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INTERVIEW

Japanese

いゔどっと

 

いゔどっと

Interviewer:秦 理絵

-今作にはたくさんのミュージシャンがトラックメイカーとして参加してますけど、曲の内容に関しては具体的にオファーをするんですか?

人によって違いますね。例えば、「着火」を作ってくれたsyudouさんはすごく仲が良くて、飲み友達なんですよ。だから、僕の内面も理解してくれてたので、もうお任せで。"好きにどうぞ"ってお願いしました。

-「水槽」はどうですか? いゔどっとさんがカバーした代表曲「flos」を作った、R Sound Designさんの書き下ろし曲で、どこか「flos」を意識したように感じましたけど。

まさに「flos」を感じるものにしたいっていうのはありましたね。水の中を漂うような感じというか。ただ、"flos 2"にはしたくない。そういう大まかなテーマはお伝えしましたけど、あとは好きなように作ってもらいましたね。そう考えると今回のアルバムは全部がそんな感じだと思います。100回嘔吐さんの「続く青」もそうだし。さっきの話にも繋がるんですけど、"こうしてくれ"っていうのは"こう見てくれ"っていうのと一緒で、その作家性が失われるんじゃないかっていうのがあって。"失恋の歌にしたい"とか、テーマだけ決めちゃって、あとはできあがった曲についていくっていう感じでしたね。

-失恋っていうテーマでお願いしたのは「赤色と水色」ですか?

そう、この曲に関しては結構細かく決めたんですよ。遠距離恋愛で片方が出ていっちゃって、とか。ただ、「赤色と水色」は失恋の曲じゃないんです。いや......大きなテーマは失恋なんですけど、実は別れてなくて。自分もそうなんですけど、友達の恋愛相談を聞いたりすると、"この人とはもう別れるかも"みたいな瞬間ってあるじゃないですか。でも、相手には言わないっていうダラダラとした感じを書いてほしかったんです。当時、社会人になって周りのカップルがみんな別れてるのを見て"これだ!"と思ったんですよ。人の恋愛を見て曲にデザインしてるところはありますね(笑)。

-シンガー・ソングライターあるあるだと思います(笑)。

ははは(笑)、そうですよね。

-各クリエイターが個性を生かした楽曲が並んでるなか、いゔどっとさんがアレンジまで手がけた「夜半の雨」と「エニ」についても話を聞かせてください。特に、「夜半の雨」はいゔどっとさんの表現の核心にあるものが詰まってるように思います。

「夜半の雨」は、「余薫」の次の次ぐらいに書いたんです。初めて編曲まで自分で全部作ったんですけど、最初に作り始めたときから"これは全部自分で仕上げよう"と思ってて。右も左もわからないまま、ずっと試行錯誤しながら作ってましたね。

-美しい音像の中にヒリヒリとした焦燥感とか孤独のようなものが表現されてますけど、最初から頭の中でイメージはあったんですか?

ありました。これ僕だけかもしれないんですけど、例えば、夜に仕事が終わって11時とか12時とかに帰ってるときに、街に誰もいなくて車も通ってなくて、光だけがあって、世界にひとりだけの感覚になるときってないですか? その感覚がわりと好きで。そういう自分だけの世界にいるみたいな曲にしたかったんです。

-そのひとりだけの世界で何かを探して必死に戦ってるような表現もありますよね。

僕、人に悩みごとを相談できないタイプなんですよ。自分の中に答えがあるはずだから、解決にはならないかなと考えちゃって。それが夜ひとりで歩いてるのと似てるなって思うんです。自分の心の中で何かを探してるのが一緒だなって。だから、「夜半の雨」はポップな曲調を意識してはいるんですけど、歌詞は暗いんですよね。

-なるほどね。さっきの話の中で、いゔどっとさんって、一度音楽をやめて、戻ってきたって言ってたじゃないですか。それはなんでなんだろう? って考えたときに、この曲みたいに、言葉にできないものを表現したいからじゃないかなって気がするんです。

そうだなと思います。僕、文章を書くのが苦手なんですよ。歌詞は書けるんですけど。手紙とかSNSとかで真面目なことを伝えるのが苦手だから、ふざけちゃうんです。ちゃんと面を向かって言うのはできるんですけど。

-文章だけだと誤解が生まれる可能性があるから?

いや、安っぽくなっちゃう気がするんですよね。人によってだと思うんですけど。なんて言うんですかね......。

-言葉にした途端に、自分の心の中にある名前のない感情に答えを出してしまうような気がするからですかね。もっと曖昧なままでいいというか。

うん。例えば、"好きだよ"っていうことを伝えるために"ああでこうで、こう思ってるから、好きだよ"って説明しちゃうと全部が取り繕ってる感じがして嘘っぽく見えちゃう。でも、歌詞だと誤魔化せる部分があるんですよね。音と一緒に乗せる言葉だからこそ、伝わるものがあるんじゃないかと思うんです。

-いゔどっとさんにとって自分の気持ちを表現する最良の形が音楽であると。

そうなんだと思います。

-最後に収録されている「エニ」はアコースティックとギターだけの曲ですけど、他の楽器を入れてアレンジしようとは思わなかったですか?

この曲は最初ギターで作ったんですけど、音数が少なくてポロポロ鳴ってる感じが気に入っちゃったんです(笑)。「エニ」は強い女の人がテーマなんですよね。「余薫」は完全にフラれた曲なんですが、「エニ」は自分から彼氏をフッちゃったけど後悔してるっていう歌なんです。それを彼氏に向けて歌うような吐き捨て感を表現したかったから、他の楽器を入れて編曲しちゃうとその雰囲気が変わると思ったんですよね。

-「エニ」もですけど、今回のアルバムには過去になった人への想いとか、忘れたくない記憶とかをテーマにした曲が多いじゃないですか。それは何か理由がありますか?

自分の根本に強くある気持ちなんだと思います。一番記憶に残ってるんですよね。誰とでも、別れるときには"嫌だ"っていう感情があると思うので。何かを狙って作ったというよりは、今思ったことを素直にパンって出しちゃったっていうことだと感じますね。

-わかりました。今回自分で作詞作曲、アレンジまで手掛けた曲も収録した初のアルバムができたことで、今後どんなふうに活動していきたいと思いますか?

そうだなぁ......音楽をずっと続けられたらいいなと思います(笑)。

-続けることが一番難しいと言いますからね。

そう、難しいですね。僕、友達とかに"モチベーションがずっと続くのがすごいね"って言われることが多くて。自分では思ったことがないんですよ。モチベーションを上げてやってるつもりもないし、頑張ってるつもりがないんです。ただ、やりたくて音楽をやってるところが強いので、これから先もそれができたらいいなと思いますね。

-今作ではアートワークにも関わってるそうですけど、ミュージシャンでもあり、デザイナーとしても活動していきたい気持ちはあるんですか?

今自分の周りのものは結構自分で作っちゃってるんですね。今回のジャケットはイラストレーターに頼んでロゴを自分でやったんですけど。それでうまくいくことが多いというか、狙ったところに狙ったままいけるんですよ。

-全部自分で作らないと気が済まないタイプなんですかね(笑)?

それが苦じゃないんですよ。曲を作るとその段階で、どう見せたいかっていうイメージも湧くので、だったら自分でやっちゃったほうがいい。だから、ミュージシャンとしても、デザイナーとしても、どっちも楽しんでやっていきたいですね。そうなっていきたいというよりは、自然となっていくのかなぁという感じかな。なるようになれっていう。