまんねえ奴だな"と言われるようになって。友達だと思っていた人たちがどんどん離れていって、人間というものに絶望したというか(笑)。でも、思い返せば自分はいつも人の顔色を窺っていたり、誰かが求める僕というキャラクターを演じていただけで、自分の個性なんて全然ないことにそのときに気づいて。その求められていた人間を自分は、"かろうじて"演じてきたんですよね。それと、人っていつの間にか作られた常識や道徳を守ろうと必死になっているというか。そこもやっぱり人間じゃない何かが人間になろうとしている行為みたいだなっていうイメージがあって。そこから"かろうじて人間"というバンド名が浮かびました。

宮田:結構あっさり決まって。僕もそのときはこんなに深い意味があるとは思っていなかったです(笑)。でも改めてそういうことを訊く機会があったんですけど、ビックリしましたね。ちゃんと考えてるんだって(笑)。

harogi:それと、小さいころから好きだった絵本がありまして。保育園のときにいっぱい揃っていたんですけど、宮西達也の"ティラノサウルス"シリーズの中に"きみはほんとうにステキだね"(2004年発行)という作品があるんですよ。それは意地悪なティラノサウルスがいて、その意地悪な自分を隠したまま、たったひとりの友達と付き合い続けていたんですけど、ある日ティラノサウルスが"本当の自分は意地悪で嘘つきで、本当の自分を見てほしい"って言ったんですよ。それでその友達が返した言葉が"意地悪な部分とかを知ったうえで、きみはほんとうにステキな僕の友達だよ"って言ってくれてて。昔読んだときは、そんなに感動したりしなかったんですけど、大人になって読んだら号泣してしまって(笑)。

一同:ははははは!

harogi:怪獣が人の心を持っているというか、バンド名はそこからも来ているかもしれないですね。

-かなり深い理由があったんですね。では今作の"ゾウさんが殺す"というタイトルは?

harogi:このミニ・アルバムは、何も隠していない自分の気持ちを歌った曲でできていて。自分という人間を隠そうとする気持ちを殺して"素直になれよ"という意味で、"ゾウさんが殺す"というタイトルにしました。殺すやつはゾウさんじゃなくてもいいんですけど、僕はゾウさんが好きなのでゾウさんにしたんです。その方が嬉しいから(笑)。

鮭:それはメンバーも初めて知りました(笑)。

宮田:未だにそうなんですけど、デモの段階では、タイトルとか歌詞の意味って僕らは教えてもらってないんですよ。今回も、レコーディング後に"これってこういう曲だったんだ"っていうのが判明したりして。例えば、MVも作った「横浜よこよこ」(Track.2)は、harogi以外のメンバーと横浜で遊んでいたんですけど、harogiが新宿にいたので僕らが新宿に行って合流したんです。そこで"お前もっとしっかりしろよ"っていう話になった経緯があって。

-それはどうしてそうなったんですか?

宮田:まだ結成したばかりだったので、バンド活動を続けて行くにあたってどうしていきたいっていう部分があやふやで。特に僕はある程度先を見据えてやらないと気持ちが乗ってこないタイプなので。それで、新宿で集まったときにそういうことをひっくるめて"お前もっとしっかりしろよ"っていう話になって。タイトルは横浜ですけど、出来事自体は新宿なんです(笑)。