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INTERVIEW

Overseas

ONE RING ZERO

2010年11月号掲載

ONE RING ZERO

Member:Michael Hearst(Vo ,Claviola, Theremin, Gt, etc)

Interviewer:島根 希実

十分な歌詞に十分な音、あとは想像力さえあれば、それ以上のアート・ディレクションなんて必要ないのだ。作家達が語るストーリー、それにのっかるのは2人の男を虜にしたクラヴィオラの音色と、作中を渦巻くように鳴るテルミン。白雪姫が王子のキスで息を吹きかえしたように、音がのっかることで、まるで頬に赤みがさすように、そこに命が与えられ、物語は語られ始める…。現代文学を担う気鋭・ベテランの作家17人の手による歌詞に曲を付けるという、大胆な試みから生まれたコンセプト・アルバムが6年経って遂に日本盤で登場!

-はじめまして。日本のWEB・フリーマガジンのSkreamといいます。宜しくお願いします。では、初めに。“多くの作家たちとの出会い”を抜きには語れない、そのユニークな活動の歴史をお聞かせください。

僕らは1999年にヴァージニア州のリッチモンドでバンドを始めたんだ。Joshuaと僕は大学で作曲を学んでいて、その時に出会ったんだ。卒業後に北アメリカの楽器メーカーであるホーナーに就職したんだ。Joshuaはアコーディオンの技師として、僕はハーモニカの技師としてね。それから2001年にブルックリンに移り住むと、McSweeney’sという出版社が出版する本が売られている小さな店を見つけたんだ。そしてMcSweeney’sが主催する作者が近作を読むイベントに、初めてのアルバムである『Tranz Party』を彼らに配ったら、そのイベントに誘われたんだよね。それから2年に渡ってそこでプレイし続けたんだ。そうこうしている内に、Rick Moodyとかの作家達と凄く良い友達になれてさ。Rickが何作かをリーディングをしている間にした即興演奏を、彼のバックで録音した事もあったよ。で、Rickに歌詞を書いてくれないか頼んだら書いてくれたんだけど、その2曲が収録されているのが『Memorandum』なんだ。このアルバムが「多くの作家に歌詞を書いてもらう」というアイデアの発端になったのさ。

-今回はアメリカでは2004年に発売された作品が日本リリースになるというタイミングでのインタビューですが、今作が改めて日本流通することとなった感想をお願いします。

とってもエキサイティングだよ!日本の作家を一人も入れられなかったのだけが残念だけどね。でも、続編として海外の作家のみで構成されたアルバムも企画中なんだ。彼らの母語で歌うのは凄く楽しみだよ。もしかしたら、羽鳥美保によしもとばななの曲を歌わせたりしてね!?Sean Lennonに村上春樹を歌わせるとか。それから、僕らの作品が日本ではあまり知られていない作家たちのプロモーションになってくれれば、って思ってるんだ。

-発売当時の感想はどのようなものでした?制作時のエピソード等はありますか?

この作品のレコーディングは凄く面白かったな。凄い作家から届く歌詞をやり取りするEメールから、その言葉に音楽をフィットさせるプロセスまで全部が全部ね。可能な時は作者にレコーディングの過程で参加してもらったりしてたよ。例えば、Myla Goldbergは彼女が歌詞を書いた楽曲でフルートを吹いているんだ。Rickに至っては歌っているし。あと、Paul Austerがスタジオに来たのは最高だったよ。僕らのスタジオは地下にあって、140cmくらいしかない天井の低い部屋なんだけど、彼の身長は180cm以上だからね!

-当時と現在とで作品の捉え方は、変わりましたか?

そうだな、その当時のアルバムに対する感じ方と特に変化はないかな。僕が思うにこのアルバムは音楽的にも歌詞的にも、時流の変化に耐え得る事が出来る作品なんだ。というか、そう願ってるんだけどね。僕は今でもこのアルバムをとても誇りに思っているよ。アルバム自身の出来栄えもそうなんだけど、むしろ参加してくれた彼らの、本以外での別な一面を見せれた事とかね。何よりも楽しかった、ってところが一番だね。

-もうじきキャリア11年、その中で本作はどのような位置づけとなるのでしょうか。

これは僕らの10枚のアルバムの内、5枚目のアルバムで恐らく最も多くの人に知られている作品なんじゃないかな。最終的には彼らとの仕事という要素以外でもOne Ring Zeroがもっとビッグになって欲しいな、と思ってるよ。この作品で僕らを知って、僕らの他の作品を聴いてくれる、というのも僕的にはアリなんで。良いプレゼンになってるんじゃないかな。