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INTERVIEW

Japanese

藤巻亮太 × 橋本絵莉子("Mt.FUJIMAKI")

 

藤巻亮太 × 橋本絵莉子("Mt.FUJIMAKI")

藤巻亮太がオーガナイザーとなり、地元山梨で開催する"Mt.FUJIMAKI"。コロナ禍の影響で現地開催は3年ぶりとなる今回。初出演であり、同じ2000年代をバンドで駆け抜け、現在はソロ活動をするという共通点を持つ橋本絵莉子との対談が実現した。バンド時代はテレビの音楽番組でニアミスしていた程度だとしつつ、お互い、音楽性にオリジナリティを感じていたというふたりに、バンドマンだったからこそのソロの試行錯誤や、現在の思い、そして"Mt.FUJIMAKI"に向けての抱負などを存分に話してもらった。

藤巻 亮太
橋本 絵莉子
インタビュアー:石角 友香 Photo by 清水舞

-レミオロメンもチャットモンチーも2000年代のバンド・シーンを代表する存在で。お互いにどんな印象を持っていましたか?

藤巻:メジャー・デビュー・ミニ・アルバム(2005年リリースの『chatmonchy has come』)の頃からすごく聴いてて。めちゃくちゃかっこ良くてハマっちゃって、当時iPodとかが出始めたくらいだったので、曲を入れて移動中もよく聴いてた記憶があります。好きな曲はたくさんあったんですけど、その中でも「恋愛スピリッツ」(2006年リリースの2ndシングル表題曲)は胸を掴まれるような曲で、よく聴いてみるとすごく切ない歌だなと思いながら。

橋本:えー、ありがとうございます。

藤巻:ラジオでもかけさせてもらったり、同じ3ピース・バンドなので、シンパシーもあったり、そういうことも含めてかっこいいなぁと思って聴いてました。チャット(チャットモンチー)はプロデュースみたいな感じで誰かが入って、サウンドが急に変わるとかそういうことってありました?

橋本:サウンドは常に3ピース・バンドっていうのを大事にしてやってたんですけど、プロデュースはいろんな方にしてもらってました。

藤巻:今ソロを聴かせてもらっても、やっぱり3ピースの音の佇まいっていうか、ずっと大事にされているなぁって。

橋本:ライヴでも再現できるっていうのをかなり意識してやってたから、当時は頑なにその想いは強くなっていってました。

藤巻:面白いなと思うのはそういう頑なさがあっても、例えばドラムの高橋(久美子)さんが抜けられたときにベースの福岡(晃子)さんがドラム叩こうかとか、ああいうことができるのがすごいなと思って。柔軟性とバランスについて、今日お話ししてみてなんか掴めたらいいなと。柔軟性がありながらもずっと貫いているものがあるから。

橋本:いや、めっちゃ賛否両論で身近な人から"やめとけ"と言われたりいろいろあったんですけど、どうしても楽しくてやりたいほうを取るっていうか。やるのは自分で、別に誰にやってもらうわけでもないから、それだったらやりたくて楽しいほうがいいっていう(笑)、ギリギリなところをいつも行ってました。

藤巻:バンドっていろんなストーリーがあって、今お互いにソロ活動をしているというところでも、シンパシーを勝手にすごく感じてるんですけど、藤巻は(笑)。

橋本:いやいやいや(笑)。思います。

-橋本さんはレミオロメンの登場当時をどうご覧になってましたか?

橋本:もう見ない日はないっていうぐらいテレビに出ていらして。私の母とか"すごくキラキラした目で歌うよね"って話してたりして、ほんとに観てましたから。でも自分がテレビ番組で歌うようになって、めっちゃ大変なんやなっていうのはすごく感じたから、大変だったんじゃないかなと今は思います。

藤巻:若いから瞬発力とかもあるし、あんまり疑わないから、乗り切れた気がするんです。ただそれはそれで一期一会のタイミングですよね。どのバンドも、アーティストも経験できることでもないかもしれませんし。当時は自分を俯瞰しながら"こういうこともなかなかないから、経験しておこう"なんて思ってはいなかったので、ただ一生懸命来る仕事来る仕事をやっていた感じでしたけどね。

橋本:それをやってたっていうのは本当にすごいことだと。

藤巻:20代はあんまり覚えていないです。でも今振り返るとメンバーふたりもそうだし、スタッフもそうなんだけど、そのレミオロメンってバンドのために曲を書けたから、曲のモチベーションに困ることがなかった。追われてでもなんでも作るしかなかったので。何かのために、っていうかき立てられる力を貰っていたとは思っています。 そして、30歳ぐらいでソロになって、まずは溜まっていたものを吐き出したかったので、それが1作目(2012年リリースのアルバム『オオカミ青年』)で。吐き出したときにそれ以上語ることがなくなってしまって。

橋本:満足したっていう?

藤巻:満足しましたね。でもまたバンドをやるとはならなかったんで、じゃあ自分のソロ活動ってなんなんだろうと30歳ぐらいから探し始めるっていうか、そんな感じで10年ぐらいやっていて。

橋本:バンドを終えてからすぐやりたいと思いました? その、歌いたいって。

藤巻:僕はさっき言ったみたいに最初はあんまり疑わなかったんですけど、レミオロメンとしての自分が担っていく部分と、もう少し違う素の自分みたいなところが、途中で乖離し始めた部分があって。そっちのほう(素の自分)を吐き出して楽にしてあげたいなみたいな、わりとパーソナルなものを吐き出すような感じだったので、その10年の貯金で1作目ができたっていう感じですね。逆にどういう感じでした?

橋本:私の場合はすぐにやろうとは思わなかったんです。ちゃんと終えられてホッとして、疲れていたっていうのはあって。ちゃんと終わらせなきゃ嫌だというのがあって、良かった! って感じで終えて、ちゃんと締まったんで、すぐに歌おうと思わなかったんです。でも普通に生活をしていくなかで、歌詞を書いたり曲を作ったりっていうのが止まらなかったから、今続いている感じですね。

藤巻:曲を聴かせてもらっても、本当に同じ人が作っていらっしゃるなぁって思うんです。さっきのお母さんの話もそうだけど、お母さんがテーマのひらがな3つの曲ありますよね?

橋本:「あ、そ、か」(2021年リリースの1stフル・アルバム『日記を燃やして』収録曲)ですね。

藤巻:あの曲、お母さんが浮かびます(笑)。チャットモンチーの頃もそうですし、ソロになられてからも、そういう佇まいや距離感で曲を作られていて。そういうのって揺らぐじゃないですか。プロになったりして揺らぎながらも自分の書くべきところ、揺るぎないところまで戻ってくるような曲がすごく好きでかっこいいなと。僕の場合、迷走し始めたので。

橋本:そうですか? 私、対談が決まってから改めて聴き直させてもらったんですけど、自然の描写がすごいなと。やっぱりそれって地元での暮らしとかが影響あるんかなとか思って聴いてました。

藤巻:ありがとうございます。でも、徳島の自然とか町並みとか、橋本さんにも感じます。THE BOOMの宮沢和史(Vo)さんと音楽を一緒にさせていただくことが最近あって。「島唄」のイメージがありますけど、実は山梨のご出身なんです。あるときに、"やっぱり自分の感性はふるさとの景色で決まるみたいだよ"と話をしてくれて。ちっちゃい頃いろんな景色を見てどんな関係の中で育ったかで、その後どれだけいろんな旅をして、宮沢さんの場合は南米とか世界中旅していろんな影響を受けていらっしゃるんだけど、"山梨で育った感性で曲を作ってる気がするんだよね"って話をされていたんです。そういう意味で言ったらたしかにそうかもなぁって。僕の出身地は盆地なので夏は暑くて冬は寒くて、だから四季が結構くっきりしてるんです。

橋本:めちゃくちゃ曲の中に四季を感じました。

-おふたりともバンド時代から、ごく自然な変化を遂げてもいると思うんです。

橋本:そうですね。ちょっと変わってるの、わかります(笑)。

-バンドだとメンバー構成の一員っていうか。

橋本:そうですね。自分はこの役割とかポジションで、そこを全うするのに賭けて頑張る! って感じだったんですけど、そこをいったん抜けてひとりになったときの立ち振る舞いというか、未だに全然慣れない(笑)。

藤巻:いやもうそれは100パーセント共感します(笑)。もう本当にわかんなすぎて。

橋本:どうしてたっけ? ってなるんですよ(笑)。なんか"あれ?"っていうのがあって。

藤巻:チームでの役割を担っていくことで、自分の存在意義とか、存在価値を自分で見いだしていたけど、そういうのがないことはソロで初めて経験することだから。僕もいっぱい悩んで経験しながらです。いろんなメディアで自分がひとりで対応していることとか、曲作りにしてもメンバーと"じゃあセッションするか"みたいなのがないから。

橋本:うん、そうですね。曲はもうある程度作っていきますか?

藤巻:僕はPro Toolsを使ってある程度は作っていきますが、それも良し悪しで。バンドって、"せーの"の、あの良さが絶対あるんだけど、機材を使えるようになると自分で完結できるようになるんです。余白がたくさんあって、そこにミュージシャンの感性とかそういうのが入ってきて、曲がもまれていって想像もつかないところに行くほうがやっぱり面白いなと今は思ってて。だから僕もソロになってから自分で作り込む曲と、歌詞とコードとメロディしか作らなくて、あとは新しい仲間とセッションしてアレンジを練っていくのと、両方やってます。でも(橋本さんは)曲を聴かせてもらうと、みんなで一緒に演奏して曲の輪郭ができていくような感じですかね?

橋本:私GarageBandで簡易な5割~6割ぐらいのものを送って、それをメンバーさんに聴いてもらって、そこから一緒に細かいところまで詰めていくっていうやり方ですね。

藤巻:ソロになると、そういう気軽に誰かと一緒にセッションするみたいな時間がすごく大事じゃないですか?

橋本:めっちゃ寂しくなる(笑)。

藤巻:そうなんですよ。セッションしてアレンジを練るとか、そういう一緒に合奏する時間がすごく愛おしくなる。

橋本:そうなんです。集まってもらってるので、大事にしようって思うんです。