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INTERVIEW

Overseas

THE ENEMY

2012年06月号掲載

THE ENEMY

Member:Liam Watts (Dr)

Interviewer:新谷 洋子


―ただ、前作を発表して以来英国では政権が交代し、緊縮財政で福祉がカットされたり、不況で社会不安に陥ったり、色々変化がありましたよね。そういう変化に題材を求めようとは思わなかった?

正直言って僕たちは、ファースト・アルバムでそういう題材を取り上げて、ある意味予言していたんだよね。当時、英国人の多くはこういう時代が迫っていることにあまり気づいていなかったかもしれないけど、僕らはまさにそのことを歌っていた。そしてもちろん今は全員が気づいていて、不況の最中にあることを身に染みて感じている。みんなが気づいていることだから、僕たちが改めてその話を強調する必要はないと思ったんだ。ほんと、4~5年前に歌っていたんだからね!

-なるほど。でもアルバムを聴く限り、ファースト・アルバムの頃からTHE ENEMYの音楽に通低している、イギリスの労働者階級の人々の気持ちを代弁し、鼓舞していくスタンス自体は変わっていないことがわかります。このモチーフは、音楽を作る上でどのように重要なものなのでしょうか?

重要ではあるけど、必ずしも“労働者階級の声を代弁する役割を演じたい!”と望んでいるわけじゃないんだ。ただ、僕たちのような立場にあって、何かを貢献できるチャンスを与えられたら、受けて立つべきだよね。元々社会的なバンドなわけで、僕たちは常に社会をじっと観察しているから。だろ? 社会で何が起きているのか、ありのままに提示したい。それに、僕たちと同じ出自の人達の主張を届けるのは、凄く重要なことだと思う。ただ、僕たちはそれを意識的にやっているわけじゃないんだよ。究極的に僕たちはバンドに過ぎず、一番大切なのは音楽であって、音楽は楽しいものでなくちゃならないからね。同じような主張ばかり繰り返し聞かせて、うんざりさせたくない。とにかく僕たちは3人の凄く普通の人間で、普通の人間だっていう事実が、人々が僕たちの音楽に共感してくれる理由でもあるんだよ。

-リード・シングルの「Saturday」なんかは、そんな市井の人々の気持ちをアップリフトさせてくれる曲ですよね。

この曲は、ある意味でファースト・アルバムに収められていた「Away From Here」の進化形と言える。逃避したいってことを歌っているんだよね。ほら、大勢の人が土曜日を楽しみにして生きているだろ? ウィークデイは仕事をして、生計を立てるためにやるべきことをするしかない。でも土曜日にはみんな、自分が本当にやりたいことができる。なりたい人間になれる日なんだ。みんな出かけて、楽しんで、ウキウキしていて、家族と顔を合わせたり、好きなように過ごせるんだよ。

-これだけの成功を収めた後でも、自分たちのルーツとはまだ太い絆があって、揺るがないんですね。

間違いなくそう言えるよ。確かに僕らは大きな成功を収めたわけだけど、人間としては全然変わってないんだ。今もみんな同じ街に住んでるし、同じ友達とつるんでるしね。多くのバンドは成功するとロンドンに引っ越したりする。でも例えば僕は、今もママの家のすぐ近くに住んでるんだ(笑)。ステージでパフォーマンスしていたりしない時、バンド絡みの仕事をしていない時は、本当に普通に過ごしていて、生活そのものはほとんど変わってない。そうやってみんなと同じ体験を日々しているから、支持してもらえてるのさ。

-ファーストは全英1位、セカンドは全英2位でした。サードも当然期待を背負っていますよね。

まあ、チャートとか音楽シーンの状況は、僕たちがデビューした頃とは全然違うから、今回はどうなるか見当がつかないよ。以前はバンドがたくさんいたけど、今の英国では随分バンドが減ってしまったからね。少なくともラジオやチャートに関しては、もう主役はバンドじゃない。存在感が薄れてしまってる。だからプレッシャーは感じてないよ。アルバムの仕上がりに本当に満足してるからね。どちらかというと、制作中は少しプレッシャーがあったけど、こうして完成した今はもう大丈夫。「ただ楽しもう!」って思ってるだけだよ。