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INTERVIEW

Japanese

リコチェットマイガール

2015年07月号掲載

リコチェットマイガール

Member:稲荷直史(Vo/Key)

Interviewer:山元 翔一

-今後もギターを使って作曲して音楽の幅を広げていこうっていうスタンスなんですか?

それは......今回、僕がギターをつまみ食いするのはいいのか?って思うんですけど......まあ誰の悪口でもないんですけど、ギタリストが片手間にシンセを弾いているのが許せなくて(笑)。"いや、お洒落でやってるんじゃねえから!"って。僕、キーボードがお洒落って思われるのが嫌で、最初のころは振り回してたりしていたんです。それで1台壊したんで振り回すのはやめたんですけど(笑)。でも、実はこの作り方は1回しているんですね......最初のデモ音源に入れた「虹」って曲は、"ギター・ヴォーカルはやらないけどこういう曲があったらいいよな"って思ったところから始まってて。あとはギター・ヴォーカルの妄想ですね(笑)。

-わりと妄想癖がありますよね(笑)。それはいわゆる"憧れ"みたいなところとは別なんですか?

憧れももちろんありますけど......なれないんですよね、そもそも。だってみんな華奢じゃないですか(笑)。それにギター・ヴォーカルって、主人公気質というか戦隊モノでいうと"赤"じゃないですか?僕はもう"黄色"か"緑"なんで、主人公じゃないヤツが主人公に立ち向かっていくっていうものを描くというか。同じようなことを思っている人に、主人公だけが輝くわけじゃないから大丈夫だよって言いたいというか。あと、キーボード・ヴォーカルがもっとポップなものに、もっとスタンダードなものになればいいなって思っていますね。って言葉にしたらそこから遠ざかっちゃう気がするからあんまり言いたくないんですけど(笑)。

-収録曲についてもうかがいたいのですが、Track.2「待ってる」は、ギターや鍵盤のサウンドにスケール感のある楽曲ですよね。この曲は、18~19歳のころに作った曲だとおっしゃっていましたが、今作に収録するにあたってどのように仕上げていきましたか?

これを最初に聴かせたときに、ドラムが感銘を受けてくれて。"これはスケール大きいよ!"って(笑)。それでもっとスケール感のアレンジにしようっていうように進んでいきましたね。本当に何の知識もないときに作っていた曲だったので、バンドが形にしてくれたって思いますね。自分でもびっくりしています。

-これをリード曲にしなかったのかって思ったんですよね。さっきおっしゃってた、"リード曲を作る"ということを念頭において作られたのはTrack.7「ターミナル」だと思うのですが、この曲にはバンドの覚悟のようなものが滲んでいて、これからのリコチェットマイガールを担う楽曲かなと感じました。

この曲に関しては、ぎりぎりになって"これはMVになる曲です"っていう僕の宣言から始まった曲で(笑)。これもギターをスタジオに持って行ってやった曲で。歌詞に関しては歌録りの直前まで歌詞を書き換えてて。直前の直前まで書き換えるくらい、いろいろ迷ったんですね。覚悟や決意みたいなものを前面に出すか、もっとさらっとしたものにするか、心揺れながらも"でもこうするしかないや"っていう感じで書いて。

-その迷いみたいなものが曲にも反映されていますよね。覚悟を決める前ってものすごく悩むじゃないですか? ここにあるのは、その葛藤も込みでの"覚悟"なのかなって思いました。今作を作るにあたって迷いとか悩みってありました?

前作はオルタナに寄せちゃったしどうしようかな、っていう方向性の悩みはありましたけど。結果として曲がパーツとして揃っていって、作り始めたらすんなりできました。でも2月は地獄でしたね。7曲目以外は歌詞もすっと書けたんですが、自分からすっと出たものはあまりにも"素"なので。今までは、ロジカルにこねくり回して作ってたんですけど、今回、素のものが出てきちゃったので"これでいいのかな?"っていう不安はありましたね。

-実際に持って行ってメンバーのみなさんの反応はどうだったんですか?

ギター(石川拓実)とベース(渡辺裕之)は結構淡々としていてで。そのまま受け止めて自分の中で消化して持ってくるんですけど、ドラムがちゃんと言葉にしてくれる人なので。それはモチベーションになりましたね。3月にワンマンをやったんですけど、そのときにこっそりと新曲を全曲やって。リリースすることもその場にいたお客さんにだけ言って、"絶対にTwitterに書くなよ(笑)"って。ありがたいことに本当に書かないでいてくれたんですけどね。だからかはわからないですけど、新曲をその場で聴いてくれたお客さんが"この曲がよかったです""この曲のここがよかったです"っていうのを結構みんな直接言ってくれたのでそれで後押しされた感じはありましたね。

-そのお客さんからのフィードバックもあって作り上げられていったと。今作で2枚目ですけど、リコチェットマイガールの次の課題があるとすればそれは何でしょう?

今回ニュートラルな作品にしたので、次回はまた改めて自分たちの音楽のバックグラウンドを前面に出した、音楽的なところでも勝負できる1枚を作れたらもっと大きなステージで戦えるんじゃないかなって思います。

-ちなみにその音楽的なルーツとは?

僕は歌謡曲、J-POP、ギター・ロックみたいなところから入って、グランジ、シューゲイザー、ポスト・ロックみたいな音楽も好きで。そういうバンドのサポートをしていた時期もあって。あとはメンバーそれぞれが聴いてる音楽も関心もばらばらなので、3枚目はそれらをかき集めて何かを変えられる1枚にしたいですね。

-1枚目はデビュー作で、2枚目でニュートラルなものを作って、3枚目で挑戦的なものを作ってということですかね。

革新的なもの......音楽的な深みもありつつ、スタンダードなものを作れたらと思いますね。

-誰が聴いても好きっていうところを大事にしつつ、自分たちのルーツ的な要素やテイストを入れていきたいと。

わかりづらかったものをわかりやすくするっていうことを1番やっていきたいんで。そういう音楽的にわかりづらいものをわかりやすくする方法みたいなものを、今回のツアーで探っていければと思います。

-なるほど。リコチェットマイガールはバンドとしてどのような存在を目指していきますか?

僕がキーボード・ヴォーカルっていうこともあって、バンドとしてとっつきにくいハンデみたいなものがあると思うんですね。スタンダードなものになりたいっていう願望ありきの話ですが、ギター・ヴォーカルのバンドにはない部分がいっぱいあると思うんで......アンチ・ギター・ヒーローを掲げて(笑)、上手く言葉にできない人の言葉になること、主人公じゃない人に向けて、主人公じゃない人間なりに伝えていきたいっていうところがひとつですね。もちろんメジャー・デビューしたいとかっていう気持ちもありますけど......あ、あと28歳で武道館に立ちたいですね。28歳で。

-28歳というと、27歳で死んでいったロックスターたちに対してという話ですか(笑)?

いや、直感です(笑)。別に武道館じゃなくていいんですけど、自分の目の前にあることにひとつひとつ向き合っていけば、そういう大きいステージにもちゃんと挑戦できるのかなって。何より続けていくことが大事かなって思いますね。27歳で死なないように(笑)、頑張ります!