Japanese
シュリスペイロフ
Member:宮本 英一(Vo/Gt)
Interviewer:山口 智男
昨年結成20周年を迎えたシュリスペイロフが、6thフル・アルバム『遊園地は遠い』をリリース。前作から約2年半ぶりと今回はちょっと間が空いたが、13年の"DELICIOUS LABEL"移籍と上京をきっかけに加速し始めた活動の勢いが未だ衰えていないことは、今回打ち出した新境地からも明らかだろう。ノスタルジックな日本語のロックの系譜に位置しながら、90'sオルタナの空気も胸いっぱい吸い込んだことを思わせるシュリスペイロフ・サウンドは、結成21年目にしてどのような進化を遂げたのか。バンドのバックグラウンドをひもときながら、全曲の作詞作曲を手掛ける宮本英一に訊いてみた。
-新作、いいですね。バンドがスタジオで演奏している姿が目に浮かぶようなところや、聴きながらあれこれと想像が膨らむようなところがじわじわと染みてきました。
CDでもバンド感は年々上がってきましたね。レコーディング・スタジオで緊張しなくなってきたんです(笑)。あんまり慣れていないスタジオだと緊張するんですけど、もう何回もやっているんでさすがに。
-でも、お客さんがいるわけじゃないから(笑)。
ライヴハウスに初めて出たときもそうだったんですけど、かっこいいことをやっている空間に緊張するんですよ(笑)。スタジオに慣れたことに加え、エンジニアさんもずっと同じ方にお願いしているので、それで結構リラックスしてできるようになったというのはあるかもしれないです。
-では、今回の『遊園地は遠い』も手応えがあると。
ええ。曲のバランスもいいし、重たくもなく、軽くもなくという感じがするなぁと思いました。
-そんな新作については後ほどじっくりと聞かせていただきたいと思います。その前に、今回Skream!初登場なので、結成から20年のキャリアがあるバンドに今さらというところもあるのですが、どんなバックグラウンドを持ったバンドなのか、読者もそれを聞くと親しみやすいと思うので、まず聞かせていただけますか? もともとは札幌で、どんなふうに始まったバンドだったのでしょうか?
高校の同級生だったブチョー(Dr)と前のギタリストと、バンドをやろうということになってメンバー募集したら野口寛喜(Ba)が来たんです。最初の5年間ぐらいはスタジオで曲を作って遊んでいました。というのも、さっき言ったようにああいうかっこいいところには行けないみたいなところもあったし、そもそもライヴハウスにどうやったら出られるのかもわからなかったし。そしたら、新しいライヴハウスがオープンして出演バンドを募集しているというので、行ってみようかってなったんですけど、それも二の足を踏んでなかなか行かなかったっていう(笑)。そのあと、当時付き合っていた彼女の職場の人がライヴハウスでライヴをするからっていうんで、観にいったら全然良くなくて(笑)、こんなんでライヴできるんだと思って、"じゃあ自分たちも"ってライヴすることになりました。
-初ライヴはどうでした?
夢中でした。お客さんは対バンのメンバーだけだったんですけど、なるべくビビッていることがバレないように4人で固まって、あんまり喋らないようにしてましたね(笑)。それをきっかけにそのライヴハウスの店長さんから誘われるようになって、ライヴも重ねてCDを出すみたいな話になっていったんです。
-バンドを組んだときは、どんなバンドをやりたいと考えていたんですか?
くるりが当時流行っていたんですよ。だから、くるりももちろん聴いていたんですけど、僕はお姉ちゃんの影響でユニコーンとか、奥田民生とかが好きだったんです。あとは、TRICERATOPSとか、真心ブラザーズとか。バンドを始めるまではそこまで音楽を聴いていたわけではなかったんですけど、バンドを始めてからJim O'Rourkeをジャケ買いしたんですよ。ジャケットが友沢ミミヨのイラストの『Eureka』を。そこからやっと洋楽に馴染めるようになりました。それまでは無理矢理"聴くべきものだ"みたいに聴いてたんですけど、『Eureka』を聴いて初めて洋楽が聴けるようになった気はするなぁ。それから『Eureka』はずっと聴いてますね。
-90年代の洋楽オルタナをがっつり聴いてきた人たちなんだろうなと想像したのですが。
NIRVANAはKurt Cobain(Vo/Gt)が死んじゃってから聴きましたね。今回これまでよりもロックっぽくなったんですけど、それはプロデューサーのさわおさん(the pillowsの山中さわお/Vo/Gt)が"パワー・コードで曲を作ってみたら?"って言ってくれたので。僕は曲を作るとき、そんなにコード云々は意識せずに、いい響きのコードがあったらそこから作っていくっていうのが多かったんですけど、今回パワー・コードで作ることに挑戦したことで、そんなふうに聴こえるのかもしれない。だから、周りの友達に1曲目の「つまんないね」を聴かせると、"NIRVANAっぽいね"って言うんですけど、"あぁ、そういうふうに聴こえるんだ"って。僕たちとしては作っているとき、"BARBEE BOYSみたいだね"って気分でした。
-山中さんは、なぜ"パワー・コードで"と言ったんでしょうか?
"この曲、抜けがいい音で聴いてみたいよね"っていうのが昔作った中にあったんですよ。例えば、「つまんないね」を難しいコードでやると、ぐちゃっとなるというか、聴いていてわからなくなっちゃうと思うんですけど、それをシンプルに、ソリッドにしてやったら結構パキーンとなるんじゃない? って感じのアドバイスだったと思います。実際そういうふうにやってみたら、そうなりましたね。あ、これを言っていたのかって。
-曲はすごくいいんだけど、やっていることがややこしくて、その良さが伝わりきっていないという思いがあったんでしょうか?
そうかもしれないです。昨日メンバーと"5分以内の曲が多いね"って喋ってたんですよ。僕ら、これまでそんなに短い曲はやってなかったんです。7分ぐらいある押しつけがましい曲をやっていたので(笑)、"そういえば、短くなったね"って。それもさわおさんにプロデュースに入ってもらって、"ここ、いらないんじゃない?"とか、"ここ、こんなに長かったら飽きちゃう"とか、アドバイスしてもらったことが大きいのかな。僕らもその感じに飽きてたっていうのもあるし、7分もあると単純に練習するのも疲れますからね(笑)。短い曲のほうが今の気分に合ってるんだと思います。
-「ハミングバードちゃん」の間奏がちょっとジャムっぽくなったり、アウトロでワルツになったり、「feel empty」もやっぱりジャムっぽくなったり、ところどころでちょっとプログレっぽいところがあるのですが、それは長い曲をやっていた名残なんでしょうか?
そうですね。さっき言っていた、"聴かなきゃいけない"みたいな感じでYESとか、そのへんのバンドは聴いてはいたんですけど、なんでそうなったのかな(笑)。
-プログレや、60年代~70年代のインプロが長いブルース・ロック・バンドの雰囲気を感じたのですが。
澁谷(悠希/Gt)君がそういうの好きなのかな。わりと古めの曲が好きなような気がします(笑)。
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