Japanese
5kai
2023年06月号掲載
Member:松村 了一(Gt) 太田(Ba) 若松(Dr)
Interviewer:山口 哲生
-最新アルバムの『行』についてもお聞きしたいです。1stアルバム『5kai』から約4年ぶりのリリースになりましたが、コロナ禍初期の頃から少しずつ録音を進めていたと。
松村:2020年の9月ぐらいから始めたのかな。(スタジオの)予約自体は結構前からしてたんですよ。でも、4月に緊急事態宣言が出てどうなるかなと思ったけど、隔離されたところでやるし、この調子だったらまぁいけるかって。本当はね、"今レコーディングしてます"とか言いたかったんですけど、なかなか言いづらいところもあったんです。
-当時はそういう空気がありましたしね......。
松村:で、曲が全然できていない状態でスタジオに行ったんですよ。まだ何も固まっていない状態で、とりあえずドラムを録って。そこからどうしようかなと思いながら、2年半ぐらいいろいろやってた感じでした。
-レコーディングは三重で行ったんですよね。
松村:そうです。nostosというスタジオで。ずっとお世話になっているエンジニアさんが、それこそコロナ禍始まったぐらいの頃に開業されたんですけど、僕らの人となりも多少わかってくれている方なので、楽しく録音してました。でも、本当に何も決まってなかったんですよね(笑)。例えば、この曲はこういう感じだろうみたいな感覚ってだいたいあるんですけど、それもなくて。実態がなんなのかわからない状態で進めていたので、すごく大変でした。
-そういうなかでまずドラムを録ったとなると、若松さんとしてはかなり大変ですよね?
若松:でもまぁ、サポートだったので、言われるがまま叩いたというか。一応構成だけは決まっていたし、完璧にはできていないけどライヴでやっていた曲もあったので、まぁとりあえずその通りにやろうって。で、いざできたものを聴くと、ギターが前と全然ちゃうやんみたいな(笑)。ミックスでガラっと変わったところはあるけど、ドラムだけの視点で言うと、そんなにストレスなくというか。当初録ったものをわりとそのままっていう感じなので。
松村:いや、そうでも......(笑)。
若松:あ、そうか(笑)。
-エフェクトをかけるとか。
松村:そうです。めっちゃ歪ませるとかして。リズムのフレーズの原型はあるけど、音の原型はないとかは結構ありますね。
-太田さんは、『行』のレコーディングに関してはいかがでした?
太田:最初にスタジオに行ったときに録音できたのが、ドラム2台分と、ベースが半分ぐらいっていう状況だったんですよ。そこから機材を買って、家で録ったものをレコスタに送って、ミックスしてもらうみたいな行程を今回初めてやったんですけど、それが問題なくワークしたのは良かったなっていう感じでしたね。
松村:めっちゃ録り直してなかった? "これムズすぎる"って。
太田:あぁ(笑)。家だからめっちゃリテイクできたのもあって。そのへん込みで良かったです。
-特にリテイクを重ねたのはどの曲です?
太田:「cost」がすごく苦手なフレーズだったんで、あれはめちゃめちゃ録り直しましたね。そんな大したことはしてないんですけど。
松村:でも、あれを録り終わったあとに練習入ったときにめっちゃ上手くなってた(笑)。
-はははは(笑)。今回のアルバムの曲は、尺が長いものも多いですよね。他の作品では長くても5分や6分前後だったのが、8分や10分の曲もありますけど。
松村:自分が作ったデモの状態でもそうだったんですけど、自然と長くなっちゃうというか、そのへんはクラブ・ミュージック的な感じというか。やっぱりずっと同じほうが聴きやすいし、展開がガンガン入っているのが、僕がそこまでグっときてなかったところもあったのかな。長くしようって感覚でもなかったんですけど、結果的に長かったなというのが多いですね。何回も聴いていくなかで、もっとタイトにできたなとも思いますし、まぁ別にしなくてもいいかっていう気持ちもあるし。
-クラブ・ミュージック的な反復の快楽を考えたときに、これぐらいの長さが妥当というか、一番気持ちが良かったと。
松村:そういう意識はあったのかもしれないですね。
-タイトル・トラックの「行」は、どんなところから作り始めたんですか? 途中で街の雑踏が入って、混沌としたところもありつつ、それでいて美しさもある曲ですけど。
松村:ツイン・ドラムになるかならないかぐらいの頃に、こういうドラムかっこいいなと思って、家で打ったやつを聴いてもらったら、"解読不能なんで無理です"って言われて(笑)。で、今回レコーディングをするにあたって、そろそろこれやりますかっていうところからですね。これも本当にワンフレーズだけだったんですよ。ワンループだけというか。そこからドラムを解読してもらって、今の状態にして。展開とかはセッションで作っていったんですけど、なんでああなったんだろうな......。いつも曲を作るときって、最後に歌詞を書くから、こんな曲にしようという明確なものがないんですよ。それよりも、聴いて思ったイメージとか、音を聴いただけで浮かび上がってくる風景とかがあって、もしかしたらこういうふうにしたらそこに近くなっていくのかな......みたいな感じで完成に向けて進めていった感じかもしれないですね。
-そういったイメージや風景をみなさんで共有するとかは?
松村:しないですね、まったく。歌詞はメンバーにも教えてなくて。
太田:こっちから"教えてくれ"って言ったこともないです。
松村:今回、MVを撮っていて、その人にはお伝えしたんですけど。
-「ロウソク」のMVを公開されていますけど、その曲ですか?
松村:いや、それとはまた別で、今度「行」のMVを出すことになっていて(※取材は4月下旬)。それは、出てくださった女優の方が耳の聴こえない方だったので、手話で表現するときにテキストが必要なのもあって、歌詞をっていうことになったんです。
-じゃあ、歌詞を自分以外の人に伝えたのは、MVに出演された女優さんだけ。
松村:そうです。だから、それぞれがそれぞれのイメージを持っている状態ですね。そこは相違があっていいと思うし、別にすごく思い入れがあるとかっていう感覚も嫌だし。ちょっとダルいじゃないですか。"思い入れがあって"とか"渾身の"とか(笑)。別にそんなのよくね? みたいな。
-歌詞がどうこうというよりは、そこはサラっと流してほしいですか?
松村:そうですね。そういう感覚はずっとあります。自分の都合のいいように思ってもらって全然OKだし、自分の感覚と若干の差異があることで生まれる歪みみたいなものが面白かったりもするので。例えばライヴをするときにも、それぞれのダイナミクスが変わってきたりすると思うんですよね。僕は歌詞も知っているし、エモーショナルにもなるんだけど、この人はここで強くなるんだっていう面白みも発生するじゃないですか。そういうのも楽しいから、歌詞とかイメージの共有をしてないのかもしれないですね。
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