Japanese
strange world's end
2022年08月号掲載
Member:飯田 カヅキ(Gt/Vo) 平 マサト(Ba) フルカワ リュウイチ(Dr)
Interviewer:石角 友香
前作から5年かかってますけど、歌詞に関しては以前より 今のほうが響く人がいるのかなと思っています
-今さらなんですが、フルカワさんはstrangeでドラムをやりたい、やれるなっていう思った既発曲とかライヴとかはあったんですか?
フルカワ:もともとstrange world's endとの付き合い自体がすごく古くて。もう知り合ってから10年以上経ってるんです。だから過程というか、ドラムが変わったり、ベースがどんどん入れ替わったりしてる過程も見てたんで、僕が叩いたらこんなふうになるだろうなみたいなのはちょっと思ってたんですよ。仲のいいバンドだからっていうのもありますけど、ドラマー目線でドラムじゃない人が叩いているのを見て、ドラマーが叩いたらこうなるのになみたいなのもやっぱちょっと考えてて。だから、声掛けてくれたときは"僕だったらこう叩く"ってのをそのまますんなりできたんで、長い付き合いの中でそういう気持ちになってたところが大きいかもしれないですね。いざサポートから正式にメンバーになりますってなったときも、他の人がドラム叩くぐらいだったら僕がやりたいなぁみたいな。ほぼわがままに近いところ、他の人にやらせるの嫌だなみたいな感覚で、"僕やります"って手を上げた感じなので。大きいきっかけっていうものがもしかしたらないかもしれないです。
-「無限影踏み」はヴォーカルにオートチューンかかってますか?
飯田:オートチューンはかけました。この「無限影踏み」っていうのはそういうイメージだったんですね、もとから。この曲って、原曲でジャムってる段階では、エフェクティヴではあるんですけどギターが歪まなかったんですよね。strangeの曲は絶対どっかしら歪むんですよ。そうじゃない曲を作ってみようかというところから始まってて。で、メインのリフが浮かんでから、メロディが埋まってきたんですけど、ちょっと単調だなっていうのがあって、サビのヴォーカルにエフェクトをかけて、コーラスを入れてるんです。残りももうちょっと今までと違う感じを出そうかなと思って、Aメロの部分にはオートチューンをかけて、自分が好きなDAFT PUNKもそうですけど、そういう要素を入れましたね。スパイスというか。
-あとはトライバルな「沼」。このベースを聴いたら逆に他は考えられない。
飯田:あれは俺の中で地獄のベースだと思ってるんですけどね。ずっと同じなんで。でも意外と大丈夫なんでしょ?
平:俺は全然そういうのは大丈夫。
飯田:俺なら無理ですね。ずっと同じであのループのベースは。
-でもそれが"沼"なんでしょうね。
飯田:そうですね。こう渦を巻いて落ちていく感じですかね。"シン・エヴァンゲリオン劇場版:||"がやってたときに――そのイメージで作ってるわけじゃないんですけど、映画の中でわーって渦巻いてるシーンがあるんです。この曲で"この渦の大きさ、あんな感じだもんな"みたいに思って。だんだん中央に向かって落ちていく感じ。底なし沼かもしれないし、そこにハマってしまうと抜け出せないようなのを沼っていうんですかね。その痛みとか闇とかを込めて"沼"にしてあります。このパーカッションはどういうあれで入れようと思ったの?
フルカワ:まさにトライバルじゃないんですけど、どこぞの部族のお祭りで真ん中に捧げものがあって、その周りで演奏してるような感じというか。その真ん中が底なし沼なのかもしれないし、カリスマみたいなのがいるのかもしれないですけど、なんらかを取り巻いている感じなんですね。その正体はわからないんですけど、周りをグルグルと回っているイメージというか。
-今までよりもアレンジの工夫があるんですが、国とか時代とかわからない感じで。
飯田:最初のサビと2回目のサビにハモンド・オルガンが入ってるんですけど、イメージする音にすぐ到達できたわけじゃなくて、"THE DOORSっぽいなんかなんだよな"と思いつつも、そこにうまくいけなかったんですよね。で、結局そういうイメージとはまた違う部分でハマって良かったなと思いました。
-ところで、「雨の迷宮」のミュージック・ビデオが意外だったんです。ライヴハウスに行ったことがない女の子みたいな設定で。
フルカワ:そうですね。
飯田:それは監督の意向ではあるんですが、そうですね。ライヴハウスはいい場所でもあり、危険な意味もあるみたいなところもあるのかもしれないですけど。特にコロナの時期だったので、ライヴハウスが危ない場所と言われるようなこともあったわけで。それに対する皮肉をあの感じで込めているのかなと思いますけどね。
-初めて見たものに衝撃を受けるっていうふうにも取れる映像ではあるかなと。
飯田:そうですね、たしかに。
-出演してる人がライバーなんだ? という驚きもありました。
フルカワ:もともとプライベートで仲良くしているライバーの方がいまして。ラッパーのJAM DADDYさんっていう方はだいぶ昔から仲良くさせてもらってる方で、その人からライヴ配信系の最近の盛り上がりの話とかを聞いてて、"もし良かったら一緒に何かやりたいですね"って話は前からしてたんです。そこから良さそうな人を紹介していただけないかみたいな形でお願いして、紹介してもらった形ですね。
-新しい扉ですね。
フルカワ:そうですね。たしかに普段とは全然関わりがないタイプの人たちと。特にライバーって数年前だったらなかった文化じゃないですか? そういう人と関わるのもなんか面白いなって。
-新しいリスナーと接続する部分じゃないかなと。それにしても初めてこのバンドに触れる人たちは こんなことをずっと考えている人って、毎日大変だろうなと考えちゃうと思うんです。
飯田:そうだと思いますね(笑)。思考の流れというか、情報がすごいんで。息苦しく生きてるのかなとは思うんですけど、酒を飲んでそれに強制的なシャットダウンを自分でかけていることも多々あります。そうしないと曲もそうだし、いろんなことに関して、ほんとに常に何かを考えてしまうので。でも、できるかぎりというか、インスタントな感情を言葉にしてSNSで書かないようにはしてますね。その力を曲に封じ込めていくようにしたほうが自分には合ってるし、歌詞や曲として残したほうが自分としては発散できるんで、それで自分自身が救われてるというか、助かっているような気がします。嘘で固めていくとたぶんダメなんでしょうけど、自分に合ったものを書いてるし作ってるんで、制作で生かされているのかなとは思いますね。
-今作はひとつ区切りだし、世の中に対する表明でもあると思います。みなさんはできあがってみたことでどういう気持ちになれましたか?
平:やっとできたなぁってことぐらい?
飯田:そうだよね(笑)。実際この間のこの世間の状況がなければ制作自体は早くなったと思うんですよ。
-それはいろんなバンドが似たような状況に置かれていたかなっていう感じがします。
飯田:それに関してはうーんと思うことは多々あるんですけど、歌詞に関しては理解してくれる人もいるのかなっていうか。前作から5年かかってますけど、以前の状態でこれを出したしてもそんなに響かなかったかもなぁみたいなものが、今だったらこのまま響く人がいるのかなって思うことはちょっとあります。だからこのタイミングだったのかなと思いますね。
-飯田さんの本質自体は変わらないんだけど、奇しくも響く状況になってしまったと。
飯田:それを望んでいたわけではないんですけどね。周りがワーイ! ってやってるのに"何言ってんだよ"と突っ込みを入れたかったのに、"ワーイ!"がだんだんそうじゃなくなっちゃって、突っ込む相手が"もうヤバくなってる"っていうか。そういうところで多少歌詞を変えたところもあるのかなぁって気がしますね。
-茶化せるテンションだったから、"死んでくれないか"と歌えてたわけですよね。
飯田:そうですよね。ほんとは茶化したかった部分が多々あったんですけど、そうも言ってられないなってのはあるし。
-個人的には若い人のこのアルバムの感想を聞いてみたいです。
平:前よりはいいんだろうね。飯田君、歌詞とか見るとなんか大人になったよね。中学生から大学生ぐらいになったんじゃない?
飯田:(笑)芯は変わってないにしても、そうかもしれない。
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