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INTERVIEW

Japanese

S.O.H.B

S.O.H.B

Member:Natsumi Nishii

Interviewer:吉羽 さおり

-今回の作品では、ほかの曲でも"孤独"が描かれますが、この孤独感というものが自分の曲の中に存在しているというのは何が大きいんですか。

自分が生きていくうえで一番大事にしたいものが孤独だからということですかね。人間それぞれ自分だけの、オリジナルの孤独感があると思うんです。大事にしたいから、それに触れられたくないし。それぞれが抱えているものは、おそらく死ぬまで誰にも触れられないまま大事に大事にかわいがって、自分の中で育てていくんだと思うんですけど、それを自覚しないまま生きている時間って、結構早く過ぎちゃう気がするんです。遊んでいたり、みんなでわーっと"楽しい!"ってなったりする、その帰り道に少しだけ孤独があると、"あぁ、今日はいい日だったな"とか自分の振り返りタイム=孤独みたいなことがあるので、そこを大事にできるようにというのは、全部の曲の芯にありますね。

-Nishiiさんにとっては、その孤独というのが決してネガティヴな意味合いのものではないということですね。

そうですね。

-"孤独"と言ったときに、それがしんどくなってしまう人もいますよね。

孤独がつらい人は本当の意味でひとりでいたことがないんだと思うんです。知らないから怖い。ちゃんとひとりになる時間があれば、そういうことはなくなってくると思うので。怖いものじゃないよっていうところはありますね。

-「オレンジ」はMVがあって、よりストーリー性が映像として見えてくるのはあるんですけど、この歌には痛みとでもいうか、染みるような孤独がある。

都会の孤独は地獄だとか歌ってますもんね。

-それがほのかな温かさのある歌で伝えられることで、よりギュッと胸に迫るものがあります。

ありましたか、刺さるものが(笑)。都会にいると寂しいですもんね。

-東京を舞台に、どういうところから引っ張り出された感覚だったのか。

めちゃくちゃ人が多くて、誰も見てないからいいなって思う反面、どこにいったとてというか。たぶん、渋谷にいると自然の中ひとり残されるよりもくるものがありますね。

-人が多いだけに感じるひとりぼっち感が。

またタイプの違う孤独感だと思うんですけどね。それが目いっぱい詰まっている曲です。

-そして「夜明け前」は地元名古屋の曲ですね。

最初にこの曲を書こうと思ったときに考えていたのが、名古屋のバンドマンたちのことだったんです。夢と絶望をいっぱい持ってライヴハウスから出てくる姿を見ながら、いいなと思って。夜明け前が一番暗いんだよっていう。もうすぐ夜が明けるからねって曲です。

-Nishiiさん自身、音楽をやってきたなかではそういう時間もあった感じですかね。

ありましたね。もう何をやってもたぶんダメなんだろうなって思いながら、ずっと音楽をしてました。このままやっても何者にもなれないって思いながらやっていた時間のほうが圧倒的に長いので、今思い返すといい時間を過ごしたなって思います。

-S.O.H.B.ではそういう自分の感情面が露になるわけではないですよね。アルバム『2021』に「革命」という曲があって、それは近いかなと思いますが。基本的には、ストーリーテラーであるというスタンスを感じます。

なるべく自分自身が曲の主人公にならないようにしています。主人公になっちゃうとどうしても、自分が歌いたい歌じゃなくなっちゃうので。どうあっても私は第三者が好きで当事者になりたくないんですよね。曲によっては、「革命」みたいな曲もどうしても出てきちゃうんですけど。他のミュージック・ビデオとかになっている曲も含めて、なるべく含みを持たせる、そして第三者であるというところはなぜかわからないけどこだわりを持っています。離れたところで幸せを祈りたいというか(笑)、そんな感覚なんですよ。

-先ほど「きらめき」での話でまだもっと手を掛けたいところがあるという話をしましたが、ある程度は曲を手放してはいる感じですかね。

そうですね。世に出てしまったものに関しては私のものではないから。それは、あなたのための歌ですよっていう。そこに特に、私が作ったということでバイアスが掛かってほしくないのはあります。十分ストレスは歌詞に込められていますしね(笑)。曲を聴いてくれて、"いいね"って言ってくれる人がいると"あ、やっぱり?"という。"やっぱ疲れるよね、都会は"とかそういう話に繋がればいいなって。

-人と人との間に歌があればいいと。

そうですね。緩衝材のように、ゴスペルのようになればいいなと思ってます。

-曲は量産できるほうなんですか、それとも絞ってじっくりと書き上げていくタイプなんですか。

量産型ですね。ブワーッと作って、そこから選別していく感じです。選別の作業に時間がかかるんですけど。捨てられなくて。この曲もアレンジしたらいい曲になるかもしれないなとか。今回もたぶん3倍くらい、12曲くらいから絞って4曲にしていますね。

-選別したものを残さない理由はあるんですか。

もっと、10年先とかだったら使えるかもしれないけど。ただ私もだいぶ極端な人間なので、明日命があるかどうかみたいなところがあって。だったら、あまり古いものにしがみつきたくないんですよね。だから、切り捨てて育てていこうっていう感じで、新しいものを生み出すための培地になってもらってます。

-S.O.H.Bのスタート自体もまさにそう言えそうですね。それまでのシンガー・ソングライター時代のギターは1回置いて、名前を変えてリスタートするっていうか。

捨てるのが得意なんです(笑)。だんだんと年も重ねてきてこれが私のやり方だというのが自分の中で形になってきたので、たぶんこれからも捨て続けます。たくさん作って、たくさん捨てるっていう。

-(笑)それで言葉や曲が研ぎ澄まされていくわけですね。ちなみに今、次のことは考えているんですか。

"田舎の賛美歌シリーズ"を作ろうと思っていて。私のすごくお気に入りの田舎の町があって──実は明日から行くんですけど。

-早速じゃないですか(笑)。歌のイメージからインドアな方を想像していたんですけど、すごくアクティヴに外に出掛けて行くんですね。

そうなんです。ほとんど家にいないので、だいたい山の中にいるか、海の中にいます(笑)。仕事をしているとき以外は家にいないですね。

-そこで持ち帰ったものをなんらかの形にしていると。

美化した日記みたいなイメージですね(笑)。

-思い立ったら動いてしまう、旅に出るという生活なんですね。

1ヶ月のうち、1週間は旅をしてます。人口100人しかいない島とか、携帯の電波が入らないところとか、そんなところばっかりで。好きなんですよね。行ったことない場所で、旅行客ですっていうテイで優しくしてもらうのが好きなんです。できればずっと旅していたいですね。

-ある種これも旅のひとつだと思いますが、作品をリリースして、ライヴやツアー活動は考えていますか。

しばらくは曲を作って、発表する。を続けていく予定です。今はまだまだ発表している曲も少ないので、これから先いいタイミングできっかけがあればライヴをしていきたいなと思います。