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INTERVIEW

Japanese

MASH

2016年11月号掲載

MASH

Interviewer:荒金 良介

昨年はデビュー10周年を記念したベスト盤『MASH BEST 新しい星座 2006-2015』を発表したMASH。彼が前作より約2年ぶりとなる7thアルバム『黄金の季節』を完成させた。ヒップホップ・バンド、ASIAN PIMPSとして音楽キャリアをスタートし、2006年にソロ・アーティストとして活動を始め、今年1月にはZepp Nagoyaワンマン公演を成功に収めた。今作は初めて東京のスタジオで録音を試みた野心作であり、MASHという、いちアーティストにとって今後の指針となる重要作と言えるだろう。今作同様、インタビューでも赤裸々にその思いを語ってくれた。

-MASHさんは愛知で生まれ育ち、ずっと地元を拠点に活動されてますよね?

そうですね。愛知県春日井市で生まれ育って、名古屋のクラブやライヴハウスに通うようになりました。僕は田舎育ちなので、子供のころの僕からしたら名古屋が大都会だったんですよ。自分が音楽をやり始めたころは、その名古屋の街はヒップホップ・カルチャーが噴火する前のマグマみたいに煮え滾ってたんです。ヒップホップは地元をレペゼンして、その土地の言葉で歌う。それを肌感で覚えちゃったから、気がつけばずっと名古屋在住ですね。

-名古屋といえばILLMARIACHIとか、強烈な個性を持つヒップホップ・グループもいますよね。

高校のころ、友達が学校にILLMARIACHIのCDを持ってきて"これ俺らの地元のグループらしいよ"って。名古屋にいながらもCDを出してる人がいることにまず驚きだったし、今まで聴いてきたどんな歌よりも強烈というか。何のフィルターも通さないで届くというか。それと同時に、なぜか僕にもできそうとも思わせてくれたんですよ。

-音楽キャリアのスタートはヒップホップですけど、歌への目覚めはいつごろだったんですか?

18歳で初めてバンドを組んで、そのときに自分を表す表現方法がラップだったけど、ソロ・デビューしてラップのアルバムを出すたびに"俺ってラップだけじゃないだろ"って違和感もあった。じゃあ一度、気持ちのままに歌ってみようって書いてできたのがメジャー2枚目のアルバム(2009年リリースの『ボロボロのスニーカーとFREEDOM』)に入ってる「稲穂」って歌だったんですよ。韻を踏みながらメロディで言葉を繋いでいく。それができたときに視界が開けていくような気がしました。自分だけの翼を手に入れたというか。

-もともと歌うことは好きでした?

歌うことは今思えば好きでした。小学生のころから、ラジオから流れてくる歌をカセットに録音して歌詞をノートにわざわざ書き出して、その歌詞を読みながら何度も歌ったり。 あと、ちょうど中学生のころに遠足のバスでカラオケ大会みたいなのがあり、率先してマイクを握り、普段はあまり喋らないのに、"歌うと変わるよね"と同じクラスの女子に言われましたね。

-(笑)どう変わるんですか?

歌うときだけなんだか自信が漲ってるというか(笑)、なんか歌声を発したときにようやく誰かと繋がれた感触があったんですよね。初めて目の前の人とちゃんとコミュニケーションが取れた気がして。そのあとのラップもそうだけど、そういう実感から歌の力を知るようになりました。ヒップホップに出会う前はTHE BEATLES、SEX PISTOLS、CHAGE and ASKAとか、あらゆる音楽を聴いてましたからね。僕はニュー・ジェネレーションの世代で、いろんなカルチャーが出揃ったあとになるけど、そこで何ができるかなと。

-好きな音楽の傾向ってありますか?

言葉や歌詞が強く訴えてきて、何かを変えようという姿勢で歌ってる音楽を聴くと伝わってきますね。

前回のインタビューでもおっしゃっていたZack de la Rocha(RAGE AGAINST THE MACHINE)とか?

そうです。ほかにPatti Smith、Bob Dylanとか......。

-今、話題の人ですね(※Bob Dylanがノーベル文学賞を受賞するも、音信不通となった)。

昔から好きでした。音信不通ってところがまた面白いし、世間の人はBob Dylanらしいと思うだろうし、ブレてないなと。自分に酔わずに、現実や自分のことを淡々と歌ってる人が好きかもしれない。

-それと、オフィシャル・サイトのプロフィール欄に"歌うたい。詩人。"と書いてありますけど、この"詩人"というのが気になりました。

僕って歌手と言えば歌手なんだけど。言い得て妙みたいにバッチリ当てはまる肩書きがないんですよ。僕が好きなDylanやPattiは歌手でもあり詩人なんです。つまり言葉の人っていうか。ならば、おこがましいかもしれないですが、僕も詩人でもありたいなという感覚です。言葉の組み合わせで新しい発明に似た感動は作れるんじゃないかと信じていつも歌詞を書いてます。