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DISC REVIEW

Japanese

2013年12月号掲載

us

本作『us』は、震災以降最初の小谷美紗子の作品である。冒頭を飾る「enter」で打ち鳴らされる、殺伐としたブレイク・ビーツに宿った不安と苛立ち。しかしこれを出発点としながら、小谷はこのアルバム1枚かけて穏やかさと優しさを手に入れるための歌とメロディを目一杯の力で奏でていく。無論、不安や苛立ちは消え去っていない。Track.8「東へ」は震災直後に名古屋へライヴに行った時の車中での体験を元に書かれたというが、アルバム全編を通して小谷が今の社会、そして自分自身に向ける視線には鋭さが宿っている。だが、彼女は本作を聴く一人ひとりのリスナーに対して、慈愛にも似た無垢な優しさを与えようとする。あなたが穏やかでありますように――本作には、そんなことが書かれた手紙のような親密な祈りがある。(天野 史彬)