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INTERVIEW

Japanese

安斉かれん

 

安斉かれん

Interviewer:山口 哲生

-アルバムには、ヒップホップやダンス・ミュージックはもちろん、ロック的な楽曲も多くて。「おーる、べじ♪」はかなりハードで、ギターもかなり歪んでいたりして。情報量が多いところはハイパーポップ的な感じもありますね。

これはもうサウンドがとにかく勢いがあって派手じゃないですか。すごくガチャガチャしてるから、ちょっと強めなことを書いても丸く収まるかなと思って(笑)。普段はそこまで強い言葉を使ったりしないんですけど、初めてここまで尖った歌詞を書いてみました。

-書いてみていかがでした? ここまで書けて気持ち良かったのか、ここまで書いていいのか悩んだのか。

ここまで書いていいのかなと思ったのは、私じゃなくてディレクターが思ってたかもしれないですけど(笑)。

-ははははははは(笑)。風刺的な歌詞ですよね。SNSとかで顕著ですけど、いちいち首を突っ込んでくる感じというか。皮肉とか怒りがものすごく根底にあるなと思ったんですが。

なんか、怒りを通り越しているというか、特に怒っている感じでもないんですよ。"言葉の行き先を想像しないベイビー"とかは、おっしゃる通りSNSのことを言っていて。これを言ったら相手は傷つくっていうことを想像できない人っているじゃないですか。いろんな人がいるから、そういうのを"この人は赤ちゃんだし、理不尽なことを言ってくる人は全員野菜だと思おう"って。そうやって自分で歌っていると楽になるというか。そういう思いをしている人も多いと思うから、"たしかにー!"みたいな感じで受け取ってくれるといいなぁって。"あぁ、野菜、野菜、野菜......"みたいな感じで(笑)、気楽に生きれるので。

-歌に関しては、"やだヤダやだヤダ!"と叫んでいるところもあれば、"今、どこ、あたしのバイタル正常どこ?"は無感情な感じだったり、1曲の中でかなり様々なアプローチをされていますね。

気持ちは乗りやすいんですけど、歌うのは難しかったですね。本当に情緒不安定すぎるし、"どこで息継ぎするんだ、これ"みたいな(笑)。だけど、ライヴ感というか、乱れた感じがいいのかなって逆に思って。感情で歌っちゃっているというか、感情でしか歌えないので、この曲(笑)。だから、難しいんだけど、難しく考えないようにしてます。

-アルバムには安斉さんが作曲された楽曲も収録されていて。

そうですね。「不眠症☆廃天国」とか「YOLOOP」とか。

-「不眠症☆廃天国」はリミックス・バージョン「不眠症☆廃天国 - Hollywood Edits -」が収録されていますけど、「YOLOOP」がかなりかっこ良くて。

「不眠症☆廃天国」は、原曲が結構ゆったりしてるんですよ。それを作っているときに......ちょっと眠くなってきちゃったから(笑)、ガンガンなロックを作りたいなと思って。だから、1日で2曲並行して作っちゃいました。「YOLOOP」はイントロのギターを弾いてもらったときに、それめっちゃいい! となって、その場ですぐにヴォイス・メモに入れて。

-セッション的に作っていったと。並行して作っていたからなんですかね。テンポ的には真逆だけど、どちらもちょっと夢心地な感じもあるというか。

ほんとですか?「不眠症☆廃天国」は、そのときたまたま寝られなかったんですよ。で、ふわふわしていてゆったりした曲を作りたいなと思って、そのノリで作ったんですけど、「YOLOOP」が夢心地って初めて言われました。

-もちろん躍動感がすごくあるし、ロック的なアプローチではあるんですけど、まどろみ感みたいなものも若干あって。そこがすごく気持ちいいなと思いました。

ありがとうございます。あの曲は夜を走っているイメージで書きました。

-まさに夜なイメージですね。「ギブミー♡すとっぷ」には、CHVRCHESのLauren Mayberry(Vo)とMartin Doherty(Key/Vo)が参加されていて。タイトルだけ見るとすごくかわいらしいけど、曲はめちゃくちゃ重くて暗いというギャップがすごいですね。

デモの段階で仮歌も入っていたんですけど、もちろん全部英語で。最初、英語を日本語にするのって大丈夫かなっていう不安があって。だから、意味が通じないところもあると思うんです。"Nist & myself"とか。これは"かれにすと"っていう私のオフィシャル・アプリのことを書いていて、知っている人じゃないとわからない単語を入れてるんですけど。そういう単語を入れていったら、案外ガチャリとハマってくれて。

-"捨てちゃお Scared けど"とかは、仮歌詞が" Scared"だったから、それを生かしたとか?

いや、全然違う単語でした。日常会話でたまに英単語を挟む人っているじゃないですか。"Happyじゃない?"とか"Scaredじゃない?"とか"超Coldなんですけど"みたいな(笑)。そういう言葉もありなのかなと思って、造語じゃないですけど、文章的にはおかしくても意味が通じればいいかなと思って書きました。

-歌詞は強欲的とも取れるし、すごく芯がしっかりしているとも取れますね。"人生と『L』は、アタシが決める/誰が何と言おうと"とか。

この"『L』"はKALENの"L"です。表に出ているとき、"『L』"になったときのほうが、やっぱり強気でいれるというか、いなきゃいけないと思っていて。だからそっちのモードで書いた感じです。ちょっと強いことを言って、自分に暗示をかけているというか。

-"『L』"と"アタシ"は同じ人間なんだけど、昔からそこは切り分けることができていたというか、それぞれ別の自分みたいな感覚でいられたんですか?

どうだったんだろう......いや、昔はいられなかったと思います。だから最初のほうは悩んでいる歌詞が多かったんだと思います。『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』のほうは、暗い歌詞が多いですね(笑)。

-『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』も踏まえながらお聞きしたいんですが、1stシングルの「世界中の全て敵に感じて孤独さえ愛してた」には、"「僕は強くなるよ」と、ここに誓う"という歌詞があって。今回の2枚のアルバムを聴いていて、「強くなる」という言葉に対して、昔と今で捉え方が変わっていったのかなと思いました。

「世界中の全て敵に感じて孤独さえ愛してた」は、デビュー曲なので、自分に言っている感じがしますよね。"強くなります!"宣言というか。まだ右も左もわからなかったので不安だったんだと思うんだけど、そうやって宣言しないと無理だったというか。でもまぁ、4、5年あれば変わりますからね(笑)。今はそういうふうには思ってないけど......だから、日記を読み返しているような感覚になりますね。自分で読んでいると、それこそエモかったり、初心に戻れたりするから。強さのことはよくわからないけど、そのときから自分の言葉で書いていて良かったなって。

-当時の感情がそのまま残ってますからね。例えば「ら・ら・らud・ラヴ」なんかは特にそうですけど、肯定感がありますよね。決して投げやりなわけじゃなく"別にそれでいいんじゃない?"っていう感じが、楽曲をリリースしていくごとに増えていく感じがあって。

たしかに!

-"別にそれでいいんじゃない?"って思えることって、ある意味強さみたいなところもあるじゃないですか。認めるとか、許すとか、そういったところに繋がっていくというか。

誰かの言葉で、"本当に強いのは許せることだよ"っていうのを聞いたことがあって。"人もそうだし、自分のことも許せるのが一番強い人なんだ"って聞いて、たしかになって思ったことがあったんですよね。それから"そんな考えても仕方ないから、それもそれでいいんじゃない?"と思うようになって。"緩くなった"っていうのとはまたちょっと違うんですけどね。それもそれで素晴らしいって、自分を褒めたり、他人のいいところを見つけたり、そういうことをしてきたというか、考えるようにしていたから、それで自然と明るくなったのかな......いや、明るくなったというよりは、対処の仕方がうまくなった。自分の機嫌の取り方がわかってきた感じがします。

-たしかに、自分の機嫌は自分で取るのが一番安全というか、確実というか。他人に任せないほうがいいですし。

そうですよね。他人に期待しても良くないですよ(笑)。そこはもちろんいい意味でですよ? この人は私のためにこうしてくれると思っていたけど、何かで傷つけられたときに、勝手に裏切られたっていう気持ちになったり、違ったんだってマイナスになるよりも、自分で自分のことを愛するじゃないけど、いい意味で甘やかすのは大事だなって思います。そうやっていくと、どんどん強くなる(笑)。

-「未来の音」も、それと近しい印象を受けました。未来という漠然としたものではなく、とにかく今の自分を大事にしたいというか。

この歌詞は、"未来の曲を書いてみようか"っていう話から書き始めたんですけど、当時は未来ってよくわからないなと思って。未来をそこまで明るいものとして捉えてなかったんです。そこから行き着いた先が、今を頑張って未来に繋げるっていう、結構現実的な歌詞だったんですけど。でも、なんていうか......未来は輝いていなきゃいけないのかなっていう焦りってあるじゃないですか。夢とか目標とかを考えなきゃいけないのかなとか。だけど、見たい未来を妄(みだ)りに見たくはないけど、未来を否定してしまっている自分は嫌いになりたいというか。

-あぁ。なるほど。

結局、正解なんてないじゃないですか。夢とか目標を持つことでうまくいく人もいるし、未来に悲観的になってしまう人もいるし。だから、そういうのを全部含めた感じですね。未来のことをまったく考えないわけでもないし、悲観的になったりしている自分をやめたいわけでもないし、でも考えすぎてマイナスになってしまっている自分は嫌いになりたいっていう。言葉にするのがちょっと難しいんですけど。

-いや、わかりますよ。それこそ生きていくうえで正解なんてないし、白と黒に分けて生きていくことなんて無理だと思うんですけど、そういったところで必要なバランス感というか、温度感というか。そういうものがあって、いい歌詞だなと思いました。

ありがとうございます。