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INTERVIEW

Japanese

底なしの青

底なしの青

Member:下田陽太(Vo/Gt) アンザイタイスケ(Gt) 新井 怜(Dr) 相原一平(Ba)

Interviewer:吉羽 さおり

別れや悲しみ、悔しさ、あるいは愛おしさでという、様々な涙の瞬間を6編の音楽にしたミニ・アルバム『ナミダの栞』。仙台在住の4ピース、底なしの青にとって初の全国流通盤となるこの作品は、バンド名にぴったりの青い疾走感からブリティッシュ・ロック的なキャッチーさにポップさ、また歌の景色や温度感を丁寧に描いていくものまで、それぞれの物語を彩り、ストーリーを軽やかに運んでいくサウンドが冴える。下田陽太が描くどこか懐かしい親しみを覚えるメロディや、ふとしたときに口ずさんでしまう節回しの心地よさを、ブーストするバンド・サウンドを奏でるバンドだ。地元仙台では企画イベントを開催、完売させるなど実力をつけてきた4人に、最新作や曲作りについての話を訊いた。

-最新作『ナミダの栞』は底なしの青として初の全国流通盤となりますが、改めてバンドのどういうところを見せよう、パッケージしようというのはありましたか。

下田:初めての全国流通盤なので、底なしの青のことを知らなかった人に届いてほしいなと思いますし、バンドとして1歩でも2歩でも進めるような作品になればいいかなと思って楽曲制作をした印象がありますね。

-2ndアルバム『rhythm』(2020年)、1st EP『fruits』(2022年1月)と近年いいペースでリリースをしてきていますが、今回のミニ・アルバムの曲は新たに書き下ろした曲ですか。

下田:すべて新曲でやってます。

-結構ハイペースで曲を作っている感じですね。

下田:そうだと思いますね。他のインディーズ・バンドに比べたら、多いほうだと思います。

-このバンドのソングライティングや曲作りの工程はどんな感じですか。

下田:基本的には、僕がメロディとコードと歌詞をスタジオに持っていって、スタジオでみんなでアレンジをするという感じです。

-アレンジは、曲の大枠を作る下田さんのイメージするものを形にするというのはあるんですか。

下田:曲のイメージも伝えるんですけど、それぞれの楽器に関してはほぼみんなに任せきりで。それぞれの楽器を詰めていくという感じです。

アンザイ:アレンジに関しては、特に下田から要望があるということではないんですけど、バンド全体でここをこうしたいという意見を出して、それを全部試してみて。その中から最適解を探っていく方法ですね。イメージとかも、言語化できるものはある程度言語化をして共有するし、できないものに関しては漠然としたイメージでもメンバー間で共有してという感じで、何か共有し合えるものを持ってアレンジには取り組むようにしてます。

-アレンジの場で出るアイディアはとにかくやってみると。

アンザイ:やれるものはやってみるというのがモットーというか。試さないことには化学反応も起きないし、それまでの枠の中だけでは進化もないので。やれるもの、ダメかなと思うものも1回は試してみるようにしてますね。

新井:"まぁ、1回やってみましょ"っていう感じで。全体のバランスの面では、アンザイさんが見てくれているのがポイントかなと思います。

-音楽的なルーツは、共通点が多い4人なんですか。

アンザイ:ほとんど被らないというほうが正しいですね。全然違うところからという感じです。例えば僕は、80年代のハードロックやメタルがバックボーンにあって、そういうところから影響は受けていると思いますし。

下田:逆に僕はJ-POPしか聴いてこなかった人間で、洋楽はほぼわからないというか。日本の音楽の素晴らしさとか、日本語でしか表現できない言い回しとか、メロディのつけ方とかは大事にしていますね。

-あぁ、メロディから香る懐かしさはその辺りに拠るのかもしれませんね。J-POPでは、どのあたりのアーティストが一番聴いてきたところですか。

下田:よく聴いていたのは、コブクロとかスキマスイッチ、玉置浩二さんとかかな。クラスのみんなが聴いていたような音楽を聴いてました。

-新井さん、相原さんはどうですか。

新井:小さい頃から、父の車で奥田民生さんとかエレファントカシマシとかがずっと流れていて。そこで英才教育的に、ですかね。自分が初めて好きに、今も大好きなバンドはBase Ball Bearで。日本語の曲、歌モノ、ギター・ロックの英才教育を受けて、そこがずっと好きというのはありますね。

相原:僕も最初に触れた音楽は新井さんと境遇が似ていて、それこそ父がユニコーンや奥田民生さんとかが好きで。それに付随して、小さい頃にまずギターを始めたんです。その流れでずっと楽器をやっているので、影響を受けているプレイヤーはその時々で変わっているんですけど。でもベースで言うと、ブラック・ミュージック系ですかね。

-今挙がったものを聞いているだけでも、4人の個性をうまいこと出しながらまとめ上げていくのが大変そうです(笑)。特にアンザイさんが、4人の中で違ったルーツを持つからこそ、バランスなりそれぞれの味の加減を担うのかなと。

アンザイ:僕自身、邦ロックをまったく聴かなかったわけではないんですけど、結局ひとりだけちょっと浮いてるというか、他の3人とは違うアプローチをしてる場面も多いと思うので。そういうところもひとつ、底なしの青の味になっているのかなと思います。あえてそういうスタンスは崩さずにしつつ、4人のバランス感は意識するようにしていますね。ここはこの楽器は引っ込んだほうがいいとか、ここは楽器的に誰にフォーカスが当たってほしいかという話は、曲作りの中では必ず話すようにしていますね。

-今回の『ナミダの栞』では、王道、スタンダードなギター・ロックと、自分たちらしさを磨き上げている作品だと思いますが。その中で突如「虫ケラ」でハードロックを全開で出してくるのもまた、面白いですね。

新井:(笑)ああいうことも真顔でできちゃうのが、このバンドのすごいところかなと思いますね。結果的にライヴがかっこいいし、あれを真顔でかっこよくやるというのが底なしの青のいいところかなと思います。スタジオで爆笑しながら作っている系の曲ですけどね。

アンザイ:「虫ケラ」のような曲は、僕がこのギター・リフを弾きたいからっていう曲だったりしますね。

相原:最近は、アルバムに1曲はああいう枠がありますよね(笑)。

アンザイ:そうそう。俺がどうしてもこのリフが弾きたいから、"下田、お願い"っていう感じで(笑)。

下田:各々のやりたいことをやりたいんですよね。

-「虫ケラ」のような曲はセッションで作り上げていく勢いがありますが、そういった曲では歌詞もより自由に書ける感じですか。

下田:こういう曲は結構難しいんですよね。真面目に書くのも違うし、ユーモアや言葉遊びを混ぜつつという感じで。曲調にもよるんですけど、そこのバランスの難しさがあって、でもだからこその楽しさもあるというか。「虫ケラ」は真面目に歌詞を書いたら終わりだなって思ったので、それでちょっと遊んでますね。

-バンドの爆発感を封じ込めた曲もアクセントでありながら、1曲目となる「征く」は、まさにバンド名である底なしの青を象徴するような、青春期の思いや人生の岐路に立って、希望と不安とに満ちた景色を情緒豊かに描いた曲です。こういう曲はどういったインスピレーションで生まれているんですか。

下田:歌詞においては、季節感というのはずっと大事にしているんです。それも日本特有の、四季があって、季節ごとに人間の心も移り変わっていくのを、僕自身が実感しているのもあるし。季節の流れを表現したいなと思っているんです。「征く」は3月くらいに歌詞を書いてメロディをつけた曲だったんですけど。春、桜の季節に、卒業していく学生たちを思い浮かべて書いた曲でしたね。

-そこに何か自分たちの境遇、経験も重ねてますか。

下田:今年卒業した中学生、高校生たちは、コロナ禍でずっと思うような学生生活が送れなかったと思うんです。僕らも、音楽をやっていて、コロナ禍でもがき苦しんでというのはありましたけど。僕ら以上に学生たちはいろんなことが思うようにできなかったこともあったと思うので。だから、勝手に応援ソングじゃないですけど、頑張ったねっていう歌を作りたかったんです。ライヴでも盛り上がれる曲にしたいなと思ったので、ああいった曲調にはなったんですけど。メロディは、バラードとして歌っても成り立つようなメロディは意識しましたね。