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INTERVIEW

Japanese

MASH

2015年11月号掲載

MASH

Interviewer:白崎 未穂

2001年に7人組ヒップホップ・バンド"ASIAN PIMPS"を結成。3MCのひとりとしてバンドで活動する傍ら、MASHとしてソロ・アーティスト活動をスタート。2006年にバンドは惜しくも解散するが、同年には『情熱のばか』でソロ・デビュー。翌年8月にミニ・アルバム『天然音源』でメジャー・デビューを果たす。さらに2013年には自身のレーベル"Bluestar Records"を立ち上げ、これまでに6枚のアルバムをリリース。そして今年、デビュー10周年を記念したベスト・アルバム『MASH BEST 新しい星座 2006-2015』をリリース。10年という月日を経て変化し続ける音楽性と、多くのことを受け止めようとするその感受性。そして、愛に溢れたベスト盤についてMASHに訊いた。

-ソロ活動を開始した当時は、追いかける存在や目標となるような方はいらっしゃったんですか。

当時は、Zack de la Rocha(Vo/RAGE AGAINST THE MACHINE)でしたね。最初にバンドでコピーしたのもレイジだったので。でも、今の彼らからは彼らの持ち味であるはずの怒りをあんまり感じられないので、目標というか、今はもっと自分の表現に素直でありたいと思っていて。そういう部分だと、日本人ならSIONさんとかですかね。対談きっかけでお会いできたんですけど、人って、誰かと対話をするときに"自分をこう見せたい"とかあると思うんですよ。特に長いキャリアだとそういった部分がたくさんあるのかなと思ってたんですけど。初めて会った僕にすごく紳士で、素直にちゃんとした言葉を真剣に返してくれて。そこに感動しました。しかもSIONさんてなんだか歌を聴いている感じなんですよ。喋ってる感じや出てくる言葉がそのまま歌になるような。あとは最近だと、SIGUR RÓSやBON IVERとか。ネガティヴを抱きしめるようなフォーク・ロックが今は好きですね。

-11月11日にリリースする活動10周年を記念した初のベスト・アルバム『MASH BEST 新しい星座 2006-2015』にもそういった部分が色濃く出てると思いますが、Track.3「21世紀少年」など初期の作品は、やはりヒップホップ色が強くて、最近になればなるほど、フォーク・ロック寄りなのかなと。ご自身でこういった音楽性の変化はどういうふうに捉えていますか?

どんどん素直になってる気がしますね。やっぱり20代のころとか、こうじゃないといけないみたいなのがあったと思うんです。ヒップホップ・マナーというか。なんか、そういういろんなことを気にしていた気がします。ヒップホップやレイジが初期衝動ではあったけど、それ以前にもっと影響を受けたものがあったんじゃないかって思います。音楽を始めるキッカケがヒップホップだっただけであって。ヒップホップを聴く前にTHE BEATLESも聴いてたし、たまも聴いてたし、吉田拓郎さんも親の影響で聴いてたし。たまたま出会ったヒップホップが強烈すぎて"なんじゃこれカッコイイ!"ってなったけど、自分がいざデビューして作品をどんどん出すたびに、自分の中を探すという作業をするんですけど、"あれ、俺ってなんだったっけな......"ってなってくと、ヒップホップだけじゃなくて、J-POPもあったし、フォークもあったし。自分の声は唯一無二だと思ってるので、この声で歌詞のフィルターを通せば、全部"俺"になるんじゃないかなっていう感じで、どんどん歌を作ってるって感じですね。

-ソロ活動を始めたころって、ベスト・アルバムをリリースするイメージってありました?

無かったですし、ベスト盤って嫌でしたね。昔からいろいろみんな言うじゃないですか。"ベストは会社の意向だ"とか。でも最近は "ベストは会社の意向だから私は自分でリリースしますビジネス"とか、逆にそういうのが今度は見えてきて、"ベスト嫌だから買わないで"って言うのがアーティストのアティチュードで、それがカッコイイっていうふうに持っていこうとしてるけど、自分がいざベスト盤をリリースするってなったときにすごく嬉しかったんですよね。昔一緒にやっていたavexのA&Rから久々に連絡が来て"もう1回やろうか10周年だし"っていう話があったときに、仲間と一緒にできるなら全然嬉しいなと素直に思っちゃったんですよね(笑)。

-"ベスト盤"にマイナス・イメージを持っていたけど、自分がリリースするとなるとプラスに変わったんですね。

プラスですね。曲順も決められたし、収録曲も全部自分で決めさせてもらったんで。それが1番大きな理由でしたね。めちゃくちゃ考えましたよ。

-どういうふうに決めていったんですか?

やっぱり、自分の中だけで決めると、すごく偏るんですよ。コアな部分を見て欲しいって気持ちがあると、その思いが揺れ始めたり。シングルとかタイアップがついていない曲だけの1枚にしたいなとか。そういうのを5回ぐらい繰り返して、最終的にシングルとかタイアップがついてる曲を入れた方がいいんじゃないかって(笑)。あとは、なんだかんだ10年の間に、ひっついたり離れたりしてくれたファンの方が、"あの曲入ってる、この曲入ってる"って喜んでくれるベスト盤になったらなって。そういうのはありますね。

-ベスト盤の制作はどのくらいの時期だったんですか?

今年の7月頭にイギリス行って、そのあとですかね。1~2ヶ月ぐらいかけて作りました。イギリスは"行こう"って思った3日後に行きました(笑)。

-"思い立ったが吉日"ってやつですか(笑)。イギリスへはなぜ?

12~13年前、当時のバンド・メンバーとニューヨークに行ったんですよ。そのときはヒップホップが大好きすぎて"ブラック・ミュージック以外は聴かねぇぜ"みたいな時期があって。ブラックなグルーヴを知らずに、ロック鳴らすんじゃねーよなーみたいなこと言っちゃったりして、全然ソウル聴いてないのにそんなこと言って染まっちゃってて(笑)。その染まりが取れてってデビュー10年目、今どこへ行きたいかなって思ったら、やっぱUKロックとか好きだったし、リバプールにも行きたかったし。だから、今回はひとりで1週間だけイギリスに行ってみようかなって。

-何か気持ちの変化などありました?

むちゃくちゃありましたね。言葉から何からすべてをもっと大事にしようと思いました。というのも、英語が喋れないから言葉が通じなくて、それでも知ってる言葉を駆使して1週間過ごしたんです。それで、日本語だったらたくさん言葉を知ってるのに、大切なことをちゃんと伝えられてたかなって思っちゃったんですよ。なので、"伝えられていなかったことを、ちゃんと伝えよう。こんなに言葉を知ってるんだから"っていうふうに気持ちが変わりましたね。あとは日常のリアリティが、実は1番感動するんだなと。映画とか、音楽とかがメインディッシュではなくて、それぞれの人生がメインディッシュだということを再確認できましたね。