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LIVE REPORT

Japanese

OKAMOTO'S

Skream! マガジン 2016年03月号掲載

2016.01.30 @Zepp DiverCity

Writer 石角 友香

憧れていた大好きなあのころのロックンロール・バンドじゃなく、この日、OKAMOTO'Sは他に替えの効かない"OKAMOTO'Sそのもの"としてブレイクスルーした。それは、同じサイクルで巡るバンド・シーンに対する違和感をある種ガソリンにしていたOKAMOTO'Sは今回のツアーで、何かに対するカウンターではなく、心底ライヴを楽しんでいたように見えたからだ。新作『OPERA』は、オカモトショウ(Vo)がフィクションとはいえ、かっこ悪いところもダメなところも孤独や寂しさを感じている部分も、これまでのバンドのキャラクターをはみ出した曲調やサウンドで表現した作品。"あえて「間違ったものを作る必要性」"を自覚して制作したストーリー仕立ての作品でもある。それをライヴでどう表現するか?に焦点を合わせてこの日は臨んだのだけれど、出音一発でそんな予想はいい意味でブチ壊された。
 
SEの「OVERTURE」とともに登場した4人は、アルバム同様「Dance With You」からスタート。"ここから何が始まるかなんて誰にもわからない"というショウのモノローグに続いて、3人の楽器の音が入った瞬間、CDとは比べものにならない生々しくて乾いていて重く、しかもソリッドなアンサンブルがフロアを大きくバウンドさせる。巧いのはわかってる、その先のさらに研ぎ澄まされたアンサンブルだ。正直、出音に人の意志がここまで詰まった演奏に初っ端から感極まってしまった。ライヴはそのままアルバム通りに進行し、ワイルドなダミ声でブルージーに歌うショウ、オカモトコウキ(Gt)のスライド・ギターもゴキゲンで、ビートはヒップホップやファンクのハネるイメージが新鮮な「NOISE 90」も彼らにしかできない演奏だ。また、アルバムの寸劇通り、駅員に扮したノザキくんこと野崎浩貴も登場して、大きな歓声を浴びていた。そう、ファンがアルバムの世界観をガッツリ把握していることで、次々に繰り出される曲へのリアクションも、ただノるとか踊る以上の、物語への共感が伴っている。その「TOMMY?」のコミカルさと悪夢に堕ちていくような曲の構成が、ショウの渾身のヴォーカルによって増幅されていく。
 
グッとファンクネスの色が濃くなる「Beek」、「うまくやれ」では、ハマ・オカモト(Ba)の腰にくるベース・ラインに改めて感服。曲の途中ではOKAMOTO'Sのライヴならではの見事に息の合ったハンズクラップによるコール&レスポンスにショウも"リズム感もテクニックも最高だな!"と気持ちよさそうだ。また、今回のツアーからコウキが初めて1曲フルで歌うことになった「ハーフムーン」でハマが"どんどんお上手になられて"と冷やかす。そしてハマがソールド・アウトに対して感謝を述べると、"ウェカピポ?"とすかさずオカモトレイジ(Dr)が揚げ足を取り、ハマは"ちげーよ"と、いつも通りのやりとりが......。ただでさえ長いMCがさらに長くなると言いつつも、ちゃっかりFenderで自身のシグネーチャー・モデルができたことを嬉しそうに報告するハマ。さらに、まだ中盤にも差し掛かってないにも関わらず、彼らのストリーミング番組"オカモトーーーク!"用に記念撮影をしたり、こんなところにも今のOKAMOTO'Sの自由度は見て取れた。
 
そんなテンションからいきなりギアアップしての前作『Let It V』から「Kill Dreams」の盛り上がり。敬愛するIggy Popが夏フェスでさほど注目されていなかったことに発端に、"自分が好きなロックンロールにみんな何も感じないのか......"とショックを受けたショウ。しかしこの日、"夢を殺して"というサビが、もう悲しみの先にあるように聴こえたのも確かなのだ。シンプルでシャープなブルーのライティングも、彼らのハードボイルドな一面を際立たせて強烈な印象を残した。アルバム曲以外のこのブロックでは、ハードなブギー「まじないの唄」もプレイ。曲中に"こんな音楽をバンドでやりたいと思って好きな曲を作って7年間続けてきて、今日Zepp DiverCityに立ってる"と、信念を曲げなかった自分を確認しつつ感謝を述べ、"このまま俺らとやっていけるかい?"とフロアを煽り、"このまま連れてってやる!"と、歌詞が本音そのものとして響いていったのだ。そのままハマの超絶ベース・ソロ、レイジの踊るようなワクワクするドラム・ソロ、それらがジャズのインタープレイのごときスリルを生み出して、エンディングでは変な声が出るほど感動してしまった。
 
楽しさと演奏そのものが生み出す息もつけないダイナミズム。これまでだってそうだったのかもしれない。しかしその説得力は、やはり歌詞を書いて歌うショウが軸になって作り出した物語『OPERA』で、さらにバンドが意志をガッチリ固めたことによるものだろう。終盤はシーケンスにビートを任せて、「Knock Knock Knock」のプラカードを掲げて前に出てきたレイジ。デジコア風味とラガマフィンが混ざったようなキテレツなナンバーも、むしろ彼らのキャラクターにハマってる。そして、ショウの語りともラップとも言えない言葉の連射と、コウキのループするギターが作り出すアグレッシヴな音像が凄まじかった「L.O.S.E.R」。この日何度か90年代初期のPRIMAL SCREAMやUKのマンチェビート・バンドが何倍も引き締まった肉体でビートをブン鳴らしてるような瞬間を見たのだが、この曲での印象が最も強かったかもしれない。
 
本編ラスト前に改めてショウが感謝を述べ、"今日、最初にやった「Dance With You」は俺たちがみんなと踊るために書いた曲だけど、最後にやる曲は俺たちが踊り続けるために書いた曲です"と、「Dance With Me」を披露。会場一体になってジャンプしながら、そのエネルギーを今のOKAMOTO'Sへの感銘に変えて、お互いのエモーションを交歓していたように映り、とても美しい光景で本編を締めくくったのだった。
アンコールではニュー・シングル「Beautiful Days」でハマのシグネーチャー・モデルも登場し、交響曲のようなエンディングで、ここからまた始まる2016年のOKAMOTO'Sを印象づけた終幕。6月からは全国47都道府県を回るツアーもスタート。いよいよOKAMOTO'Sの音楽性と彼ら自身のエモーションが時代と蜜月を迎える時が来た!

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