Japanese
Galileo Galilei
Writer 沖 さやこ
今年1月にリリースされた2ndフル・アルバム『PORTAL』。それは昨年、活動拠点を東京から札幌に移したGalileo Galileiの理想郷であり希望だった。メンバー5人で一軒家に共同生活し、自分たちの手で自宅ガレージを改造し“わんわんスタジオ”を作り上げた。そこで出来上がったのは、メンバーが愛してやまない音楽の影響を音の随所から感じさせる、純粋な音楽愛が溢れる楽曲たち。それは未完成で、一般的に言う“らしさ”“個性”といったものとは少し違うものかもしれない。だが、あの“ルーツにどっぷりと影響を受けた音楽を作り出すこと”は彼らにとって必要なことだった。『PORTAL』を作り上げたからこそ彼らは再び“自らの音楽”に向き合えたと思うし、音楽に対する愛情を再確認できたのではないかと思う。その答えが、今年の4月にZepp Tokyoで行われた『PORTAL』のレコ発ワンマン・ツアー・ファイナルだ。前回見た2011年の新木場STUDIO COASTでのワンマン・ライヴとは別のバンドと思うくらい個々の楽器のスキルは上がっており、リスナーを目の前に演奏することで、彼ら5人で作り上げた理想が、彼らだけのものではなく、たくさんの人々のものへとなっていた。
10月31日にミニ・アルバム『Baby, It's Cold Outside』のリリースがアナウンスされ、期待は高まった。『PORTAL』で新たな入り口に立ち、ワンマン・ツアーで自分たちの居場所を開拓した5人はどのような景色を見せてくれるのか――そんな9月半ば、急に飛び込んできたのが岩井郁人と野口一雅の脱退だった。おまけに既に2人はわんわんスタジオから引っ越し、脱退済。新作はオリジナル・メンバー3人で作り上げられたものだという。まったく予想だにしない事態に驚きが隠せなかった。だが、フロントマンの尾崎雄貴が自身のTwitterでリスナーからの脱退に関する質問に明け透けで答えていたのと、岩井も自身のTwitterで新しく結成するバンドについてのツイートをしていたのを見て、その驚きは消えていった。“ああ、もう5人は新たな道を歩き出しているのだ”と痛感したのだ。脱退と同時に新作のトレーラー映像がYouTubeで公開されたのも、その象徴なのだろう。メンバーは脱退したが、Galileo Galileiは止まらないのだ。
『Baby, It's Cold Outside』。Frank Loesserの同名のウインター・ソングから取られているものなのか否か定かではないが、このタイトルと、少年が映し出された水晶にハンマーを下ろそうとしているキュートな少女のジャケット写真を見るだけでも、心が躍らないだろうか。これまでのGalileo Galileiにはなかったアプローチ。“今の自分たちが鳴らすべき音楽の形とは一体何なのか”――その答えが『Baby, It's Cold Outside』という物語だ。『PORTAL』同様ベッドルーム・レコーディングを行い、そこから踏み込んだ世界。泉の中を覗き込んだら見えてくるような、きらめきと夢、儚さを感じさせる。『PORTAL』のインタビューで尾崎雄貴は“歌詞に頼った作品にしたくない”と言っていたが、全編日本語で描かれた歌詞はより抽象的になり、音へと融けてゆく。恋模様を描いた「Sex and Summer」と「時計塔」の透明感はとても穏やかで、美しい映画のワン・シーンのようだ。落ち着いたビートの安定感が心地よい「リジー」、穏やかな海を彷彿させる子守唄のように優しく広がる「夢に唄えば」。これまでに挙げた4曲はさよならポニーテールのみぃながコーラスで参加しているのもあり、より一層音の持つやさしさやあたたかさが際立っている。3人の刻む生楽器が、安定をキープしつつも性急に駆け抜け、歌詞とシンクロした感情豊かなヴォーカルが輝く力強い楽曲「コウモリかモグラ」。大々的にシンセと打ち込み音を取り入れたクールなインスト・ナンバー「Chill Boy」。全6曲、可憐に淡く、憂いとほのかな色気を帯びた世界に迷い込む。
より深く精神性と音楽性が極められた新作『Baby, It's Cold Outside』。その真相は、来月号のSkream!にて3人にじっくり語って頂く予定だ。現在進行形で更に進化するGalileo Galilei。彼らの抱いた理想は、確かな未来へと繋がっている。
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