Japanese
Made in Me.
2021年11月号掲載
Member:彦(Gt/Vo) ゆかり(Syn/Vo) じゅんちゃい(Gt/Cho) U sucg :):(Ba/Cho) DAIKI(Dr)
Interviewer:吉羽 さおり
-曲が書かれた時期はいろいろなんですか。
彦:「残夏Fire」が一番新しくて、今年の6月中旬に書いた曲なんですけど、一番古いものだと「KARA乾風KAZE」で、ほとんどは3~4年前の曲ですね。「残夏Fire」はそういう異質さを前提としたうえで、書き込んだ部分はあるとは思うんですけど。他の曲はそういう意味では新しくないけど、新しく聞こえているなら、俺らはバンドとしてそういうアレンジをやったということですね。
-ある種、自分の内の衝動をもう1回取り戻したという感覚ですね。
彦:今回このアルバムには入れなかったですけど、2月にリリースした「覚醒PLANET」というシングルがあって。今言われてたしかにって思ったのは、歌詞に"初期衝動 失せたもの"というのがあるんです。でもそこに"そのはずのはずだった"って続くんですね。今、俺はまだ滾ってるんだっていう。最初にディストーションっていうエフェクターを買ったときが、俺の中では一番かっこ良かったと思うんです。このアルバムよりも絶対にかっこ良かった。というのが、もう一度できるのかな? っていう部分ですよね。みんな今がかっこいいと思ってるんだったら、俺からしたら、いやもっとかっこいい瞬間が絶対あったけどそれを忘れてるんだよ、それはズレてるってことなんだよって。僕もまだそれができてるかわからないのに、安心しきってるやつは僕からすると違和感があるんですよね。というくらい、トゲトゲしてます。
U sucg :)::はははは(笑)。
彦:言葉にしていくとどうしてもトゲトゲしちゃいますね。そんなつもりはないんですけど(笑)。
-はい、実際そういうヘイトみたいなものが歌詞に描かれているわけじゃないですしね。音楽的にそうした自分たちの思いを伝えようとしている。
彦:そうですね。それを気づいてっていう部分で刺しにいってるので、凶器として貫くものではないんです。
-一番新しいという「残夏Fire」はサビが2段階であるような曲で、且ついい曲だなっていうところから思わぬところにどんどん展開するサウンドですね。
彦:僕は詳しくないですけど、じゅんちゃいがくるりがむちゃくちゃ好きで、くるり感を出せたらなって思って書きました。冒頭のあたりのふわ~っていう攻撃性のなさそうな感じからの、後半はフューチャー・ベースというか、エレクトロ系のアプローチまで持っていきたくて。ギュイーンっていうワープ感じゃないですけど。
-こういう曲って、最初のデモみたいなものってどうなっているんですか。
じゅんちゃい:デモは作ってないですね。彦が弾き語りのボイスメモかなんかを送ってくるんです。このときはスタジオ当日の朝5時くらいに俺にLINEで送ってきて。めっちゃいいやんってなって、スタジオで合わせたんです。そのときのスタジオはDAIKI君が遅れていたので、じゃあ代わりに俺がドラムやるわってイメージを固めていって、最後の1時間くらいでDAIKI君が到着して、ガーっとまとめて。
彦:その時点でもいい感じだったもんね。
DAIKI:あとは1回うちでセッションをして、この人(彦)の脳みその中を引き摺り出していこうっていう。自分的にはまず、彦の引き出しを開けたいんですよね。
U sucg :)::カウンセラーに近いよね、DAIKI君のやり方は。
じゅんちゃい:ここはどんな感じなん? ってどんどん聞いていって形にしていくというか。
DAIKI:それを出したいなら俺もこういうことをしたいっていうのを具体化していって、あとは、こういうシンセを入れたらどうかとか、ベースがオクターブで鳴ってたら面白くない? みたいなことを常に実験しながら構築していく感じです。
-彦さんの頭の中で鳴ってる音をいかに忠実にアウトプットするかですね。
DAIKI:そうですね。なおかつまだ誰も知らない音を出せたら、そんなに楽しいことはないので。レコーディングが終わってみんなが帰ったあとにもちょこちょこと入れたりもしてます。
彦:"それええやん"って。邪魔にならないような感じで、そっと入れていくのが上手いんですよ。
じゅんちゃい:でも、(DAIKIは)酔ってるとありえんギター・ソロ入れるよね。俺、これ絶対弾けないっていうのが入ってる。
DAIKI:往年のロックのギターがね(笑)。
-すごく足し算や掛け算をしている感覚ですけど、でも全然やりすぎてる感がないのはいいバランスですね。
彦:そこは気をつけたい部分ですね。これやりすぎなんじゃないかなっていうのは、いつもギリギリのラインで悩んでいます。
-「Shall We Destroy?」なども、アコースティックなサウンドで、軽やかなラップが乗っている雰囲気から、後半で一変するような展開が面白いです。
彦:最後のほうですよね。ぶっ壊れていく感じがあって。あれはもともと僕の中ではなかったんですけど、DAIKIがプロットしてくれました。タイトルにもある"デストロイ"にちなんで、どんどん壊れていくこの世界と重なったのかなって。最初は架空の路地裏で、アコースティックな楽器で、誰に向けるでもなくやってるバンドを想像して書いたんです。夜な夜な職業の違う労働者階級の人が集まって、セッションしてるみたいなイメージで書いていたのが、段々と最後デジタルにぶっ壊れていくというのが、僕にはなかった発想だったので、めっちゃ面白いなって。
DAIKI:シンプルにトレンド・サウンドを1個入れておこうかなっていうのが、じゅんちゃいとの間であったんですよね。ただトレンド・サウンドと言っても、作ってからリリースまでのタイムラグがあるから、安直に入れるのは好きじゃないんですけど。でもそういうのも1個は必要だなっていうのがあって。
じゅんちゃい:そういうトレンドとかを理解してないと思われたくないみたいな。Made in Me.のこじらせがここにあるっていう感じだよね(笑)。こういうのも通ってるんで、っていう感じの。
-いろんな曲が進んでいくなかで、最後の曲「夜汽車」は、これがあるからこそより突き進んでいく感じが出ていますが、それまでの曲と比較するとちょっといなたさが感じられる曲ですよね。
彦:そうですよね。結構古い曲なんですけど、書いたときは宮沢賢治みたいなものが書けたらいいなっていうか。とある小説家の脳内のイメージっていう感じで、リリックとかの表記も原稿用紙に書いているかのようなイメージになっているんですよね。未完成の、断片的な物語というニュアンスで。あとはリズムとかが日本人の好きな祭というか、土着的なリズムで始まって──コロナ禍の今、祭がないじゃないですか。僕は夏生まれでめっちゃ夏が好きなのに、祭がないことがやっぱり悲しくなっちゃって。あれ、これどこかで祭やってる? みたいな匂いがするときがあるんですよね。そういう、どこかから聞こえてきそうな祭囃子みたいな感じで、この曲が今僕の中で輝きを放っているんですよね。なんか、うまいことこの気持ちを言語化するのは難しいんですけど、"めっちゃわかる私も祭超好き"っていう人がいると思うし。そういうやつらを集めるには、いい拍子、リズムだと思っていて。そこから全速力で、天翔ける感じですよね。
じゅんちゃい:俺が初めてスタジオ入ったときにやった曲だったんですよね。初めて4人でスタジオ入ったときに、"新曲あるから"って。お前ギターで入ったけど、ギター弾けると思うなよっていう感じで、シンセ弾かされましたけど。
ゆかり:(笑)
U sucg :)::そうだったわ(笑)。
DAIKI:で、この曲は自分がMade in Me.のレコーディングに携わって、初めて録った曲でもあるんですよね。
じゅんちゃい:自分たちで録ったボロボロのデータを持って行ったんだよね。
DAIKI:これ、どうやって録ったん? っていうくらい、ドラムの音もコポコポで。それを"は~......"ってなりながらも――
彦:自分たちで録った音をムキムキにしてもらって。その再録曲でもあるので、思い出もたくさん詰まってます。で、俺たちは同じ車両に乗ろうぜっていつもライヴで言ってるんですけど、それくらいこの曲にみんなでライドしてもらって。人生という片道の列車に、全員で乗れ! っていう──絶対そのメンツだったら、たとえ満員電車でも最高ですよね。そういうニュアンスをどうにか伝えようと思って、今はライヴの最後のほうにやることで、一体感を生み出せればなと思ってます。ワイドレンジの曲だから、きっと家で聴いていてもひとりだなってならないはずだし。コロナ禍において葛藤や迷っているものがあっても、お祭って一度そこで何かを忘れるようなハレの、狂いのための儀式みたいな感じもあるじゃないですか。単純に屋台とかも楽しいし。盛大なる応援歌じゃないですけど、そういう曲になってます。
LIVE INFORMATION
[Made in Me. ONEMAN LIVE"Re:lax"]
11月26日(金)渋谷WWW
[チケット]前売 ¥3,000(D代別) 一般発売中
チケットはこちら
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