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INTERVIEW

Japanese

アンテナ

2016年02月号掲載

アンテナ

Member:渡辺 諒(Vo/Gt) 池田 晃一(Gt) なかむら よしひさ(Ba) 本田 尚史(Dr)

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

-なるほど。歌詞を書き始めたころからずっとそういう意識でしたか?

渡辺:いや......それまでは100人が聴いたらその100人に"あ、いい子なんだね"って言ってもらえるような歌詞をずっと意識してたんです。ただ"いいバンドだね"って言われているバンドはいっぱいいるし、歌モノのバンドも世の中にはありふれてるので、その中で"自分にしか言えないことって何だろう?"って考えるようになりました。この25、6年の人生で泥水も飲んできたつもりだし、もちろん"生きててよかった"って思えるようなこともいっぱい経験できたし。そういうところで言うと気持ちの振れ幅は他の人より大きいはずなので、自分の人生をさらけ出したうえで、聴いてくれる人と一緒に本当の意味で"また明日も頑張ろう"って言うことができたらいいなと。自分が飲んできた泥水や感じてきた闇を隠したままでは堂々と曲を出すことはできない、という結論に至りました。

-その結論に至ったのはいつごろですか?

渡辺:下北沢SHELTERでnicotenやHOWL BE QUIETと3マンをしたときなので、2014年の7月ですね。そのときある人に"誰にでも言えることはもう今の時代には届かない。だからもっとちゃんと考えた方がいいよ。特に歌モノっていう、1番メロディと言葉が届くジャンルなんだから、歌詞はもっと掘り下げて。お前にしか言えないことが絶対あるからちゃんと考えなさい"って言われたんです。それ以来"俺にしか言えないことって何だろう?"って考えるようになって。100人いたら100人の人生があるし、"嬉しい"というひとつの言葉の中身も100人で違うということを描くのが人間のリアルだと、それが俺にしか歌えない/書けないことだと思いました。とはいえ"人間のドロドロした部分を書きたい"といっても今までのアンテナを知ってくれてる人はそういう目では見てないし、果たしてそれでいいのかとも思ったんですけど。

-そういう渡辺さんの中の葛藤や、その結果としての歌詞の変化は、他の方にはどう映りました?

本田:(渡辺は)自分の内面のことをあんまり言わない人なんですけど、歌詞を見てると意識が今までと違う方面に行ってるんだろうなってことは何となくわかって。ひねくれてるっていうのもすごくわかるんですよ。自分もそういうところがあるんで。だから、素直にただ"愛してる"っていうだけの歌詞をこのバンドでやるのは違うなっていう意識があるんだと思います。

池田:明らかにそのあたりの時期に書いてくる曲から歌詞が変わったので、"おおーっ"と思いましたね。でも俺はすごくしっくりきた。

渡辺:一度振り切って「大発覚!メシウマスキャンダル」っていう曲を作ったんですけど(笑)。

-これまたすごいタイトルですね(笑)。

渡辺:その曲を作ったときはさすがにメンバーにも"いやいやいや! さすがにこれは変えた方がいいんじゃない?"って言われましたね。結局そのままTwitterとかにも載せたし、ライヴでも何回かやったし(笑)。一度どこまで振り切れるかっていうのをやってみたんですけど、でもただひねくれてるだけで放出しちゃうとそれは違うなと。結局、ドロドロしたところを掬い上げたうえでのリアルな愛を描きたい、めちゃめちゃリアルな希望にしたいっていうのがあるので。

-今回の『底なしの愛』もそういうアルバムになってますよね。様々な感情を経て、それでも最終的には前を向いている。

渡辺:そうですね。今回は歌詞も随分悩んで書いたので。

-特にどの曲が悩みました?

渡辺:Track.1「底なしの愛」は歌録りの前日まで違うメロディでした(笑)。

-そんなことってあるんですね(笑)。

池田:できたときビックリしたよね! メロディも歌詞も違うって(笑)!

渡辺:ははは! もうめちゃくちゃ変えたんですよ、「底なしの愛」は。

本田:タイトルも4回ぐらい変わってたよね(笑)。

なかむら:もともとライヴでも1ヶ月ぐらいやってたのにね。

渡辺:ただレコーディングのときに"良くも悪くもアンテナっぽくない"っていう話になって。それで歌詞もメロディも書き直したもののどうしても自分の納得いくものができなくて。それで、歌録りの前日にでき上がったものを録ったのでメンバーに確認する時間もなかったんですね。でも結果的にいいものになりました。

-「底なしの愛」は歌詞もメロディも苦労なさったとのことですが、この曲含め、全体的にポップで聴きやすいアルバムになっていますよね。でも、ポップで聴きやすい曲というのは、一方でただ消費されるだけの音楽になってしまうという危惧も少なからず含んでいると思うんですよ。例えば、リズム・パターンが四つ打ちの音楽とフェスとの関連性なんかもよく取り上げられてますし。

渡辺:それこそ「底なしの愛」は自分の中でよくできたなって思ってて。この曲、四つ打ちなのにノレないんですよ。四つ打ちなのにダンスじゃない。逆に、前作に収録した「ブックメーカー」とかはワーッと盛り上がれるような曲を意識したんですけど......。