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INTERVIEW

Japanese

ENTHRALLS

2016年02月号掲載

ENTHRALLS

Member:井上 佳子(Vo) 青木 康介(Key) 中井 傑(Ba) 吉田 充利(Dr)

Interviewer:山元 翔一

夜は、我々にとって日々心に抱えるものを受け入れるための時間なのかもしれない。"人の心を奪う、魅了する"という意味を自らの名に掲げた4人組ピアノ・ロック・バンドENTHRALLSが完成させた3rdミニ・アルバム『ねむれない夜に』。その名の通り"ねむれない夜"がテーマとなった今作は2015年10月にTOWER RECORDS新宿店のみでリリースされ、3ヶ月のときを経て梅田NU茶屋町店、名古屋パルコ店、広島店と取り扱い店舗を拡大。活動の密度を上げるために店舗限定リリースという苦渋の選択が採られたものの、繊細さと力強さを兼ね備えたドラマチックなサウンドは多くの人の胸に響く可能性を秘めている。あなたにとって"ねむれない夜"とはどういう夜だろうか?――いずれにせよ、今作は眠れないあなたの夜にそっと寄り添い、包み込んでくれることだろう。

-まず簡単にこれまでの活動について教えて欲しいのですが、ENTHRALLSはもともと芸大の音楽学科で結成されたバンドで、2013年の春に始動したんですよね?

中井:音楽学科なので最初は各パートごとの専攻でいろいろバンドをやっていたんですけど。ヴォーカルの井上がみんなを誘ったんですよ。

井上:遅刻をしなさそうな、真面目そうな人を選んでこのメンバーになって。演奏がうまいとかかっこいいとかを考えずに選んでしまったんです(笑)。

吉田:本当にスタジオで初めて話したくらいの関係で今までそんなに話したことがなかったんですけど、キーボードの青木君が"バンドやらへん?"って(笑)。

井上:だから音楽的な趣味もみんなかなりバラバラなんですよね。あと、経緯として私が大学でヴォーカルとして全然評価されなかったということがあって。声も変わっているから先生にも好かれなくて、校内のコンペもことごとく落ちて......そこからバンドを組んでみようというところに繋がっていきました。

-そういったきっかけからスタートして、活動するにあたって、音楽的な話は具体的にどんなふうに進んでいったのでしょうか?

青木:在学中は、井上が作ってきた曲をバンドで合わせてみるということをやっていて。最初はギターがいたんですけど、そのギターが抜けたことでピアノ、ベース、ドラムだけっていう楽器編成ではロック・バンドには勝てないんじゃないかって思うようになってしまったんですね。それだったら"ピアノでどこまで攻められるかやろう!"ってことで、"劇場型ピアノロック"っていうサウンドを目指していきました。でもそこに至るまでも試行錯誤があって。僕はBEN FOLDS FIVEっていうアメリカのバンドがすごく好きなんですけど、このバンドが編成的にはうちと一緒でピアノがすごく激しくて。"このバンド、めっちゃかっこいいな。こういうバンドをやってみたい"って思ったんですけど、BEN FOLDS FIVEの真似ばかりやっていても仕方ないということで、井上の歌のいいところとバンドの持つ激しさというのを前面に出して、"劇場型"という言葉を掲げたロック・バンドをやっていくというところに落ち着きました。

井上:それが2013年の春のことですね。大学のころまでずっと大阪にいたんですけど、それまで前身バンドでずっと活動していて。2013年に上京してきて、"劇場型"っていう言葉を使い始めました。

-前身バンドでの活動があり、方向性が具体的に固まってことで、バンドの始動からすぐに1stミニ・アルバム『PASSAGE』をリリースできたんですね。

井上:そうですね。(『PASSAGE』については)どちらかというと曲の方が先にできていたんです。あと始動にあたって、バンド名を変えることだけは決まっていたんですけど、名前がなかなか決まらなくて。"ENTHRALLS"に決まってからは早かったですね。

-どういった経緯で現在のバンド名に決まったのでしょうか?

井上:それまで"Sentimental Toy Palette"っていう名前で活動していたんですけど、"Sentimental"っていう言葉の持つ雰囲気が限定的だと感じていて。私はジャケットのデザインもやっているんですけど、淡いイメージや暗いイメージをどうしても払拭できなくて。そういうイメージが浮かびにくい言葉で、しかも強気な感じを出したかったところに"enthrall=略奪する"っていう言葉に出会ったんです。これやったらかっこいいんちゃうかなって思って、周りの人からの"読みにくい!"っていう反対を押し切って決めました(笑)。だから"なんで変えたん?"って言われたりもしたんですけど。

-ENTHRALLSの音楽に感じた力強さは、名前にも込められたものだったんですね。字面的にはすごく目に留まるし、いい名前だと個人的には思いました。

井上:ありがとうございます! 形は好きなんですよね(笑)。ひとつの単語で言い表わせていますし。

-1stミニ・アルバムをリリースした2013年には、"ROOKIE A GO-GO"の枠で"FUJI ROCK FESTIVAL"に、"出れんの!?サマソニ!?"の枠で"SUMMER SONIC"に出演されました。2年以上前の話になってしまうのですが、今振り返ってみてENTHRALLSの活動においてどのようなステージだったと感じますか?

井上:このバンドというか、この4人は"持っていない"人間だと思うんですよ。持っていない4人が集まってしまって。バンドの歴史的にもいいところまで行って結局ダメだったということも何度かあったので、フジロックもサマソニも決まったときはみんな信じられていなくて。もう2年以上も前のことなので今以上に経験もなくて、感覚も若かったので、何もわかっていないまま楽しんでやりましたね。フェスも行ったことがないくらいだったので雰囲気もそうで。

中井:バンドやっている中で、"フェスに行くなら自分たちが出演するときが最初や"って思っていたので、それが一気に叶って"絶対嘘や"って思っていましたね(笑)。

一同:(笑)

井上:本番も実感はなかったです。

青木:ほわほわしてたな。

井上:"Björk出てた"みたいな(笑)。

一同:(笑)

井上:普通にみんな楽しんでやってましたね。今思えばすごく若いステージだったなと思いますね。

-今はもう2013年のときとはバンドとしてのモードも全然違いますよね。

井上:そうですね。東京に来て苦い経験が多くて、"このままじゃだめだ"っていう感覚はあります。そのときと比べたらシビアな感覚でやっていますね。