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INTERVIEW

Japanese

MASH

2015年11月号掲載

MASH

Interviewer:白崎 未穂

-「太陽とカーテン」は2011年11月リリースのアルバム『光とかげ』に収録されていた楽曲ですが、"震災がなければきっと浮かばなかったことだけはたしかです"と当時コメントしていました。この時期はMASHさんにとってどういう時期だったのでしょうか?

このころは落ち込んでましたね。名古屋でも結構揺れたんですけど、当日はレコーディングしてて、ちょっとヤバそうだから帰った方がいいってことになってレコーディングが中止になったんです。しばらくすると被害がどのくらいかっていう情報も入ってきて......。戦争は体験してないけど、震災は体験したじゃないですか。国民全員が体験したどうにもできない悲惨なこと。戦争と比べるのも違いますけど、それほど強烈過ぎる出来事で、歌の無力感とか、そういうものを味わったりして。だからこそ書かなきゃいけないって感じて、必死に書いた歌です。失くなったものを探すんじゃなくて、未来を作る歌。未来ってやってくるのを待つんじゃなくて、作り出すもんじゃないかって思ったのかもしれないですね。失くなったものを目にして、この曲はベストに絶対入れないといけないと思ってました。

-あの時期に作り出した楽曲ってきっと想像以上に記憶に残るものになっていると思いますが、その他の楽曲で思い出深い曲はありますか?

Track.4「いちばん星」は思い出深いというか、自分自身が新たに歩き出した楽曲ですね。メジャーの契約がなくなって、事務所もなくなったときに書いた曲。自分ひとりでもやっていくって決めたときに書いた1曲目の配信シングル。楽曲制作するときもバック・バンドのメンバーやスタジオの人は変わらず力を貸してくれました。元マネージャーも自分でバイトしながらもいろんな現場について来てくれて。配信の手助けをしてくれたのも元いたレーベルのA&Rだったり。そして、この曲を持って小倉のFM局の人に会って、ウォークマンですぐに聴いてもらったんですけど、局の人が"これこのまま俺に預けてくれないか? 1年間のパワープレイにしたいから"ってその場で言ってくれたんですよ。"この業界、メジャー契約がなくなったら周りから人が一気にいなくなるよ"って、そんな噂を聞いたこともありましたけど、僕は失くしたものより得たものの方が大きかったです。もしかしたら何も失くしてないのかも......とはいえ、収録曲全部思い出深いんですけどね。

-当然そうだとは思います。

あ、あと、Track.16「笑顔が似合う人」も好きですよ。自分で書いてて、泣きながら作った曲なんで。ときどきあるんですよ、勝手に涙が出てくること。"これなんだよ、俺が歌いたかったのは"っていう曲です。"笑顔が似合う人"っていう意味と、"人は笑顔が似合う"というふたつの意味として捉えれるんです。だから"笑顔が似合う人"って言葉が出てきたことがすごく嬉しかったですね。「太陽とカーテン」も、その言葉が出たことも初めてでしょって思うし、Track.14「七月六日」もTrack.17「稲穂」も好きだしなぁ......ノスタルジーが出てくるのが好きなんですよね(笑)。

-あぁ、「七月六日」の歌詞にでてくる"明日は七夕よ... 晴れると良いわね"って言うお母さんのセリフはすごくノスタルジーを感じますね。

ですよね。THE BEATLESの「The Long And Winding Road」(1970年リリースの13thアルバム『Let It Be』収録)みたいなイメージですよね。それはなんか降りてきて、ノスタルジックな感じにできたんですよね。そういうところがもしかしたら自分のいいところかもしれないですね(笑)。なんていうのかな、こういう少年時代と今が交差したような。"みんなもともとこども"みたいな。そういうところをみんな忘れてしまったりするので。そこを思い出せれば、みんな素直になったり、がむしゃらになったりするんじゃないかと。あのころ、徹夜してゲームやったなとか、夜中に家を飛び出して好きな子に会いに行ったとか、そのときのパワーってものすごいですもんね。でもみんな昔はそういうことしてたでしょって。みんな元こども。

-Track.4「いちばん星」の歌詞にある"ベッドの横のコルクボードに仲間との写真に混ざって貼ってた10年後の未来/夢と目標/今年がそのちょうど10年目さ"という歌詞のように10年前の当時、思い描いていた目標はありましたか?

昔も今もブレずにあるのは、身近な家族とか仲間とか、近くの人に感動して欲しいってことと、そういう生き方が歌になればいいなってどこかしら感じていたので、よりそういうふうに自分がシンプルになってきてると思います。

-そういった目標みたいなものは今も変わらないんですね。

今の方がより強くなってますね。砂漠に水をやるというか、"水をやり続けないといけないでしょ、ここまでやらしてもらったんだから"って感じですかね。花を摘む作業は意外にできるけど、砂漠に種を蒔くと花は咲かないかもしれないし、そこに水をやり続ける作業って大変で。だけど、花が咲く可能性があるんだったら情熱を燃やす覚悟というか、その価値はありますよね。自分にとって。

-このベスト盤をリリースすることで一区切り感はありますか?

このベスト盤ができあがってから実は新曲を作ってなくて。今は書きたいマインドになってるんですけど、イギリス行ったあとに取り掛かったベスト盤ですけど、イギリス行く前と、あとでは何かしら変わってると思うけど、根本的なところはブレてないなと。伝えたいことがここにあってそれをちゃんと"言えてるな"って。で、この1枚を何回も聴いていけばいいじゃんってなってたんで、新曲を作るという気分にはなってなかったんですけど、最近久々にまた作りたいなって思ってきてるんで。脳の中で止まっていた針が動き出してる感じ。制作モードに入ってるというか。また次の10年に向けて、ではなくて、次の1枚だとか次のライヴに向けて、また気持ちが楽しくなってます。いつもの営みが復活みたいな。

-ライヴというと、来年1月23日にはMASHデビュー10周年記念ライヴ [MASH HOUR"新しい星座"at Zepp Nagoya]が開催されるとのことですが、どんなライヴになりそうですか。

これはもうベスト・ライヴですね。ベスト盤の曲も踏まえて自分の今までやってきた中でも最高のライヴをしたいと思ってますね。今までとこれからが交差するような時間にしたいです。そして歌力みたいなものと人間の力を全面に出して、僕を使って表現したいなと思ってます。