Japanese
Kidori Kidori
Skream! マガジン 2014年12月号掲載
2014.11.15 @新代田FEVER
Writer 山元 翔一
Kidori Kidoriについて考えるときはいつも"実際のところ彼らは一体何者なのだろうか?"という問いにぶち当たる。彼らはロックンロールの偉大なる破壊者なのか、それとも救世主なのか。恐らくそのどちらでもない。強いて言うなら、"破壊者の仮面を被った救世主――なんかにはさらさらなる気のないアウトサイダー"とでも言うべきだろうか。実に捉えがたく、それだけに興味深いアーティストだと思う。
今年の3月にンヌゥ(Ba)が突然失踪し脱退、そこに惜しくも先日解散したandymoriの藤原寛(Ba)をサポート・メンバーとして迎えて再始動、というタイミングでリリースされた2ndミニ・アルバム『El Blanco 2』。そのレコ発ツアー"タデ食う虫もウキウキツアー"のファイナル、新代田FEVER公演にはART-SCHOOLがゲストとして出演した。現在の日本のロック・シーンに爪痕を残し続けている孤高のアウトサイダー木下理樹(Vo/Gt)率いるART-SCHOOL。今回、マッシュ(Vo/Gt)と木下理樹という2人のアウトサイダーが共演したという点において非常に意味深いライヴだったのではないだろうか。
マッシュの幅広い音楽性に裏打ちされたKidori Kidoriの独自のサウンドからは、およそ音楽と呼べるものは何でも吸収する貪欲な姿勢がうかがえる。彼らの音楽はある種異常で、かなりマニアックなものであるはずなのに観客はそんなことはおかまいなしに手を挙げ、そして踊る。そんな具合に「Zombie Shooting」で幕を開けたライヴには正直圧倒されてしまった。BLACK SABBATH並みにおどろおどろしいイントロから始まり、Alex Turner(ARCTIC MONKEYS)かの如く捲し立てるマッシュのヴォーカル。ことメロディ・ラインに関して言えば、親しみやすいものではないかもしれない。むしろクセが強い部類だろう。それにも関わらずここまで観客を踊らせる作曲センス、そしてバランス感覚は特筆すべきだ。
3曲目に演奏された「El Blanco」は繊細且つ美しいギターのアルペジオとポスト・ロック的なドラムのパターンが非常に印象的な叙情的なナンバーだ。グラスゴーでレコーディングされたART-SCHOOLの3枚目のアルバム『PARADISE LOST』を思わせるその質感には、この日の共演の必然性を感じずにはいられなかった。ちなみにこの日は演奏されなかったが、彼らの「I Laid Down」にも同じ趣きを感じる。意外とも思えたこの2組には、案外共通項が多いのかもしれない。
川元直樹(Dr/Cho)のお茶目なMCのおかげもあって会場の緊張がほどけた中盤、「Hug Me」、「99%」、「Everytime I see you」といった彼らの楽曲の中では比較的ストレートなギター・ポップが続く。そしてそこから彼らがデビューよりともにしてきた代表曲「Say Hello!(I'm not a slave)」に至るラインは今日のハイライトと呼べるだろう。フロアは熱気に包まれ、観客は一斉に手を挙げ"Say Hello"と叫ぶ。この光景にはちょっと胸を打たれてしまった。
そして、"東京に来て9ヶ月、そろそろホームって呼んでもいいよな"というMCの後に始められた日本語詞の新曲「ホームパーティ」。キャッチーなメロディ・ラインが印象的でKidori Kidoriの新たな側面をうかがわせ、何気ない日常を描いた歌詞には"はっぴいえんど"的な詩情を感じる。ライヴは終盤を迎え、「NUKE?」、「Watch Out!!!」、「Mass Murder」とキラー・チューンを連発。クライマックスへとなだれ込む。なかでも「Mass Murder」でのおなじみのシンガロングでは、マッシュが"その中指が飾り物じゃなければ大きな声で歌ってください"と煽り、大合唱を生む。この日1番中指を突き立てまくっていたのはおそらくマッシュ自身だったのだろう。
本編のラストは「テキーラと熱帯夜」。本人曰く"とぼけた曲"とのことだが、この曲の持つパワーは計り知れない。"テキーラ テキーラ"と観客に歌わせておきながら、メンバーは演奏を終えてステージを去っていく。大合唱はメンバーがステージに戻り、アンコールが始まるまで続いた。そして普段アンコールはやらない彼らが最後に演奏したのは「Come Together」だった。ンヌゥ(Ba)の脱退という大きな悲しみを乗り越え、"One and one and one is three"と一切の感傷を感じさせずに力強く歌うマッシュの姿は頼もしく、まさにロックンロールそのものだった。
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