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INTERVIEW

Japanese

Self-Portrait

2020年04月号掲載

Self-Portrait

Member:眞鍋 総一郎(Vo) 田中 勇二郎(Gt) 百済 慎吾(Ba) 岡崎 貴人(Dr)

Interviewer:山口 哲生

-自分たちのイメージを取っ払うにあたって考えていたことはありましたか?

眞鍋:僕らのライヴのスタイルは、ガッ! とやる感じというか、"パワー!"みたいな感じのスタンスでやってきたんで(笑)、どうしてもアッパーな曲が多かったんですよ。アップテンポか、もしくはバラードで、ミドルの曲が少なくて。なので、今作はそこがすごく多いですね。今まで得意としてきたアップテンポなものを言ってしまえば封印して、ミドル・テンポのものを広げていくっていう。そのなかでロックなテイストとか、メロディが映えるようなアレンジとかにチャレンジしたんですけど、できあがってみたらすごく僕ららしいものになったと思うし、個人的には今も毎日自分で聴くぐらい気に入った作品になりました。

-たしかに新しい挑戦はしっかりしているんですけど、それでもSelf-Portraitらしさが出ているのは、積み重ねたものが自然と出てくるんでしょうね。

眞鍋:そうですね。さっきも言いましたけど、今回はライヴハウスというよりは、日常をテーマにするっていうところで歌詞も書いていたんです。でも、「星の無い夜」で"ライブハウス"っていうワードが出てきちゃって、"結局やってもうてるやん"とは思ったんですけど(笑)。

田中:どうしても変わられへんもんがあった(笑)。

眞鍋:我慢できひんかった(笑)。でも、僕の台詞を発信するというよりは、聴いている人が主人公になって聴けるような曲を、今回は制作できたんじゃないかなと思いますね。

-いただいた資料に"喜怒哀楽を詰め込んだ"とあって、まさにその順で曲が進んでいく形になっていますが、1曲目の「シスター」は"喜"に当たりますね。バンド・サウンドに力強さはあるんだけど、それと同時に優しさや柔らかさも感じさせるものになっていますが、この曲はどういうところから作り出したんですか?

眞鍋:僕、3個上の姉がいて、キャリアウーマンというか、仕事が大好きでバリバリ働いていたんですけど、子供が生まれた瞬間にパっとお母さんに変わって今は育児を頑張っているんですよ。出産のときに里帰りで大阪に帰ってきて、子供が生まれたてのときは僕も会いに行ってたんですけど、子育てってほんまに大変じゃないですか。夜泣きも1時間半おきぐらいにするんで、めちゃ疲れ果てている顔をしていて。でも、自分の子供に愛情をしっかり注いでいるところを見ていると、お母さんってすごいなと。だから、お母さんに対しての応援歌というか、大変なこともいっぱいあるけど、この曲を聴いて頑張ろうと感じてくれたらいいなと思って作った曲ですね。

-すごく優しくて素敵な歌詞だなと思いました。

眞鍋:めっちゃくちゃ優しい曲になったと思います。"何十年前かのあの人みたいに"という歌詞は自分の母親のことなんですけど、お姉ちゃんは自分の子供を産んだときに、お母さんに対してありがとうってすごく思ったやろうなって。だから、姉だけじゃなくて、母に対するリスペクトとかも全部詰め込みたいなと思って書いてました。ただ、自分には子供がいるわけじゃないので、いろんな人が子育てしているのを書いているブログとか、動画とかを観ながら、なるほどなと思いながら作ってましたね。

-2曲目の「星の無い夜」は、まさに今までやってこなかった曲調になっていますけども、アレンジ作業はスムーズにいきました?

眞鍋:このテイストにするのは結構勇気がいりましたけど、"かっこ良くなりそうやな"っていうのは結構最初の段階からあって、"じゃあやってみよう"ってすぐになりましたね。

-ギターが気持ち良かったんですけど、もともとこういう感じの曲は好きでしたか?

田中:そうですね。ああいうカッティングはSelf-Portraitではやってこなかったですけど、もともと好きではあって。でも、こういう曲にしようってことになって、最初にアドリブで合わせていたときはなかなかフレーズができなかったんで、家に帰ってどうしようって一番悩んだ曲でもありましたね。ただ、今聴いていて一番楽しいのはこの曲です。

-喜怒哀楽の"怒"に当たるのもあって歌詞はささくれ立っている感じがありますけど、メッセージとしてはすごく熱いですね。

眞鍋:バッド・エンドで終わる曲はあまり作りたくないんですよ。最後には、ちゃんと光が差すようにしたいというのは曲を作るうえで常に思ってます。歌詞を書いていて熱くなってくると、自然とそういう感じになってしまうというか。

-書いているうちに気持ちが熱くなってきて、我慢できなくなって"ライブハウス"という言葉を使ってしまったと。

眞鍋:そうです。もしこの歌詞みたいな感じになってしまったら、これはもう"ライブハウスにおいで"以外にないなと思って(笑)。

-3曲目の「コントラスト」も"怒"な印象が強いですね。

眞鍋:この曲だけもともとあったんですよ。2014年にリリースした『拡散希望』というシングルの2曲目に入っていて、メンバー的にもすごく気に入っている曲だったから、『AT FIRST』に入れたかったんですけど、レーベルといろいろ相談していくなかで、"然るべきタイミングで出そう"と。そういう曲がいくつかあったんですけど、その中のひとつでした。

-この曲を作った当時はどんなことを考えていましたか?

眞鍋:今よりもロック色が強い感じでしたね。アグレッシヴな時期というか。

-「拡散希望」ってガシガシかき鳴らす感じというか、ちょっとやんちゃな雰囲気もある曲でしたよね。

眞鍋:そうですね。エグみが強めというか(笑)。

百済:たぶん年齢を重ねて丸くなったところもあると思うんですけど(笑)、当時は今より、もっと見えない何かと戦っていた感じだったというか、ステージの内側で戦っていたというか。音楽に勝ち負けって別にないけど、自分たちに負けたくないとか、あいつらに負けたくないみたいな、根拠のない勝ち負けにこだわっていたのかなって。なおかつそれをお客さんにも飛ばしていこうっていう時期でもあったんで、そういう感じが曲にも出てましたね。どの曲もわりとガシャガシャしていたというか。

眞鍋:僕、世の中に対する不平不満ってそこまでないんですよ。だから、"怒"の曲は世の中に対してどうこうというよりも、だらしない自分や、うまくいかんときのことを思って作ることが多いかなと思います。自分に対する苛立ちを書いているというか。

-外側の何かに怒るというよりは、内側に向かっていくと。

眞鍋:もしかしたら応援歌もそうかもしれないです。自分がうまくいっていないときに"頑張れ、俺!"みたいな(笑)。それが結果的に自分と同じような心境の人に伝わっていくというか、そういうもんなんちゃうかなとは思ってますね。

-勝ち負けにこだわっていた時期がひと段落したのはなぜだったんでしょうか?

百済:「コントラスト」が生まれた時期は岡崎がバンドに入ったあとぐらいなんですけど、そこからいろんな意見がメンバー内で出てくるようになって。基本的には、僕らは来てくれる人、応援してくれるお客さんのために音楽をやるべきやし、そことステージの内側どうこうの話は、正直あんまり関係ないんじゃないかっていう意見もありつつ、僕らとしてもそのことをどんどん理解していったところもあると思うんですよね。だから、当時の僕らからしたら「シスター」みたいな曲って、なかなか勇気がいる曲だったんじゃないかと。喜怒哀楽の"喜"を全面的に出したような曲調はやっていなかったんで。そういう意味で今回のアルバムは僕ら的にもかなり新鮮なところがありますね。

-こういう曲がやれるようになったんだなっていう感慨もあります?

百済:めちゃめちゃありますね。そこはきっとメンバーみんな思っているんじゃないかな。