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INTERVIEW

Japanese

夜韻-Yoin-

2021年01月号掲載

夜韻-Yoin-

Member:あれくん(Vo/A.Gt) 涼真(Composer/Gt) 岩村 美咲(Pf/Director)

Interviewer:稲垣 遥

-「Seafloor」からの3曲はショート・バージョン含めアニメーションのMVも公開されていて、映像も曲同士の繋がりが意識されたものになっています。

涼真:いいですよねぇ。

岩村:いろんな考察が広がるっていうか。映画を観たときも2回目観たときにまた新しい発見があったりとかするように、そういうところも楽しんでもらえるから、涼真君が言ってくれた飽きないところもそうだと思いますし、世界観にこだわって良かったなぁって。

あれくん:より深く音楽にのめり込むじゃないですけど。やっぱり聞き流すことが今多いじゃないですか。それを変えたくて、深く音と向き合っていただくっていうのは考えました。

-コンセプトで言うと、作品全体で恋するふたりの"すれ違い"の物語が描かれていますが、このテーマはどういうところから決まっていったんですか?

あれくん:それも直感です。すみません直感だらけで。でも、男の子が主人公の「Seafloor」ができて、その物語から繋がる「花の片隅で」の登場人物は女の子で、そのふたりを結ばせるときに、共感性があるといいなと。恋愛しない人ってほぼほぼいないじゃないですか。恋愛をする方に寄り添う形でストーリーに表せたらなとは思っていました。

-1曲目「君泳ぐ」は歌でなく、主人公の少年の語りがメインで、まさに物語が始まっていく感覚で、惹き込まれます。作曲のクレジットはこの曲だけユニット名義になっていますね。

涼真:導入部分を作ろうってなって。最初ピアノがいて、台詞が入ってきてって作ってたんですけど、劇伴っぽくしたいなと。予告編というか、"始まるよ"っていう。僕自身もオープニングSEがアルバムに入ってるバンドが超好きなんですよ! その続きで1曲目いくとか。a crowd of rebellionっていうバンドがそれをすごくよくやるんです! ......(※あれくん、岩村に対し)あ、ごめんメタル・バンドで......。

一同:(笑)

涼真:俺の好きな超かっこいいバンドなんだけど。

あれくん:うん。

涼真:SEから同じキーの中で1曲目にガーン! って入っていくのがすごくかっこいいと思ってて。夜韻-Yoin-はそんなガーン! っていくようなグループでもないけど、台詞の中でもフックになる部分があると思うんで、よりそこを出したいっていうか。物語が始まるよ感を3人が好きに作ったって感じですかね。

-1曲目にあることで、物語を大事にしているバンドなんだぞっていう姿勢も伝わります。そこから岩村さん作曲のピアノ曲「走馬灯」へと繋がりますね。

岩村:その次の3曲目の「Seafloor」に繋がる曲が欲しくて。「Seafloor」は男の子が海に落ちていくところを描いた曲なんですけど、そのなかでどういう世界が見えるかなっていうのを直感で作ったんです。海に落ちていくときって水で耳聴こえないじゃないですか。だから、そうやって音を失って海の中から水面を見ながら――MVでも男の子が仰向きに海の底へ落ちていくんですけど、その目線をそのままピアノで描けたらいいなと思って。ピアノの低音は海の底へどんどん落ちていくところ、アルペジオは波を表してるんです。

-不安な感じも孕みつつ、神秘的で、たしかに海の中から空を見ているような光が差し込むような感覚もありました。その次の「Seafloor」は死を想像させるシリアスなテーマでもありますけど、そこを描いていこうというのは何か想いがあったんでしょうか。

あれくん:そうですね。ミニ・アルバム全体を通したら恋愛の繋がりがコンセプトなんですけど、人間って病んだり、暗くなったりすることがあるじゃないですか。それを「Seafloor」で表していて。落ち込んでいるときとか、悩んでいるときとかって、何もかも遮断している状態というか、ひとりになる感じがあると思ってるんです。海の中に落ちるのは、自殺と重ねてるんですけど、さっき言ったように耳が聴こえなくなったり、ものが見えなくなったり、暗闇に落ちている感覚に陥るのを描いてて。単体でも聴けるし、アルバムを通したら恋愛の物語としても聴ける2面性を持ってて、それはわりと考えて作りました。

-テーマはそうだけど、ヒリヒリした感じだったり恐ろしい雰囲気だったりというヴィヴィッドな方向では描かずに、儚さや美しさが強調されているなと思いました。

あれくん:肯定したくて。共感してもらうっていうか。そこにうまく落とし込みたかったです。

-落ち込む気持ちがあってもいいんだよと。

あれくん:はい。

-その続きが「花の片隅で」。アコースティック・ギターの弾き語り的なところから、中盤ストリングスも入るドラマチックなアレンジになっていきます。鍵盤の音も豊かですし、木琴の音も鳴っていますね。

涼真:最初いろんな音を入れてたんですけど、逆に弾き語りっぽくするところがあってもいいなって。僕の中で結構攻めだったんですけど、そこで(楽器を)抜いて、1分くらい楽器があんまりないんですよ。途中で一気に広がる感じにしました。あと歌詞が悲しいんですけど、悲しい曲を明るくやってるバンドがすごく好きで、そういうハレルヤ感出したいなぁって。そこもすごくハマったなと思いましたね。"いきなり弾き語りなの?"と感じると思うんですけど、イヤフォンで聴いたら、バンドが入ってくるところですごく広がりがあるんですよ。その前の「Seafloor」がじゅわっとした広がりのミックス感だったんですけど。

-リバーブが効いた感じでしたよね。

涼真:そうなんです。海の中感があったのに対して、「花の片隅で」はわかりやすく広大な感じで各楽器が配置されてるんで、一番感動的なところというか。

-開放感がありますね。また、この曲にも台詞がありますけど、「君泳ぐ」の言葉を繰り返していたりもする。

あれくん:うまくリンクづけられたら、ひとつの線で結べたらなって。伏線の台詞を入れてあります。

-そこもいろんな解釈ができるところではありますね。また、「逆行」は今作の中で一番バンド・サウンドな感じのハイテンポなロック・ナンバーです。

涼真:そうですね。音はごちゃごちゃしているように出しているっていうのもあるんですけど。

-そうなんですか。

涼真:基本的にビートから組むんですけど、3種類くらいはドラムを入れて、カオス感みたいなのを出したかったですね。曲的にも時系列が戻るって意味合いがあったので、SFチックにしたかったというか、リアリティはいらないなって。そういう意味でドラム・サウンドも遠めで、レイヤーもたくさん入れました。

-それで実際のテンポ以上にハイテンポに聴こえるんですね。

涼真:そうです。それもちょっとやってみたかったことで、ロックな曲に夜韻-Yoin-らしさを足すってときに僕的にはアコギが重要だなと思ってて。アコギが他の曲より結構前に出てて、他のバンドさんよりたぶん全然デカいんですよ。だいたい普通、スネアと一緒くらいなんですけど、この曲はアコギがイントロとかでもガンガン出てて。16分系のジャンジャカジャンっていうのがあると曲が速く聴こえるんです。それをハイハットでチキチキやるとか、他の楽器でやっても良かったんですけど、全セクションにアコギがいるのが夜韻-Yoin-っぽいなと個人的には思います。

岩村:SYNCROOMっていうオンラインでセッションできるアプリで一緒に作ったんですけど、ライヴ感を出したいなと思って。ドラムをスタイリッシュにカッコ良くしてほしいなって私が言って(笑)、カッコ良くしてもらいました。かっこいいけど、儚くて美しい夜韻-Yoin-らしいところも欲しいなという。

-涼真さんはこういうバンド・サウンドを押し出した感じは得意そうですよね。

涼真:はい。もうポーンってあんま悩まずに。でも、そのなかでも結構攻めたというか。

-その夜韻-Yoin-らしさとロック・サウンドの両立の部分ですかね。

涼真:そうですね。ストリングスとかも残したくて。劇中歌みたいな感じにしたかったんです。ストーリー的には「逆行」の瞬間っていろいろあったときじゃないですか。

-そうですね。起承転結で言うと転の部分というか。

あれくん:うん。

涼真:主人公的にも、しっちゃかめっちゃかになってると思うんですよ。そのカオス感を出すときに楽器数が必要だなって考えて。その中でも、エレクトロニックな部分とアコースティックな部分とを、両立させたサウンドをすごく探したっていうか。あとフル・オーケストラを聴いて参考にしました。

-あぁ、どこを強く出すのかとか?

涼真:そうです。特にリズム隊をよく見てて、すごく勉強になりました。この役割をバンドにあてはめたらこの楽器になるなみたいな。チェロがシンセ・ラインになったり、ダブル・ベースがベースになったり。このまま落とし込んだらスタイリッシュ劇伴ができるなって、そういう勉強になったなと思います。楽しかったです。