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INTERVIEW

Japanese

笹木ヘンドリクス

2014年06月号掲載

笹木ヘンドリクス

Interviewer:吉羽 さおり

-そこから、これが自分の曲だなと納得できるものっていうのはいつぐらいにできた感覚ですか。

結構最近ですね、2年前とか。札幌から東京に出てきてなおさら、ひとりで曲を聴く時間がもっと増えたっていうか。弟たちとかが隣の部屋にいないし。それでちょっとずつ自分が作りたいなと思ってる像と、知ってる言葉とか、その使い方とかが、ぎゅーっと合わさってきたというか。それが2年前くらいですね。

-先ほどいろんなテーマを探したりという話もありましたが、作りたい像を掴むまでは実験的にいろんなことを試みたんですか。

全然採用されないですけど、今でもデモ音源とかではラップの曲とかも書きますし、この間はラップとロックの、メロディがあってないような狭間な曲を作ったんですけど。それめっちゃかっこいいんですけど、まだ僕以外のGOサインは得られず(笑)。そういうのはよく作ってますね。

-そういった中から、より研ぎ澄まして曲にしていくという?

かもしれない。『GOLD ANTHEM』に入っている、「ライフイズビューティフォー」という曲は一見、ぽっと素直に出た曲にしか見えないんですけど、作った時は6曲くらい同時に作っていたんですよね。意味不明なやつとか、物語っぽいやつとか、アホな歌とか、そういうのを作ったうちのひとつで。それぞれを書くことによって、反動を力にするというか(笑)。ただ単に素直な曲を書くのは恥ずかしいんで。全然違うのを書いてぐっと引いてから、作るっていうのをやった曲なんです。何なんでしょうね、面白いとか新しいとか、あまり今聴こえてこないとか、そういうものを作りたいという音楽家としての性みたいな。それが、どうしてもある。でもそういうのばっかりやってたら、全然皆さんに伝わらない曲になっちゃうので。伝わるように書くものとの2つがあって、いろんな曲を書いてシフト・チェンジをしているというか。

-みんなに伝わる曲ということでは、基本に王道のメロディ・ラインがあったりとか、すごくスタンダードをやってると思う。

みんなが口ずさめるかどうかは大きいですね。そこはまったく違うと思うんです。口ずさめない曲を狙ってますからね、自分の中のアヴァンギャルドな側のものでは。

-そっち側もないとダメなんですね。

崩壊すると思いますね(笑)。両方があるから、やれてるのがあると思います。

-今は両輪があることでうまく自分の音楽を保っていると。なかでも、デビュー曲「星のかけら」は王道の真っ直ぐなメロディでこれからの思いを歌う、いちばんスタンダードな曲になりましたね。

自分の声とか、出で立ちとかが今はきっと王道な曲のほうが似合うんだろうなっていうのがあるんですよね。お客さんの反応もそうですし。自分が前衛的でかっけえ、絶対いけるぜって思うものはもしかしたら、僕がやらなくてもいいことなのかもしれないんです。僕が誰かにそれを託してプロデューサー的にやるとか、もうちょっと年をとってきて、アルバムでいろんなアプローチの曲が出てきて自分の見え方が変わってくれば必ずしも王道じゃない曲でもやれる日がくるかもしれないし。わからないですけど、似合うのは伸びやかに歌うとか、そういうところが武器なのかなっていうのは最近改めて思ったんですよね。

-ソロのアーティストで、骨太なロック・サウンドでシンガロングできるような大きなメロディを歌うっていうのは、とくにニュー・カマーではいるようでいないタイプですね。

僕のイメージは山下達郎さんとか奥田民生さんとか、そういうかたの音楽も聴いて育っているので。ソロであるなら、ちゃんと歌えるアーティストでいたいなと思ったのはあるんですよね。女性ヴォーカルだと結構Superflyとかしっかりと歌えるヴォーカルがちょいちょい出てきていたと思うんですが、さらっとした男性ヴォーカルのほうが最近は多いなあとは思っているんです。歌えても、これは最近思ったんですけど、少し攻撃的な歌詞とか、楽曲のテーマとか矛先がわりと強めなものが多いなと思って。単純に、優しい曲とかが少ないなと。それは、薄っぺらく"優しさをありがとう"みたいな、"大丈夫だよ"みたいのじゃなくて、もっとあったかい曲とかが、小さい頃はたくさんあったなと思っていて。今、「Let It Go」("アナと雪の女王")とかが売れているのも、あれはすごく優しい歌だし。あれも単純に歌詞だけ見たら普通のことだけど、あれが音楽にのるとすごくあったかさを増すし、さらには松たか子さんのバージョンが人気があるのも、小手先じゃ足りないような楽曲だから少し無理してるっていうか、でもそこがグッとくるというのがあると思うんですよね。実際、僕もグッときますしね。

-うん、思わず口ずさんでしまうような歌でもありますしね。

そういう点では、たまたま自分がこういう声だし、それは自分でも忘れていたと言いますかあまりにサウンドとか面白さを追求するがゆえに、その優しさっていうのはキー・ポイントになる気はするなとか。自分は音楽しかやってきてないので、もちろんそれに助けられたところもあるし、そのへんを含めて優しい......優しさは出していきたいというか、優しさを持った曲を笹木ヘンドリクスでは表現していけるかもなと思ってます。