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INTERVIEW

Japanese

Sori Sawada

2020年10月号掲載

Sori Sawada

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

人と人とのすれ違いを描くラヴ・ソングを得意とする作編曲家/シンガー・ソングライター、Sori Sawada。以前は、自作曲を他のヴォーカリストに歌ってもらう方式を採っていたが、昨年以降、自らの声で歌う活動を本格化。昨年2月末にはミニ・アルバム『昼日中』がリリースされたが、それ以降、しばらくは曲が書けない日々が続いたという。今回リリースされる『魚と猫』は、苦しかった日々をこれまでとは違う形で――しかし本当はずっと求めていた形で昇華させた作品だ。この1年半で彼はどう成長したのか。赤裸々に語ってくれた。

-"魚と猫"というタイトル、面白いですよね。"同じ場所では生きていけない"ということを意味するモチーフなのは理解できるんですけど、どうして魚と猫なんですか? "犬と猿"とか、"猫と鼠"とか、他にもいろいろ考えられそうなのに。

対になるだけじゃダメだったんですよね。魚と猫って、共生できないわりにセットで扱われやすいものじゃないですか。

-"お魚くわえたドラ猫~♪"みたいな?

あの曲によるところがかなり大きいと思うんですけど(笑)。......イメージとしては近しいものなのに絶対に共生できないなんて、すごく儚いというか、面白いものだなと思って。あとは単純に、猫って、僕の中の女の子像に結構近いんですよね。「魚と猫」という曲の中に"急に心ごと居なくなって。"という歌詞があるんですけど、その気まぐれさがわかりやすくていいなって思っています。

前回のインタビューから1年半経っているので、まず、この1年半でのSawadaさんの感情の浮き沈みを知りたいなと思いまして。この紙の横軸を時間、縦軸を感情として、折れ線グラフを書いていただけますか。横軸は、スタートが『昼日中』のリリース日で、ゴールが今。縦軸は、上に行くほどハッピーで、下に行くほど絶望的、というイメージです。

どうなんだろうなぁ......かなり低空飛行だった気がするんですけど......(1分後)こんな感じですかね。

-ありがとうございます。えーっと......低めのところから緩やかに上がっていき、一度下がって、そこから急上昇すると。......せっかく『昼日中』をリリースしたのに、低いところから始まるんですね。

正直、『昼日中』に関しては、自分的には上手く作れた実感がなかったんですよ。結果的に今はいいアルバムだなって思っているんですけど、当時は"あんまりいいものが作れなかった"という感覚があって。アルバムが、というよりかは、あの時期の僕にはいいものを作れていなかった気がしたんですよね。スランプと言うのもおこがましいですけど、"もうちょっとできただろ"と思ったし、逆に言うと、自分の現在地がここだとしたら、"もうこれ以上書けないんじゃないか"とも思った。なので、リリースしたあとも"これで良かったのかな......"という気持ちが大きかったんです。それで結構へこんでいましたね。近しい人からも"カップリング集みたい"と言われて。

-それは、インパクトに欠けるということ?

ちゃんと聴けばいい曲ばかりだけど、人を掴める曲がないっていう意味だと思っています。それは僕もすごく実感していて。『昼日中』をリリースしたあと、12月までの約10ヶ月間、1曲も発表しなかったんですよ。それは、アーティスト活動をあまりしないようにしていたからなんですよね。(曲を)書いても書いても"違う"って感じだったから、これはもう、尽きたんだなと思って。

-だけどグラフを見てみると、その後じわじわと上がり始めていますね。

はい。この時期ちょうど、シンガー・ソングライターの足立佳奈さんに「話がある」という曲を書き下ろしさせていただいて。あれ、コンペティション形式だったんですよ。バラードでコンペに勝てたことが自信になったんですよね。対外的な評価を得られたことで"ちゃんと自分の音楽を作れている"、"自分のやってきたことは間違いじゃなかったんだ"という実感がわいてきました。

-「話がある」は、コンペに出して評価をもらう前から"お、これはひと味違うぞ!"みたいな手応えを感じていたんですか?

いや、正直あんまり......。いい曲だとは思っていたけど、自分のフルの能力からは程遠いとすら思っていたくらいで。ただ、足立さんの声が入って、チームの方々とやりとりをしながらブラッシュアップをしていくなかで、最終的にはいい曲だなと思えました。

-"曲が書けない"というのは、本当に1曲も書けなかったのではなく、書けはするけど自分で納得できるレベルのものが出てこなかった、ということですよね?

はい、そうですね。

-そう考えると、低迷期に書いた曲も、他の人から見たら、そこまでクオリティが低くなかったかもしれないです。

あ~、それもあり得たかもしれないです。だけど、そういうものを出す自信はなかったですね。

-で、そのあとグラフがガタッと下がってしまいますが。

これはまぁ、人間関係にいろいろなことが生じた時期でして......。結局解決はしたんですけど、ここでめちゃくちゃ疲労しましたね。人生で一番労力を割いたかもしれない。ただ、気持ち的に落ち込んではいますけど、僕にとってすごく大きな期間で。クリエイターって基本的に(気持ちが)落ちたときのほうがエネルギーが強いと思うんですよ。だからクリエイティヴにおける一番の幸福ポイントはここなんでしょうね。クリエイティヴ幸福度で言うと、この期間はてっぺんについていると思います。

-そのあと上昇していって今に至る、と。

僕、3ヶ月ぐらい前に名古屋から東京に越してきたんですよ。それによって東京のクリエイティヴの友達にも会えるようになったし、MVも、吉田ハレラマさんという以前からお願いしたいと思っていた方にアプローチすることができて(※吉田ハレラマが「魚と猫」MVの映像演出を担当)。あと今、whooさんという方と一緒に曲を作っているんですよ。

-「望春」でも制作を共にしていますね。

はい。上京を機にクリエイターとして独り立ちできたことによって、ツキが変わったというか。今はすごく好きなことをやれているなぁっていう自覚があるし、すごくいいものを作れていると思います。