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INTERVIEW

Japanese

BIG UP!/Swagcky

2025年11月号掲載

BIG UP!/Swagcky

Interviewer:石角 友香

湘南出身のシンガー・ソングライター、Swagcky。日本の男性SSWの王道的な恋愛や人間関係を描きつつ、ブラック・ミュージック・フィーリング満載のヴォーカルが、新鮮な印象を残すアーティストだ。サブスクリプション・サービスの各種J-POPプレイリストにピックアップされ、アウトドア・イベントやフェスでも存在感を示す彼の音楽的なバックボーン、独自の"一般市民代表アーティスト"というスタンスについて訊く。


いろんな情報で判断さ"こいつ歌歌えるやん"
"しかもめっちゃユーモアあるじゃん"って感じてもらいたい


-Swagckyさんのお家は常に音楽が流れてるような環境だったそうで。

そうですね。朝から晩までずっと流れてました。両親共に僕が生まれる前ニューヨークにいて、ニューヨークでCDをいろいろ買ってたようで、ジャズやブラック・ミュージックを聴いてて。朝はボサノヴァっぽいものや、日中ゆったり時間が過ごせる休日の歌みたいなのをお母さんが流してて、夜になったら飯の時間は親父がジャズを流す、みたいな。

-いいじゃないですか。

"なんて優雅な"と思われそうですけど、僕からすると朝から晩まで普通に曲が流れてる感じで。幼少期からWhitney(Houston)を踊りながら歌ったり、Stevie(Wonder)のフェイクの練習したりみたいな。

-小学校の頃とかは、友達と話は合いましたか?

GreeeeN(現GRe4N BOYZ)とかそのとき流行りの曲もそれはそれで把握してて。僕が最初に買ったCDは槇原敬之さんのCDなんですけど、次に買ったのがスキマスイッチでした。レンタルCDも借りられるだけ借りてきて、世の中の流行りの音楽は一通り聴いてましたね。

-その環境は、今のSwagckyさんの音楽を聴くと納得ですね。

作るってなったときは邦楽のマーケットとかを理解せずに始めたんで、洋楽の影響をめちゃめちゃ受けてたし、中高のときは海外のイケてる音楽を友達に教えて、"カッコいいじゃん"って反応を貰うのが楽しみだったんで、ひたすらそう言ってもらえそうな曲を探してましたね。例えばONE DIRECTIONが流行る前から"これ来るぞ"と思ってたし、Ed Sheeranも日本に来る3年前ぐらいから知ってて。J-POPをやるようになったのは意外と音楽を始めてからで、"これ英語でやってても売れないんだ"ってことに気付いてからなんです。

-意外ですね。

大学2年生の終わりぐらいに始めたんですけど、就活のつもりでアーティストとして音楽業界に入ろうとしたので、飯が食えないと意味ないから、仕事になる音楽をやろうと。作る目線でもう1回J-POPを聴き直して、歌詞やメロディ、構成も含めて分析し直したのは音楽を始めてからって感じですね。

-いわゆる"シンガーになりたい"とか"バンドをやりたい"とかじゃなかったんですね。

中学生のときは、"歌が上手いから歌手になればいいじゃん"みたいなことを言われてたんですけど、見た目のコンプレックスがわりとあって。僕が知ってる売れてる人たちは顔がいいイメージだったんです。ビジュありきだなみたいな。しかも"僕ぐらいの上手いやつはいっぱいいるっしょ"と思ったし戦う感じでもないし。わりと家が保守的で普通に就職して一般家庭が幸せ、という感じだったんで、音楽の道に進もうとは1ミリも思わなかったですね。

-最初から客観的なんですね。

わりと客観的かもしれないですね。中学生まではサッカー選手になりたいと思ってたんですけど、怪我して嫌になってやりたいことがなくなっちゃったんで、より客観的に求められる道を歩もうかなっていうか。ただ、大学に通って、就職して毎日通勤ラッシュていうのを考えたときに、"あれ、ちょっと無理かも"と思ってから、どうしようかな? と考えた結果、自分で音楽やるか、と。"アーティストに就職する"っていう考えだったんです。

-なるほど。

大学の途中で音楽を始めてて、あと1〜2年は(就職まで)猶予があるから、その間に"音楽業界新入社員"みたいな立ち位置を取れればなんとかなるなというので、そこを目指してやってましたね。最初はライヴ配信をやりながら歌を勉強して。みんながインターンに行ったりしてる期間が、僕にとっては1人でギターを練習して曲を作れるようになる、言わば就活期間だったなと思います。

-結構珍しいプロセスかも。

かなり現実的だと思います。中高生のときは、売れてみんなにキャーキャー言われる人たちは別世界の生き物だと考えてたんですけど、就職して普通に社会に出るのがあまりにも僕に向いてないと思ったときに、やりたいことをやるしかなくなったんですよ。必要な技術を身に付けるっていう感じでやってましたね。で、売れてる人から直接話を聞くのが早いわと思って、なんの繋がりもなかったんですけど、売れたことがある人との出会いを求めて、最初の頃はいろんなところに顔を出したりしてました。言ったら職業体験みたいなのを自分で見つけてやりに行こうみたいな(笑)。

-活動当初のアーティスト名から改名されたじゃないですか。それはどんなきっかけで?

最初は単純にONE DIRECTIONのZAYN(Zain Malik)が好きで、適当に本名とZAYNでMASAZAYNでいいやって付けたんですけど、一緒にやることになったプロデューサーから名前の由来の理由がしょうもないと。自分がやっていくテーマややっていきたいことと整合性が取れて、且つキャッチーでロゴも作りやすい名前を考え出そうってことで、Swagckyになりました。"Swag(カッコいい)"と"Tacky(ダサい)"でイケてるけどダサい、ダサカッコいいみたいな意味ですね。もともとコンプレックス持ちだったこともあるし、やろうとした音楽が、自分がカッコいいと思っているものと日本のいい意味でダサかわいいものが融合したものだったんで、ぴったりじゃんって感じでした。

-計算というか戦略はあまり感じないんですよ。

ほんとですか? 好きで聴いてたものが尖ってるというかはニッチなもので、自分の曲にも要所要所隠し味に入ってるから玄人の人が気付いてくれるんですよ。けど普通に流れてる曲を聴くって人が大多数だと思うんで、その両方にウケる曲を作るというのが自分の美学としてあって。"めっちゃイケてんじゃん。でも飯食えねぇ!"じゃダメなんです。まず飯が食えないと音楽ができない。音楽ってめっちゃお金かかるし、まず心の安定と自分が健康じゃなかったらダメだなというのは最初から思ってましたね。

-健康な状態で作られる音楽のほうが受け入れられる?

普通に生活が成り立ってないと練習する暇もないし曲作りもできないし、ちゃんと自分が立ってないとダメかなっていうのは思ってました。僕自身、バイトしながら寝る暇を惜しんで練習して曲作りをやって配信もやって、倒れるぐらいまでやってたんで、それを経験したことは大事だと思うんです。とはいえ、自分の人生を生きるために仕事に行くという人たちが音楽を聴くわけなんで。自分も同じで、アーティストだから特別とかないって感覚でやってるんで、そういう人たちに刺さる曲が僕には書けるかな、それが自分のいいところかなと思ってますね。

-それがSwagckyさんの曲が恋愛系の曲にしろ生活寄りの曲にしろストレートな理由?

リアルっていうのがいいとこかなと。ヒップホップのアーティストとかで普通じゃないキャラの人もいますけど、僕は僕でいい人生だと思うからあまり人に憧れるっていうのはないんですよ。特に最近は自分のライフスタイルと似たような人たちを応援するとか、音楽やファッション、食生活とか全般で、誰かに憧れるより自分や周りのみんなが大事っていうマインドで生きてると思ってて。まぁ、プレイヤーだからある程度誰かに憧れなきゃいけないのは分かりつつも、"一般市民代表アーティスト"みたいなのが僕の居場所かなと考えてますね。

-憧れの存在はいないとしても音楽的な影響で言うとどうですか?

結局幼少期に聴いてたStevieとMichael Jackson、CDを最初に買ったマッキー(槇原敬之)は、耳に残るフレージングや日本語の曲の書き方みたいなところでは、かなり影響を受けているしリスペクトしている存在かなと思います。あと人間性とかに関してはEd Sheeranですね。

-どのアーティストも耐久性のある音楽を作ってますね。

そうですね。耐久性のある音楽をやりたいですね。SNSでも流行りながら耐久性もある音楽がやりたいというのはある。聴かれるきっかけがSNSになっちゃってるんで。

-ニュー・シングル「Love you like that」は、去年のミニ・アルバム『For Life』等、アレンジが華やかになったサウンドの延長線上にあると思うんですが、曲そのものの着想はどんな感じでしたか?

僕自身アウトドア好きで、アウトドアのイベントにも結構出させてもらって、アウトドア系のところで僕の音楽を聴いてくれる家族やカップルが増えてて。で、基本的には曲で書くことはほぼリアルなんで、まぁマジのリアルを歌ってるだけなんですけど(笑)。

-秋の野外フェスの情景という。

そうです。秋は一番キャンプするのに気持ちいいんで。ってそのままですね。着想は"秋キャンプいいな。秋キャンプしに行くか"みたいな。

-シチュエーションと季節感ですね。アウトドア・フェスやイベントのテーマ・ソングになりそう。

そんなアンセム・ソングを作りたいよねっていうのはプロデューサーと言ってて。「So Breeze」(『For Life』収録曲)とかもちょっとそういう方向性だったんですけど。

-そこにいる人にも届くと思うし、これを聴いてフェスやキャンプに行きたくなる人もいるんじゃないですかね。

であればもう狙い通りです(笑)。そうあってくれたらいいなと思って作ったんで。

-今回ヴォーカルの高低差も聴き応えがあります。

高低差は常にあるんです。僕の持ち味が、ローが結構出るところなので。で、ヒット・ソングにしようと思ったらまあまあ高く歌わなきゃいけないから、自動的に高低差があるものになっちゃう。で、だいたいカラオケで歌いづらいみたいな(笑)。

-(笑)イベントも複数決まっていますが、様々なアーティストが出演する、オムニバスのステージでのマインドセットはどんな感じですか?

自分が今やってる音楽ジャンルって絶妙に他にいそうでいないイメージがあって。対バンする相手を探してもなかなか難しいことが多いんです。ちょっとレイヤーが上で、例えばFurui Rihoさんとかは普通に先輩という感じでお世話になってるんですけど、そのジャンルの人たちっていろんな人たちとやるかと言ったらそうじゃなくて、わりと1人で立っている人たちが多くて。そういう1人で立ってる人たちと一緒に手を繋いで、面白いことをしたいなと僕個人としては思ってるんですけど、もうちょい売れてからやったほうが分かりやすくアピールできるかなと考えてますね。今はまだ自分の円がちょっと小さいから、重なる部分が少なくて。

-ここでも客観性が。

ライヴのモチベーションとして、自分のやるべきことは、お客さんたちにその場で"え? ちょっと思ってたのと違うけど、Swagckyめっちゃいいじゃん"って感じてもらうことだと最近考えてて。みんな僕を怖いとかラッパーみたいなイメージで捉えてると思うんですけど、じゃなくて"こいつ歌歌えるやん"、"しかもめっちゃユーモアあるじゃん"って感じてもらいたいなと。

-ある種の人間力ですね。

そうですね。リアルなSwagckyというキャラクターをあんまり出してこられてなかったというか。それは僕だけじゃなくてチーム内の迷いで、"どの方向性でやるんだ?"、"クールなのか、ゆるキャラなのかどれなんだ?"みたいなところで結果悩んでて、あんまり表に出してなかったんですけど、最近はちょいちょいMVでもふざけたキャラを出しつつ――まぁ、ふざけたやつなんで(笑)、みんなが観たときにニヤニヤしちゃうことをやりたいなってことを考えてますね。

RELEASE INFORMATION

Swagcky
NEW SINGLE
「Love you like that」

[TAKIBI RECORDS]
NOW ON SALE

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