Overseas
TAYLOR HAWKINS & THE COATTAIL RIDERS
2020年01月号掲載
Writer 山口 智男
FOO FIGHTERSの末っ子キャラ Taylor Hawkins(Dr)が、かつてDave Grohl(Vo/Gt)兄貴たちを心配させたこともあるやんちゃ心を、ついに自らの名前を冠した作品でも存分に発揮した。それが、TAYLOR HAWKINS & THE COATTAIL RIDERSが9年ぶりにリリースした3作目のアルバム『Get The Money』。FOO FIGHTERSのドラマーとして世界中をツアーするかたわら、ドラムをプレイするだけではなく、自作曲を自ら歌ってレコーディングするところから始まったプロジェクトが、ライヴも含めTAYLOR HAWKINS & THE COATTAIL RIDERSの活動に発展。06年と10年にリリースした『Taylor Hawkins & The Coattail Riders』、『Red Light Fever』という2枚のアルバムは共に、カリフォルニア育ちのTaylorらしい、カラッとしたオーセンティックなロック・サウンドと、そこに入り混じるプログレ風味が歓迎され、世界最強と謳われるロック・バンドのいちドラマーにとどまらない存在感を今一度、世界中に知らしめたのだった。
今回9年ぶりにTAYLOR HAWKINS & THE COATTAIL RIDERSを復活させたきっかけが、なんだったのかはわからない。前作をリリースしてからこれまでTaylorは友人たちとハード・ロック・バンド、THE BIRDS OF SATANを組んでセルフ・タイトルのアルバムをリリースしたり、ソングライターとして成長することに挑戦したEP『Kota』をソロ名義でリリースしたりと、FOO FIGHTERSの活動をしながらサイド・プロジェクトにも意欲的に取り組んできたが、もしかしたらその経験を踏まえたうえで満を持していよいよということなのかもしれない。
まずなんと言っても、いかにもバブリーなタイトルとジャケットのアートワークが、もちろんTaylorなりの皮肉が込められていると思うのだが、アルバムの弾けっぷりを物語っているようでいい。前2作は真面目すぎたというか、みんなに認められるものを作らなきゃと肩肘を張っていたんじゃないか。たしかにその意味では、FOO FIGHTERSの看板はなかなかのプレッシャーだ。
しかし、今回のTaylorはとことんリラックスしている。そして、誰になんと言われてもいいじゃないかと吹っきれたようにやりたい放題やり散らかしている。結果、THE CARSを思わせるニュー・ウェーヴなロックが予想外の展開を遂げ、1曲目のリスナーをくらくらさせる「Crossed The Line (Featuring Dave Grohl, Jon Davison)」から、奇妙奇天烈な曲のオンパレードという見事な怪作に! しかし、それがリスナーを困惑させる迷作とならないのは、作品全体に彼が聴いてきた70年代のハード・ロック、グラム・ロック、プログレッシヴ・ロック、パンク/ニュー・ウェーヴに対する深い愛情が感じられることに加え、プログレ色が濃すぎる曲の数々が奇っ怪なまま終わらず、バラードの「Don't Look At Me That Way (Featuring Duff McKagan, Nancy Wilson)」をはじめ、ちゃんとポップな印象を残すからだ。中でもレゲエとアシッド・フォークとブルースとラテンが過激に交わるアルバム表題曲他、そこここで閃かせるDavid Bowieを思わせる美しいメロディは大きな聴きどころ。
聴きどころと言えばDaveをはじめとする豪華ゲストの客演もそう。THE YARDBIRDSの「Shapes Of Things」のカバーで、Taylor Hawkinsとドラム・バトルを繰り広げているQUEENのRoger Taylorら、ベテラン勢が多数参加しているところはいかにも末っ子キャラならではだが、聴きながらレコーディングの様子に思いを馳せれば自然と頬が緩む。プログレ・サイケでポップなハード・ロック・ナンバーの「C U In Hell」に、そんな曲は絶対歌いそうもないカントリー・シーンの人気シンガー、LeAnn Rimesをフィーチャーするセンスも心憎い。そんなところからもやりたい放題やってやるぞという意気込みが感じられるが、3作目にしてひと皮剥けたと思わせる痛快さが、『Get The Money』はなんとも心地いいのである。
▼リリース情報
TAYLOR HAWKINS & THE COATTAIL RIDERS
ニュー・アルバム
『Get The Money』
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NOW ON SALE
SICP-6243/¥2,400(税別)
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TOWER RECORDS
HMV
[Sony Music Japan International]
・歌詞、対訳、解説付き
1. Crossed The Line (Featuring Dave Grohl, Jon Davison)
2. Don't Look At Me That Way (Featuring Duff McKagan, Nancy Wilson)
3. You're No Good At Life No More (Featuring Dave Grohl)
4. I Really Blew It (Featuring Dave Grohl, Perry Farrell)
5. Queen Of The Clowns (Featuring Mark King)
6. Get The Money (Featuring Joe Walsh, Chrissie Hynde, Duff McKagan)
7. C U In Hell (Featuring LeAnn Rimes)
8. Middle Child (Featuring Dave Grohl)
9. Kiss The Ring
10. Shapes Of Things (Featuring Roger Taylor, Pat Smear, Steve Jones, Gannin Arnold)
配信はこちら
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