Japanese
RiL
2021年07月号掲載
Member:SHUSEI(Vo/Gt)
Interviewer:吉羽 さおり
作品をコンセプトにしないとダメな病で(笑)今後にバッチリ繋がるので楽しみにしてもらいたい
-となると、自分の音楽というのはどんなものなんだろうって自己探求のほうに向きますよね。なぜ自分がこれをやるのかとか。
今もですけど、そればっかりしてます。ただ、その当時の自分にはあまりに刺激が強すぎて具合が悪くなっちゃって。イギリスとフランスでのツアーから帰ってきて、前のバンドはパンクしちゃったんですよね。自己探求しすぎて、耐えられなくなって。
-でも、やっぱり音楽をやりたいんだって、このRiLに繋がるんですよね。
そうですね。音楽をやってるから生きているという感じなので。音楽をやるのは決心も何もなく、ライフワークというか。マグロみたいなものですよね。動いてないと死んじゃうみたいな(笑)。
-ROARからRiLへ、そして今回のEPへという流れで、自分の作る曲に変化はある感じですか?
やっぱり必然的に変わってきますよね。最初はガレージっぽい「LOSER」から始まって、グランジっぽい感じになって──と言っても、グランジに関しては意識しないでも出ているんですけど。そこから自分でバンドを始めてから改めてTHE BEATLESにも触れるようになって、THE BEATLESに狂わされてサイケデリックにいったり、イギリスとかで出会ったプログレッシヴなエッセンスを経たりしたものが、前出した作品には出ていて。でも、今はもう1回、初期衝動から組み立てるという感じでやっていますね。
-制作上の変化というのはあるんですか。
コロナ禍になってスタジオも入れないなという頃、パソコンを買ったんです。今までDTMに苦手意識があって、一生触らないと思っていたんですけど、やってみようと。たぶん今DTMを始めなかったらこの先の音楽で俺は取り残されると思ったんですよね。コロナになってから、音楽の変化の速度が世界中でガーッと速くなった感じがあるじゃないですか。その空気もなんとなく感じていたので。昨年から、今もですけど、ずっと狂ったかのようにDTMをやっていますね。それでミックスに興味を持って、今回のEPでも自分で触らせてもらったりもしているので。そういうことでも、今までになかったものは入っていますね。
-今までは演奏をぶつけ合って終わる、みたいな方法ですか。
スタジオ入ってセッションして、いいネタできなかったらその日は終わりでという。効率は悪いんですけど、そういう作り方をしていたんです。そこに限界を感じたというのもあって。2ピースで音が少ないなかで、削ぎ落としていく方向だったらいけるんですけど、この先このまま作り続けていても、ステップアップは難しいなと感じました。DTMが力になってくれたというか。自分ができる範囲以上のことができるじゃないですか。それは作品にも出ていますし、これからの活動にも新しい希望の光になりましたね。やっぱり、守らなきゃいけない範囲はありますけど、可能性を狭める必要はないなって。
-ピアノなども入っていて、多彩なエッセンスがいいバランスでできあがっていますね。90年代のグランジ、オルタナに触れてきた世代は懐かしさも覚えつつ、やっぱり新たな風や空気感、音楽的エッセンスというものがあって惹きつけられるサウンドになっているなと思います。
そこは意識しました。グランジとか、'90sのものもどこかでアップデートしなきゃいけないと思うんですよね。そのまま同じことをやってもしょうがないし。ロックの歴史って、そういうものじゃないですか。新しいことをやるっていうことは絶対的に必要だと思っていて。それは意識しました。'90sが好きな人にも響いてほしいし、その人も引き連れて新しいとこに行こうよっていう。俺らがえらそうに行こうよって言うんじゃなくて、一緒に行こうというメッセージはあると思います。
-いい力の抜け具合があるサウンドでもありますが、歌詞を見ていくと、ローな気分の曲が多いですよね。
歌詞は変わりましたね。結構ヒップホップも好きで、当たり前といえば当たり前ですけど、韻を踏むとかフローに気をつけるとか、あとサビでああだこうだと歌ってもしょうがねぇなみたいな(笑)。
-今回も、「WORST」では"最低 最低"とか、「ECHO」では"悪くねえ 悪くねえ"とか、シンプルに突きつけるフレーズですもんね。
リフレインでいいじゃんみたいな。英語詞の曲は「LOSER」だけなんですよね。ただ、サビで日本語の言葉を並べて歌っちゃうとどうしても、歌謡っぽくなるというか。どうバンド・サウンドでやろうとしても、やっぱり日本語のリズムが歌謡のメロディにいきたがってしまう感じがあって。それが自分の中でコンプレックスに感じているところがあったんです。ただ日本語でも、エグめな言葉だったら、英語の単語のようなパワフルさやエネルギーみたいなものがあるじゃないですか。ああだこうだという説明じゃなく、衝動的になったらこの言葉以外出てこないっしょってことで、"最低"って。で、ギター・リフもリフレインしていて、サビもリフレインするものになっています。
-EP全体として、イントロダクションとなる「〈CHAPTER 2.5〉」からラストまで、トータルで流れているものがありますね。EPタイトルが"TARO"ですが、タロウ君を主人公にしたストーリーという作品なんですか。
これは、作品をコンセプトにしないとダメな病で(笑)。なので、今はまだすべては言えないですけど、今後を見てもらうとわかってくると思います。バッチリ繋がるので楽しみにしてもらいたいです。
-なるほど。アートワークに書かれている"ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK"や、手の甲に"DRAB SORROW"と描かれていたりする、そのヒントっていうのもこの先に?
はい、全部繋がってくるので。自分の中で今、RiLのシーズン2みたいな感じなんですけど。そのシーズンの1作目なので。このEPだけで考えてはいないんです。ここからスタートみたいな感じで。あ、なるほどと思ってもらえたらいいですね。
- SHUSEIさんのコンセプト病は何からですか? THE BEATLESやプログレからの作品の影響ですかね。
そうですね。イギリスに行ったのがデカいです。バンドをコンセプトとしてやっているというか。あとはTHE WHITE STRIPESとかの影響があるので。ジム・ジャームッシュの映画"コーヒー&シガレッツ"に、THE WHITE STRIPESが出ているんです。他にTom WaitsやIggy Pop(THE STOOGES/Vo)も出演していたんですけど、THE WHITE STRIPESはMeg White(Dr)とJack White(Vo/Gt)という本人で出ているんですよ。それにすげぇ衝撃を受けて。この人たちは、バンドを、自分たちを売りものにしているというか、あの人たち自身がTHE WHITE STRIPESって人生を演じちゃってるというか。
-その存在自体をエンターテイメントにしているという。
RiLも、バンドというものを音楽としてだけで捉えていないので。MVやアートワークとってもそうで、そこでバンドの世界を作っている。THE WHITE STRIPESも、THE WHITE STRIPESという世界を持っているじゃないですか。そういうのをやらないと気が済まないんですよね。
-ジム・ジャームッシュの話も出ましたが、90年代~00年初期の映画やカルチャーも好きなんですね。
なんでしょうね。94年生まれなんですけど。
-NIRVANAのKurt Cobain(Vo/Gt)が亡くなった年ですね。
あの時代に、赤ちゃんながらに入ってきたものが落ち着くんですかね? なぜか肌に合うんですよね。'90sの映画とか音楽もファッションもそうだし。好み云々以外にも、肌触りの良さというのを感じていて。
-時代的にも面白いですよね、いろんなジャンルの音楽やバンドがどんどん出てきて、そのジャンルを超えてミックスされたりもしていったし。映画とロック・ミュージックというのが一体となった面白さもありましたし。
音楽が解放された感じ、自由な感じはありますね。今はまたロックという枠の中だけじゃなく、もっと広い意味での壁のなさはありますけど。でも、当時の感じが魅力的に感じるのか肌に合うのか。ああいうの好きな人たちは絶対いるし、そういう人たちに"新しいのできたよ"っていうのはちゃんと届けたい。あそこで終わってないよっていうか。気づいてっていう(笑)。
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