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DEADMAU5

 

DEADMAU5

Writer 沖 さやこ

巨大なネズミの頭を被ったひとりの男性が、フロアを揺らすその様は何とも痛快だ。世界中で最も注目されているエレクトロニック・ダンス・ミュージック・プロデューサーの1人であるDEADMAU5。彼が新作『> album title goes here <』を9月26日にリリースした。

SKRILLEXを見出したことでも知られているDEADMAU5ことJoel Zimmerman。カナダはトロント出身の彼は、2006年から活動を開始。2008年に世界最大のダンス・ミュージック・サイト“BEATPORT”にてもっともダウンロードされたアーティストとして話題をさらい、BEATPORT MUSIC AWARDSを総なめにした。JUNOアワードを複数回受賞し、先日の第54回グラミー賞にて、グラミー史上初の試みとなったエレクトロニック・ミュージック特集のテレビ放送枠内にてパフォーマンスを行った。彼の才能が開花し続けるのに比例してファンも急増しており、彼の公式Facebookページには650万人以上のファンがいる。Lollapalooza、Outside Lands、Virgin Mobile FreeFes、EDM(Electronic Dance Music)に特化したUltra Music Festival、北米最大のレイヴ・フェスElectric Daisy Carnivalなど、世界中の大規模フェスティヴァルでヘッドライナーを務め、アメリカの主要都市で開催したショーを全てソールド・アウトさせた。そして2012年7月号のRolling Stone誌の表紙を堂々と飾る。同誌がEDMのアーティストを表紙に起用するのは史上初のことだ。シングル「Sofi Needs A Ladder」や「Ghosts 'n' Stuff (feat. Rob Swire) 」、「I Remember (with Kaskade)」は全て世界中のチャートの上位にランク・イン。今作は『Random Album Title』『For Lack Of A Better Name』『4x4=12』に続く4thアルバムとなる。

ネズミの頭や、タイトルなど、ユニークなアプローチが目を引く彼。楽曲もまた非常に遊び心の強いサウンドだ。プログレッシヴ・ハウスをベースに、エレクトロやトランスの要素を融合させ、計算し尽くされた音構成をキャッチーに届ける。そのスタイルはDAFT PUNKファンにも受け入れられるだろう。このアルバムに収録された楽曲は、ほとんどが長尺。だがそれを飽きさせずに聴かせるのは人間が感じる心地よいビートを巧みに操る手腕ゆえである。そして今作も多彩な顔ぶれのフィーチャリング・アーティストが揃った。特にロック・リスナーとして注目しておきたいのがMY CHEMICAL ROMANCEのフロントマンGerard Wayをフィーチャリングした「Professional Griefers」。エッジの効いたビートと、Gerardの飄々としながらもエモーショナルなヴォーカルの相性は抜群だ。STATELESSのヴォーカリストChris Jamesを招いた「The Veldt」は青空から宇宙に飛んでいくような夢心地の高揚感。アメリカのヒップホップ・グループCYPRESS HILLをフィーチャーした「Failbait」は、クールなトラックが彼らの少し気だるいフロウにスパイスを与える。Imogen Heapのウェットなヴォーカルが輝く「Telemiscommunications」は、幾重に重なる彼女の声に思わず聴き入る。フィーチャーしたアーティストの魅力と新たな表情を自身のトラックで作り出すそのテクニックは、やはり名プロデューサーだ。Wolfgang Gartnerとの共作トラック「Channel 42」が織り成す、緊張感とエンタテインメント性の攻防も面白い。“ココにタイトルを入力”というアルバム・タイトル通り、リスナーの受け取り方次第で色を変えるような、日常や心情に溶け込む珠玉のダンス・ミュージック。様々な状況や心境で、魅力に触れて頂きたい1枚だ。

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