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INTERVIEW

Overseas

ONE RING ZERO

2010年11月号掲載

ONE RING ZERO

Member:Michael Hearst(Vo ,Claviola, Theremin, Gt, etc)

Interviewer:島根 希実


-どの曲も、作品として独立した世界観を放っていますが、歌詞に音をのせるにあたり、特にインスピレーションがかき立てられたのはどの曲でしょう?

歌詞の多くは物語なんだ。どの曲においても、その世界観にフィットするように心がけたよ。どの曲が一番と言うのは難しいんだけど、どれも別なレベルでのインスピレーションを与えてくれるよ。例えば、Lawrence Krauserの曲では二人の女性が通路を隔てて、窓から手を突き出して噂話をしているのが浮かぶね。ボーカルをステレオ左右にパンニングして、会話がされているように工夫したんだ。Myla Goldbergの「ゴーレム」は、ユダヤ民謡をベースにした寂しい女性が粘土で恋人を造る話なので、ユダヤ伝統音楽をプレイするクレズマーという音楽集団っぽくしたり。

-全18曲の中で作品の世界に入るならば、どの曲がいいですか?そしてどのような役で登場したいですか?

ハハハ!今までに受けた事のない質問だよ!うーん、悲しいシチュエーションが多いんだよなぁ。Paul AusterとかDaniel Handlerの歌詞の中の人物のように寂しく苦しんだりするのは嫌だし・・・Jonathan Lethemの曲のゴキブリも嫌だし、Neil Gaimanの吸血鬼も嫌だよね。Clay McLeod Chapmanのポジティブ志向の両性具有者が良いかな!彼、というか彼女というか、両方の性を楽しんでいるみたいだからね。「自分自身をフレッシュに感じる!」って。

-以前は楽器に精通する仕事をしており、結成のきっかけも「クラヴィオラ」という珍しい楽器との出会いとありますが、音への意識やこだわりはどのようなものですか?

その当時会社は新しい楽器であるクラヴィオラを紹介していた所だったんだ。すぐに止めてしまったんだけど。でもジョシュアと僕は凄く気に入って、バンドに持ち込む事にしたんだ。楽器の説明をすると、「サイズは小振りのアコーディオンぐらいで同様に手で抱えて演奏する。アコーディオンのように伸びたり縮んだりはせず、ピアニカにある様なチューブを通して息を吹き入れてピアノ鍵盤を演奏する。専門的に言えば波形の倍音構成が単純で演奏者が未熟な場合サウンドの変化が乏しく、その割には楽器構造が複雑な為にアタック感 のない緩いエンベロープのなんとも間接的な音がするのである。」この音がもしかしたら、僕らを他のバンドと違うユニークな存在にしてくれているのかもしれない。だって50台くらいしか製造されていないんだから!

-そして、活動していく中で、「文学の世界」との出会いがあるわけですが、言葉への意識とこだわりとは?

多くの作家とコラボした経験にも関わらず、僕の歌詞に関する視点はとても写実的なままだよ。究極的には歌詞は、自分がその歌詞にどうなって欲しいか、という事だけが重要だと思う。One Ring Zeroは明らかに楽器の鳴りだけではなくて、歌詞にも同じ位興味があるからね。歌詞について考えれば考えるほど、それは必ずしも美しい芸術作品みたいな必要はないって事に気付くんだ。良い歌詞ってめちゃめちゃシンプルで、音の響きが素晴らしいってだけのものが多いからね。勿論、声は重要な楽器で、歌詞の意味という要素以外にも響きとか、乗っている感じが大事だよね。良い歌詞は良いんだよ。良い歌詞が正しい音楽に乗っていると、みんなが感動するのさ。

-では、音楽をのせずともこの人の文章は歌っているよ!というような作家はいますか?

人が書いているものに音楽的な要素はあるか、って意味かな?そうだとしたら、答えはイエスだよ。他の物と比べても多いと思う。長くて複雑な散文も僕は尊敬しているんだけど、どちらかと言えば良く練られたシンプルな文体が好きかな。皆まで言わずにシンプルな言葉で伝えるってのは、より才能が必要だと思うね。ヘミングウェイとか、そうだよね。僕は彼の文章の中に曲が聞える。あと、ポール・オースターもだ。

-最後に、今後の作品の構想というのはすでにあるのでしょうか?

うん、次の『レシピ・プロジェクト』の製作の丁度真ん中くらいだよ。有名なシェフにお願いして、彼らとコラボするんだ。彼らが音楽のスタイルを決めて、僕らがレシピを一語一語歌うんだ。Mario Batali, Chris Cosentino, David Chang, John Besh, Tom Collichio, Andrea Reusing,とかの有名な料理人と話が進んでいて参加も決定しているんだよ。きっと面白いアルバムになるよ!