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INTERVIEW

Japanese

wash?

2015年05月号掲載

wash?

Member:奥村 大 (Vo/Gt) 河崎 雅光 (Ba) 杉山 高規 (Dr)

Interviewer:山口 智男

-活動を続けながらバンドに取り組む気持ちって変化しましたか?

奥村:最初、前作を出した直後に辞めたギターと僕が始めたんですけど、ロック・バンドをやりたいって結論が出たとき、"じゃあ、もう逃げないでロックをやろうよ"ってことになったのと同じぐらい思ったのが、当時、30歳になったばかりで、本来だったらそこから新しいバンドを組んで、しかも趣味ではなくて、こういう重い表現は好きじゃないけど、人生かけてやろうっていうのはその歳では遅すぎるってことだったんです。普通の人がラスト・チャンスって言うものは、俺らもう終わってるだろうって。でも、たまたまバンドを始めてすぐインディーで出してくれるところが決まったり、いいねって言ってくれる人が増えたりしたんで、"これはボーナス・チャンスだね"って。だから、しっかりやろうっていう覚悟って言ったらいいのかな。俺の中ではそこからずっとある感覚なんですけど、例えば"チャンスがあるよ。どうする?そのカードを今切るのか、次のアルバムで切るのか?"って議論、若いバンドにはあると思うんですけど、俺らはその場にあるカードを、最強のカードから切っていかないと次はない。それをずっとひたすらくり返しているんですよ。

-一緒にバンドを始めた、もうひとりのギタリストが去年、辞めてしまいましたね?

奥村:河崎と杉山が入ってきて、ふたりのアイディアとかテンションとかに刺激されて、俺がどんどん変わっていったんです。表現欲求も高まったし、もっとこんなこともできるって可能性も広がったし、このふたりが持ってる武器をもっと活かしたいと思ったし。その中で3人のテンションはずっと高まっていったんですけど、彼が辞めたいってことだったんでショックはショックだったし、未だに過ぎたことだって割りきれないんですけど、でも、まあしょうがないのかな。そんな気もしたよって思いました。だったらもっと早く言って欲しかったよって。ただ、辞めるって言われたときには、俺の中ではですけど、"このふたりがいれば大丈夫だ"って確信があったんですよ。

河崎:ワンマン・ツアーの直前だったんで、じゃあ、どうするって。それからの1ヶ月は、ここ20年ぐらいバンドやってきた中で1番頑張ったと思います。

奥村:4人でやってたことをそのまま3人でやるんじゃ意味がないから、3人の表現に作り直すことがすごく大変でした。久々に人の曲ではなく、自分の曲で苦労するってことを味わいました。例えば、これまではベーシストとして低音を支えてきたけど、ここではちょっとリードの役割もして欲しいとか、違うリズムも鳴ってて、いい感じになっているものを、ドラムだけでどう表現してもらうかとか、そういうことを考えるのは大変だったけど、楽しくもありましたね。最初は全部やろうとしたんですよ。俺がふたり分やって。

河崎:最初のスタジオはヤバかったです。解散するしかないと思いました(笑)。ただ、そこも見せ場だと思ったから、単純に足し算だけでも引き算だけでもない、新しいアンサンブルの作り方は何度も言うのもあれですけど、頑張りましたね(笑)。頑張ったと思います。新しくなったwash?が全否定されちゃうかもしれない恐怖もあったし、3人の中で"これだったら大丈夫だろう"ってところまで持っていってからワンマンやりたかったんです。だから、そこは評価して欲しいな(笑)。

-それがあったから今回のアルバムも前作から間を空けずにリリースできたわけですか?

河崎:メンバーが抜けたタイミングでアンサンブルを良くするってことはもちろんなんですけど、たぶん、それだけじゃ良くないと感じる人が増えるんじゃないかと思って、"1曲、新曲を作ろう"って頑張って作ったのが今回のアルバムで最初にできた曲なんですよ。

奥村:「アーハーオーイエー」っていう。

河崎:「アーハーオーイエー」があの時期できなかったら、もしかしたら今はないかもしれないと思うぐらいでかい曲です。

奥村:やっぱり先があるってことをバンドの姿勢としてちゃんと見せないとどん詰まりになるって危機感ももちろんあったし、河崎も言ってたけど、客がゼロになる可能性もあるわけだから、そこは腹を括ろうって。

河崎:危機感しかないですね、僕たち。

-ああ。今回の作品を聴かせてもらって、まず驚いたのが13年の活動歴があって、メンバーそれぞれにプレイヤー、プロデューサーとして活動もしているじゃないですか。そういうバンドが作るアルバムがなぜこんなに苛立っているんだろうって。

奥村:まず俺いち個人の立ち位置としては、これが人生のメインなんですよ。自分の知識や技術を生かして、人の手伝いをしたりプロデュースをしたりしているのは、その経験をwash?に還元できればいいという想いがあるからなんです。基本的にはwash?をやりたいんです。売れっ子ミュージシャンが......別に俺たち売れてないですけど、趣味で組んでるバンドとは全然違うんですよ。

-wash?として活動しながら苛立ちを感じることもあると?

奥村:wash?としてというよりは、日常ですよね。それに俺はパンクをやってると思ってるんで。wash?はパンク・バンドだと自分の中では思ってるんです。ただ、そういうふうに表立って言ってしまうと、難しい問題も出てきちゃうんで、あまり口に出してはいないんですけど、自分の中ではずっとパンクをやっているつもりです。アティテュードとしてのですけど。THE CLASHを聴いたときの感動を、THE CLASHみたいなことをやって、お客さんにそう思ってもらうんじゃなくて、自分のやり方でやって、俺がTHE CLASHを聴いたときに感じた感覚を感じてもらえないかなって。世の中に対して怒ってることは山ほどあるし、日常は苛立つことばかりだし。曲を書いて、バンドやってなかったらって思うと、ロック・バンドやれてよかったと思いますよ(笑)。