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LIVE REPORT

Japanese

ベイビーレイズJAPAN / 指先ノハク

Skream! マガジン 2016年08月号掲載

2016.06.20 @下北沢LIVEHOLIC

Writer 沖 さやこ

1周年記念イベントの中で出演者がオール女子だったのはこの日だけ。華やかであることはもちろん、2組とも女子ならではのパワーを見せつけた。

先攻は自らを"変態系ガールズ・ロック・バンド"と謳う指先ノハク。ちょっぴりへんてこな音色のウワモノと、どっしり構えたリズム隊のコントラストが特徴的なポップ・ナンバー「なにがし」からスタートし、アグレッシヴな音像にエフェクティヴなギターが光る「行方入り」と、序盤から指先ワールドを全開にしていく。巧みにコール&レスポンスも取り入れるなど、ベイビーレイズJAPANのファンの心も掴んでいった。清水加奈(Vo/Gt/Key)が"沼の深い、あやしいダンス・ナンバーをお届けします"と言い「相席」へ。歪んだギターに地を這うような低音と、ゆったりしつつもごりごりした音像が、妖しげなヴォーカルと絡み合う。続く「ゲノオワリ」では女の情念の中に迷い込み、閉じ込められるようなディープな音を構築した。
清水は曲によってキーボード、ハンドマイクなど、様々なアプローチでステージにも華を添え、ライヴ後半はギターでのパフォーマンスとなった。気だるさの中に緊迫感を感じさせる不協和音的なコードも特徴的なミドル・ナンバー「NO.9」は、強くねっとりとした眼差しを浴びるような感覚に。短調のバラード「赤信号」は、自分自身が実際悲しみを抱えながら寂しく暗い夜の道を歩き、点滅する赤信号を遠目に眺める女性になったような気分だった。ラストは「層」、「放課後」とアッパーでエッジの効いた楽曲を畳み掛け、「3DK」で柵に乗り出して"LIVEHOLICの1周年に乾杯!"と会場すべてをひっかき回すように音を鳴らした。 自分自身の感情を吐き出すというよりは、女性が胸の内に抱える濃い部分を抽出し、それをそれぞれの楽曲でストーリーにしている気がした。だからこそ変態的でありつつもエグくなりすぎずキャッチー。今後彼女たちが音楽でもってどんな女性像を作り出していくのかも注目だ。

後攻はベイビーレイズJAPAN。まずはポップなロック・ナンバー「ひとめぼれ初恋もよう」、「恋はパニック」と、可憐なパフォーマンスで魅了する。MCではリコピンこと大矢梨華子が"ずっとLIVEHOLICに出演したかった"と告白。たしかに彼女たちと初めて会った2015年7月(※ベイビーレイズJAPANとFoZZtone 渡會将士との対談インタビュー取材時)の時点でリコピンはそう発言していたし、なんなら彼女はこけら落としがKEYTALKのワンマン・ライヴだったことも知っていたし、そのチケットが取れなかったとも言っていたな......と思い出した。彼女は"Skream!さんにゴマすってきてよかった(笑)!"とフロアを笑わせる。5人の会話劇のようなテンポのいいMCも楽しい。
「ノンフィクションストーリー」、「ワハハ」で会場をハッピーで満たし、キラー・チューンでもある「虎虎タイガー!!」を熱唱したあと、リーダーの傳谷英里香は息を切らしながら"最前めっちゃ近いね!"と笑う。"1曲目からどこを見ればいいのかわからなくて(笑)"と、ライヴハウスでのライヴを精力的に行っている彼女たちでさえ驚くということは、LIVEHOLICの至近距離度はかなり高いのかも。
「Pretty Little Baby」ではクラップが軽やかに響き、音程を外さずフェイクを歌いきる林愛夏はさすがの安定感。連日のライヴとレコーディングもあってか、5人とも以前より歌唱力が上がっているところにも感心した。ラウド・ナンバー「SHOW TIME」、アップ・テンポの「閃光Believer」と、5人は全身を使って音を届けようとする。不思議なことに彼女たちがダンスをすると、さらに音が大きくなるような気がした。「夜明けBrand New Days」は観客を煽り、エモーショナルな歌声を聴かせ、躍動感のあるダンスを見せる。笑顔を絶やさないところに、彼女たちが掲げる"EMOTIONAL IDOROCK"の底力を感じた。ラストは「Dreamer」。ひと言ひと言を大切に丁寧に歌う5人の姿も歌声も、とても美しかった。

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