Overseas
US
Member:Teo Hirvonen(Vo/Gt) Max Somerjoki(Gt/Vo) Rasmus Ruonakoski(Ba) Leevi Jämsä(Dr) Pan Hirvonen(Hc)
Interviewer:菅谷 透 Translator:松田 京子
ソリッドなロックンロールがイギリスやヨーロッパを中心に話題を呼んでいる、北欧フィンランドの新星ロック・バンド、USが"FUJI ROCK FESTIVAL '24(以下:フジロック)"出演と東京での単独公演のため初来日を果たした。THE LIBERTINESのスタジオにて1日で録音した、デビュー・アルバム『Underground Renaissance』(2024年5月リリース)も注目を集める、絶好のタイミングでのパフォーマンスは、3日間で4ステージ(※実際には急遽6ステージを実施)というハード・ワークぶりもあって、きっと多くのロック・ファンを虜にしたことだろう。Skream!では、苗場へと出発する前の彼らに取材を実施。様々なことを語ってもらった。
-以前に日本に来たことがあるメンバーも多いとのことですが、改めてバンドとして日本に来た印象を伺えますか?
Teo:最高だね。実は東京が初めてのメンバーも多くて、こんな大きな都市に来たのも初めてなんだ。美しい場所だと思うよ。
-日本の暑さは大丈夫ですか?
Leevi:昨日到着したときはすごく暑いと思ったけど、徐々に慣れてきてるよ。
Pan:まるでサウナみたいだね。外に出ると、洋服を着たままサウナにいるみたいな感じだよ(笑)。
一同:(笑)
-フィンランド出身ならではの感想ですね(笑)。では、バンドが結成した経緯を伺えますか?
Teo:ハイ・スクール時代にバンドを結成したいと思っていて、学校の廊下でRasmusを見かけたんだ。洋服がかっこいいから、"絶対あいつは楽器をやってるな"と思ってね。
-どんな服装だったんですか?
Teo:思い出せないな(笑)。素晴らしかったことは覚えているけど。僕らの結成時の話を伝記映画にするとしたら、みんなの想像する衣装を好きに選んでくれればいいよ(笑)。予想通り彼は楽器を弾いていたから、そうして前のバンドを結成したんだけど、僕は兄のPanやMaxの3人とも演奏していて、彼らはRasmusとのバンドの曲に詳しかったし、演奏もうまくてね。それだとライバルみたいになってしまうから、取り込んでやろうと思って合流させたんだ。でもそれもまた解散してしまって、今度はLeeviを含めてUSになった。今の形になってから3年くらいだね。
-USという名前は"フジロック"の常連のDJでもあるGaz Mayallが名付け親ということですが、このバンド名を貰った流れを教えていただけますか?
Teo:イギリスで初めてのライヴがGazのクラブだったんだ。彼はちょうど"フジロック"帰りだったから、"その日は来ないよ"とバーテンダーも言ってたんだけど、来てくれてね。ライヴの後声を掛けられて、"君たち、良かったけど名前変えたほうがいいね。USにしたほうがいい"と言われたんだ。"僕はもう30年間、USという名前がぴったりなバンドが出てくるのを待ってたんだよ"なんて言われて、正直そのときはあまりピンと来なかったけど(笑)、お互い冗談みたいな感じでUSって呼び始めた。
Pan:何かうまくいったときは"僕たちはUSだから"、うまくいかなかったときは前の失敗したバンドの名前で自分たちのことを言ってたよ(笑)。
Teo:1年くらいそういう状態が続いて、USという名前が抜けなくなってしまったから、じゃあUSで行こうということになったんだ。それが2年くらい前のことだね。
-USというのは特定の音楽性を結び付けづらい名前だなと思いましたが、そのあたりはいかがでしょう?
Pan:もしかしたら逆に結び付かないところが良かったかもしれない。前のバンドは、名前を聞いたらすぐに"Woodstock"とかそういうフェスを連想させてしまう、限定的な名前だったんだけど、USだったらなんでもありかなと思うし。
Teo:特に"これをやらなきゃいけない"とか、"こうしたい"というのはないんだ。USでいれば、自分たちの好きな音楽を自分たちの好きな演奏法でできるからね。Van Morrisonが好きなんだけど、彼も"THEM"というバンドをやっていたし、それに"THE WHO"もいるし(笑)。
Rasmus:USのほうが、クリエイティヴに自由にできるかなと思ったんだ。
-ハーモニカを含む5人編成は珍しいですよね。アルバム『Underground Renaissance』を聴いたときに、改めて"こんなにかっこいい楽器だったのか"と思うほど印象的でした。どうしてこういった編成になったのでしょうか?
Pan:ありがとう! もともと3人でセッションしていたときに、2人はギターを弾いていたんだ。僕もそこに参加したかったんだけど、そのときはブルースの曲ばかりだったから、ハーモニカで参加したのがきっかけだね。バンドを結成することになって、ハーモニカはブルース以外でも演奏できることを証明したいと思ったんだ。よくブルースのセットで見られるけど、他のジャンルでも演奏できることを示したかった。新曲ができると、ハーモニカが合うか合わないかはいつも賭けになってくるから、今後どうなるか楽しみだね。
Teo:ソングライティングの観点から見ても面白いよ。曲を書いているときはドラムだったりベースだったり、いろんな楽器も想像しながら書くけど、ハーモニカだけはどこにどうやって入るのか全く見当がつかないんだ。だけど結果的にハーモニカが入ると、"そうそう、ここの部分にしかあり得ないよね"ってことがすごくあって、毎回驚かされるのが楽しいね。
Pan:演奏するときは、オルガンやサックスのプレイヤーになったつもりで、それをハーモニカで再現しようとすることもあるよ。
-みなさんが影響を受けたアーティストを、それぞれ教えていただけますか?
Max:ギターを演奏しているから、やっぱりJimi Hendrixだね。ギターを手にした理由のひとつが彼なんだ。あとTHE BEATLESからもすごく影響を受けているよ。
Leevi:僕はLED ZEPPELINだ。John Bonhamのドラムが大好きで、彼は最大の影響源のひとりだよ。あとはDave Wecklというフュージョン系のドラマーもすごく好きだね。
Teo:Bob Dylanだね、特に60年代半ばの。当時彼がやっていたことはすごくパンク・ロックだなと思っているよ。みんなはきっとそういうふうに言わないだろうけど、僕的にはパンク・ロックのエッセンスを感じることができるんだ。あとは、フィンランドのBob Dylanと言われているDave Lindholmというアーティストがいてね。Bob Dylanが好きだから、フィンランドのBob Dylanと呼ばれている人を好きになるのも当然なんだろうけど(笑)、彼は70年代、80年代いろんなバンドでやっていて、どれも素晴らしいんだ。
Pan:僕はSLY & THE FAMILY STONEだ。ホーン・セクションがとてもタイトで、ステージでの演奏もすごく冴えていてエネルギーが素晴らしいよ。あと、ハーモニカ的にはJames Cotton。アメリカのアーティストで大好きなんだ。どちらかといえばちょっとラフなサウンドのハーモニカだけど、それが個人的にとても気に入っているよ。
Rasmus:THE WHITE STRIPESかな。シンプルだけど曲作りが素晴らしいし、シンプルな中に美しさがあると思う。ベースに関してはCREAMかな。60年代のJack Bruce(Vo/Ba)のベースが素晴らしいと思っているよ。
-ありがとうございます。ちなみにXで渋谷のTOWER RECORDSに行かれているのを見たんですが、いいCDは見つかりましたか?
Teo:ああ! フィンランドでは手に入らないようなCDがゴマンとあったし、あれだけの規模のレコード店はフィンランドにはないからね。
-日本だとフィンランドはメタルの国というイメージもありますが、フィンランドのロック・シーンの状況についても教えていただけますか?
Pan:あはは(笑)。今は結構変わったよ。もちろんメタル・シーンは強いけど、僕らは個人的にはあまり詳しくないんだ。Leeviは若い頃そっち系の音楽もやっていたけど、基本的に僕らはそんなに詳しくない。ただ、2000年の初めぐらいにフィンランドの音楽シーンはだいぶ変わって、それまではみんな英語で歌っていたのを、最近では完全にフィンランド語で歌っているんだ。わりとポップな曲も多いよ。
Teo:あともう1つ、大きなシーンはラップだね。フィンランド語の歌詞で、半分ラップして、もう半分は歌っているのをミックスした感じの。
-皆さんは英語で歌われていますよね、それは初めから海外や、現在の活動の中心であるイギリスなどを意識していたんですか?
Rasmus:そうだね。たぶんもともと海外意識があったんだと思う。若くてクレイジーで、夢見がちなミュージシャンだったから(笑)。
Max:全員が英語の曲を聴いているのもあるから、自分たちも英語の歌詞にするのが自然だというのもあるね。
Pan:フィンランドの音楽がだいたいフィンランド語で歌われているから、ちょっとした反骨心で英語で歌いたくなったというのもあるかも。みんなとは少し違うよってことでね。
Teo:僕の聴いている音楽が全部英語圏の曲だから、フィンランド語よりも英語で影響を受けて歌詞を書いているのかもしれない。同時に、いつも話す母国語と違う英語で曲を書くと、なんだかそのほうが自分自身を素直に、誠実に出せるのかなと思う。母国語じゃないからこそ、英語を隠れ蓑にして自分を晒しやすくなるんだ。
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