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INTERVIEW

Japanese

クレナズム

2021年11月号掲載

クレナズム

Member:萌映(Vo/Gt) けんじろう(Gt) まこと(Ba) しゅうた(Dr)

Interviewer:吉羽 さおり

コロナ禍じゃなかったら、今自分たちはどんなバンド生活を送っていただろうと、ふと考えることもある。でも負けないぞっていう気持ちのほうが強かった


-今回はそこからもグッと進化していますし、前作の3rdミニ・アルバム『eyes on you』(2020年リリース)からも1年経つかどうかでの速いスピード感で、これだけ粒揃いの曲ができあがっていって。きっと活動がままならないフラストレーションが創作へと繋がってもいたと思いますが、とにかくバンドを前に進めていくんだっていう思いが強くあったんですね。

萌映:たしかにありますね。より今回のアルバムはJ-POPを意識して作ったので。たくさんの人に聴いてもらいたい思いが、よりメンバー全員強まったからこういう楽曲になったのかなっていうのは思います。

-曲も歌詞もより意識的になっていますか?

しゅうた:いろんな人に聴いてもらいたい思いが今回は強かったので。今までは内向的というか、抽象的なものが多かったり、あとは演奏が長かったり。

萌映:イントロ、アウトロが長いとかね(笑)。

しゅうた:万人ウケしないような楽曲も多かったんですけど。今回は歌始まりの曲があったり、あとはストリングスの音を初めて入れて広がりを持たせたりというのはありました。

-萌映さんの透明感があって、鋭い声がパーンと響く歌始まりの曲はパワーもインパクトも高いですね。

けんじろう:サブスクで曲を聴くときに、僕自身も最近いろいろな曲をサブスクで聴いていても、"これはちょっとイントロ長いな"とか、"もっと早く歌が欲しいな"とか思うことが多々あって。僕が作った曲も歌始まりが多いなって思いますね。

-そうしたキャッチーさと、J-POPになりすぎない、クレナズムならではのギター・サウンドをどう聴かせるかという、バンドとしてのこだわりも感じます。

まこと:自分たちの良さ、自分たちのバンドとしての音は失わないように加減しながら、うまくまとめていくというのは、今回いい感じにできたと思います。

-歌詞は、それぞれ書き方が違う感じがありますね。けんじろうさんの歌詞は映像的で、色や香り、動きが感じられるものを描いています。歌詞を書くうえで大事にしているのはどんなところですか?

けんじろう:情景が浮かぶようなことは大事にしていますね。でも、ただ情景が浮かぶだけでは面白くないなと思っているので、ハッとするような言葉とか、普段の生活ではあまり使いそうで使わないような言葉とかも散りばめています。

-「あまりふたつ」では、サビで"風が吹いて"というフレーズがあって、その音も風が感じられるようなサウンドになっていて、より情景が鮮やかになりますね。こういう音と言葉の関係も、意図したところですか?

けんじろう:サビで特にアコースティック・ギターの音が入っているんですけど、アコースティックと風ってなんか相性がいいなというか(笑)。空気感があるようなものにしたいなっていうのはありました。

まこと:たしかに、ビューって感じはあるよね。

けんじろう:"風の歌を聴け"ってあるじゃないですか。

-村上春樹さんの小説ですね。

けんじろう:それがちょうど机の上にあって。"風の歌を聴け"っていいなというのがあったんですよね。

萌映:そうなの? それ初めて聞いた(笑)。

けんじろう:あの本は内容的に特に、風の歌とかは関係ないんですよね。そういうのも面白いなって思って。タイトルに惹かれる感じがあって、"風"っていうのを入れようと考えていたんです。

-萌映さんの歌詞は、心情的な内面を丁寧に描いていく歌詞が多いですね。

萌映:私自身が聴く音楽が、心の内側を描いている曲が多いし、自分がそういう音楽に救われてきているので。自分もそんな存在になりたいなという意味を込めて書いています。

-最後の曲「あなたはさよならをここに置いていった」なども、詩的な静けさがあっていいなと思います。

萌映:この曲では、未来を明るく照らすとかここから頑張ろうというよりは、ズーンとへこみまくって落ち込んでいる今に寄り添う曲になっているんです。そういう"今"に寄り添う曲って、ありそうであまりないかなと思っていて。特にJ-POPでは、ポジティヴに着地する歌詞の書き方をしているものが多いなという印象があるんですけど。私はこういうJ-POPがあってもいいんじゃないかなって思うので。

-また、今作でしゅうたさんが曲だけでなく、歌詞も書いたのが「杪夏」ですね。

しゅうた:これは、今年花火見てないなというところから書いた曲だったんですけど。みんな結構作曲できるようになったし、作詞もしていて、僕はそういえば作詞してないなと思って。みんなに負けないように頑張ってみようということで、作詞もしました。実際歌詞を書いてみて、改めてメンバーすごいなと思ったし、歌ってくれてありがとうっていう気持ちがいつもよりも生まれました(笑)。

-まことさんは初めて作曲を手掛けましたが、歌詞ということはどうですか?

まこと:書いたことはあるんですけど、ボツになってけんじろうが書くっていうパターンがあったので(笑)。基本、僕の曲はけんじろうが歌詞を書いているのが多いかな。「解けない駆け引き」は萌映ちゃんが書いたりもしていますね。次は歌詞をちゃんと作れるようにと頑張っているところです(笑)。

-このコロナ禍でそれぞれが曲作りに前のめりになっていったようですね。

まこと:そうですね。各々ができたら曲数も増えるし、そのぶんたくさん曲が作れてリリースができたら、それはとてもいいことですし。

-今回いろんなトライもあっていい制作の時間だったことが窺えますが、この作品ができたからこそ、次の新たな何かが見つかったというのはありますか?

まこと:僕は大学からベースを始めたような感じで、音楽経験があまりない人間なので、ストリングスとかピアノもまったくわけのわからない世界でしたけど。今回「積乱雲の下で」で、アレンジャーの若田部(誠)さんにストリングスやピアノを入れてもらったんですけど、こういうやり方なんだなっていうのを間近で勉強できて。やっぱり実際に見てみないと経験できなかったかなと感じました。それを次に繋げられたらなとは思います。「解けない駆け引き」では(編曲の)Shun(Murano)君がヒップホップのトラックのような感じで作り上げてくれたけど、これが意外とバンド・サウンドにもなっているというか。うちのギターとベースを入れたら、ちゃんとクレナズムの音として認識できるんだなっていうのは発見でもありました。

-最初に曲を聴いたときは、こんなふうにメンバーそれぞれで曲を書いてるとは思わなかったくらい、バンドとしてひとつの音を紡いでいる、それぞれの色を持ち寄られてバンドの音になっているんだなっていうのは、より感じられました。

萌映:個人的に思っているのが、私たちの土台にあるシューゲイザーとかドリーム・ポップでは、ギターの歪みが強かったりすると思うんですけど。その音色に慣れすぎちゃって、みんなちょっとギターの歪みとかがないと、"ちょっと物足りなくない?"っていうのがあるので。そういう音もクレナズムのひとつになっているのかなとは思いました。

-そういうなかでけんじろうさんのギターは曲によっていろんな音作りをされてますね。

けんじろう:そうですね。作曲者と相談はしつつなんですけど、曲に合うように最後の曲「あなたはさよならをここに置いていった」では、久しぶりに大きく歪ませたなって思います。

-温度の高いギター・ソロも迫力ありましたよ。

けんじろう:このギター・ソロは勢いで弾いて、ワンテイクかツーテイク目くらいで終わったんですよ。

しゅうた:たしかワンテイクだったよ。

萌映:あれだけ男前なギター・ソロなのに、弾き終わったあと"これで大丈夫......?"っていう不安な顔してたのは覚えてる(笑)。

けんじろう:ギター・ソロのレコーディングでは毎回時間をかけている傾向があったので。こんなに早くOKテイクが出たり、いいんじゃないっていう反応を貰ったりすることが初めてだったので、"大丈夫!?"っていう。緊張とかもあってミスタッチもあるんですけど、エンジニアの方に"ミスタッチには聞こえないし、これはこれで味があっていいんじゃないの"と言ってもらえたので、勢いのあるギター・ソロになって良かったなって思います。

しゅうた:ギター・ソロ部分は、レコーディングの本番当日までどんなものが来るかわからない状態なんです。今回ワンテイク目でこれはカッコいいわっていうものが来て。アルバムに収録されたものは、リズムとかもそのときの勢いだったと思うので、ライヴでこれをどう再現してくれるのか楽しみではあります。変えてくるのか、原曲に寄せてくるのかとか。

-そこは注目ですね。今作を携えて11月23日からツアー("クレナズム ワンマンツアー 2021 ~本州を通りもん~")がスタートしますが、どのようなライヴにしたいですか?

萌映:まだ詰めなきゃなっていう部分もあるんですけど、今回のツアーでは今までずっとお世話になっていた照明の方と一緒に回る予定で。その方は歌詞に沿った照明を演出してくださるので。そういった見せ方を意識しつつ、バンド・サウンドでしっかりと見せられるようになれたらなと思っています。

-バンドとしてはこのコロナ禍がなかったら、もっと行きたいところもあったと思うんです。このフェスやイベントに出たいとか、これを狙ってたというのもたくさんあったと思うんです──その気持ちを創作に生かしたというのはあるとは思いますが、このコロナ禍の2年間を、クレナズムのような若いバンドはどう見ていたのでしょう。

萌映:ライヴに関して言えば、コロナ禍で配信ライヴが多くなってきていて。私たちも何回か配信ライヴをしたんですけど、やっぱり目の前にお客さんがいないのは結構マインドに繋がるんだなっていうのは、ひしひしと感じました。もちろん画面の向こうにお客さんがいるのはわかるんですけど、自分たちの気持ちの上げ方とかは、苦戦したところもありましたね。コロナ禍じゃなかったら、今自分たちはどんなバンド生活を送っていたんだろうというのは、ふと考えることもあるんですけど。マイナスな気持ちというよりは、それが今のサウンドに生かされたなって思っているので。負けないぞっていう気持ちのほうが強かったですね。

-ちゃんと作品に繋げていったというのは大きな一歩ですし、まだまだ"欲"がたくさんありそうですね。

萌映:いっぱいあります(笑)。それを今後に繋げられたらなと思いますね。

-ツアー以降の展開として、今何か思い描いていることはありますか?

萌映:今年よりもっともっとライヴができたらなとは思いますね。

しゅうた:また海外にもライヴに行きたいよね。

まこと:行けるようになってほしいよね。前はコロナが流行るギリギリで台湾へライヴ("意識不能招待所【參】林森北二泊三日音樂祭 2020")に行けたんですけど......。

萌映:そうだ。日本に帰ってきたら、トイレットペーパーがないっていう騒ぎになっていたんですよね(笑)。

-それすらもう昔のことのように思えます(笑)。この2年、配信ライヴや配信リリースの曲で聴いていた方も多いと思うので、いろんなところに行かなきゃってなりますね。

萌映:いろんな場所に行って、答え合わせをするじゃないですけど。クレナズムという音楽や、今回のアルバムを生で感じてもらえたらいいなって思っています。