Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

MASH

2015年11月号掲載

MASH

Interviewer:白崎 未穂

-そういったことを感じたあとに、今回リリースするベスト盤の制作に取り掛かったとのことですが、ベスト・アルバムのタイトルとなった"新しい星座"に込めた意味は何ですか?

星って、すごい時間をかけて地球に届いている光だとか言うじゃないですか。そういう感じで、昔書いた曲をもう一度リリースすることで、その曲と初めて出会った人たちが耳にすること。昔の曲だけど、その人にとっては新しい曲になる。だから、新しい曲と古い曲を並べて組み合わせるって、星座みたいだなと。曲順も、最初は、Track.11「太陽とカーテン」から始まって、Track.10「Lovers」はわかりやすく1番最後だったんですよ。でもよく考えたら、新しい星座って言ってるからごちゃ混ぜで本当にいい流れで並べていいんじゃないかなって。だから自分の中で1番きれいな並びにしてみました。どの曲がどう活きるかっていうことを考えましたね。この曲があるから、次の曲が活きる。新たな意味が生まれるように。

-なるほど、だから"新しい星"ではなくて"新しい星座"なんですね。これは何がキッカケでインスピレーションが?

例えば、月~金曜日も、人が勝手に決めた1週間じゃないですか。もしその1週間がなかったら、永遠に同じ毎日だなとか。今日が月曜日ってわかって過ごすのと、わからずに過ごすのってすごく違うと思うんですよ。区切りがなくて、ただ春が来たなって季節を感じるぐらい。もしかしたらそれって絶望かもしれないし......だから、曜日って文明が発達して、誰かが決めてくれたことだと思うんですよ。そういうことって、僕らが今生きていて、何かできてるのかなって感じて。じゃあ新しい星座を作っていこうよって。そういう感じでこのタイトルをつけました。

-難しいこと考えますね。

寝てるとき以外は考えてますね。今では車が通ってる道路も、今僕たちがいるこのビルも、もともとは畦道だったんだとか。そういうことを言いたいのかもしれないです。今は複雑だけど、もっとシンプルだったんだって。でもいろんなものが複雑になっていくと1000年後とか、誰もいなくなっちゃったりするのかなとか。そうならないために、もともとあった幸せみたいなものを歌いたいなっていうのが今かもしれないです。自分の生活レベルで、目に見える歌を歌っていくのが、リアリティかなって。そういったことも心情の変化ですね。レイジから影響受けて書く曲じゃなくて、ようやく自分の言葉を見つけた感じです。昔も言葉を探していたと思いますけど、なんかもっとシンプルになってきました。

-それもそのはず。ベスト・アルバムに収録されている楽曲が最近のものになればなるほど、優しい楽曲が増えてきてるなと思います。

そうなんですよ。優しさが1番強いと思ってるんですけど。いつもニコニコ笑ってる人の裏側にはものすごく深い悲しみってあるかもしれないじゃないですか。でもそれはその人が勇気を振り絞って笑顔でいる。それはなぜかというと、誰かに自分と同じ環境になって欲しくないとか、そういうふうに振る舞う優しさって強さだと思うんですよ。だから、そういう人たちを、もうひとりの自分と思えれば、世の中もっと良くなると思うんですよ。

-もうひとりの自分だと思うってどういうことですか?

結局、自分を知ることって他人を知ることなのかなって気がするんですよ。自分をどんどん掘り下げて知っていけば知るほど、もしかしたらこの人も同じなんじゃないかって思えば、その人に対する態度も変わる。例えば、車が自分の前に入り込んできて、"危ねぇこのやろう!"って思う。その相手が自分の友達だったとしたらもっと違う感情になると思うんですよね。自分を知らずに他人を知ろうとするから、"お前あーした方がいいんじゃない"とか言っちゃう。その前に、自分の強さや弱さって何だろうとか、己を知ること。自分を知れば知るほど、その人のことが解ってくるんじゃないかなって。

-そういう優しさや思いやりが最近の楽曲に影響しているということですね。今回唯一の新曲となる「Lovers」ですが、楽曲的にはCOLDPLAYの明るい部分を意識してるのかなって感じましたがこれは?

そうですね。Chris Martin(Vo/Gt/Pf)も周りのいいものにすごく感化されるミュージシャンだと思うんですよ。彼はすごくて、James Blakeみたいなチル・ウェイヴが流行ったら急に『GHOST STORIES』(COLDPLAY 2014年リリースの6thアルバム)でガンガンそういうのを作ったり、EDMが流行ったら本当に思いっきりやっちゃってるし。RIHANNAが流行ったらいきなりフィーチャリングしてるし。最初は違和感あったんですよ。乗っかり感ハンパないなって思ってたんですけど、逆に最近はすごいなって域になっちゃって(笑)。解りやすくポップスに昇華させて1,000万枚売るみたいな。この人たぶんすごくシンプルに生きてるのかなって、好きなものをそのまま出しちゃう感じ。もっと楽観的で、好きなものをすぐ出せるからこそCOLDPLAYはわかりやすくて熱いのかなと。そう思って意識して聴くようになってましたね。

-歌詞的には愛に溢れたような内容だと思いますが、ブリッジにある"心を残して人はなぜ先を急ぐ"という部分が、なんとなく死を連想させるような一節だなと感じたのですが。

死だけではないんですけど、みんな先を急いでるなと思っていて、それをうまく表現できないかなと思いました。死も急に訪れるし、そればっかりは決まってることです。だけど精神性はこの世に残ってる......。その一節はひねり出した一節なんで、響いてもらって嬉しいですね。"心を残して人はなぜ先を急ぐ"って、ブリッジの中でもちょっと違うんですけど、そこがこの曲の中で実は1番伝えたかった言葉だったんです。"今を生きろ、そのままでいいよ"っていうのを伝えたかったというか。急いでる人がいたらそう感じて欲しいし、何か病気になっているのならもっと私頑張ろうって感じてもらえるかもしれない。そういう普遍的な言葉として書いたつもりです。