Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

101A

2019年09月号掲載

101A

Member:noah(Vo/Gt) the k(Ba/Prog) Sally(Dr)

Interviewer:小野島 大

2002年の結成以来、常に完成度の高い自己の表現世界を追求してきた101Aが、5年ぶりとなるニュー・アルバム『dance in a dim....』を発表する。ダークで陰鬱で幻惑的で、時にノイジーに、時に狂おしく、表情豊かに鳴らされる音は、確固たるヨーロッパ的美意識を感じさせながらも、同時に、不安定に揺れる自己のアイデンティティを表象しているかのようでもある。10月1日には渋谷WWWで恒例のワンマン・ライヴ("the day of 101A[dance in a dim....]")が決定し、新作はそこで先行販売される。この美しい音世界がいかにライヴで再現されるのか。楽しみに待ちたい。

-5年ぶりのアルバム『dance in a dim....』が10月1日のライヴ会場先行でリリースされますね。

the k:前は1~2年に1作くらいのペースだったんです。今まではアルバムを作る間はライヴもやらずに曲作りに集中してたんですけれど、今回は、曲を作ったらライヴで実際に演奏して試してみて、また修正して練って、ある程度いい感じになったところでレコーディングしたんです。なのでちょっと時間がかかりましたね。

-そういう作り方にしたのは、何か思うところがあったんですか?

the k:今までの作り方に飽きたっていうことですね(笑)。毎回新しい角度からいったほうが、自分たちも新鮮で、お客さんにも新鮮に感じてもらえるんじゃないかな? と思ってて、毎回アプローチは変えるようにしています。

-新曲をライヴでやることによって、どんな気づきが?

the k:新曲をやるときは"これいけんのかな? アリなのかな? ナシなのかな?"って自分の中でも迷いがあるんです。カッコいいって思っているんですけど、第三者が聴いたらどうか、ちょっとわかんないんで。一回ライヴでやってその音源を聴くと頭の中で整理されて、"あ、ここ、こういうふうにしたらいいな"とか客観的になれる。"お客さんの反応もいいし、これいけるな"って。で、細かいところを詰めていく。そうやって人の意見もちょっと聞いてみたいって曲もあるんですけれど、ウチはこれで出しますって曲もあるんですよね。

noah:私ライヴのときとレコーディングのときで歌い方がずいぶん違うんで、最初にレコーディングしてしまうと、かなり抑えめな感じしか出てこないんですけど、ライヴで何度もやることで、その曲に対してマックスなくらいの音量で歌うことに慣れるんですよ。そこからもう1回レコーディングすると、(声量や歌い方の)選べる幅がすごく広くなります。いつも歌っているライヴのように歌ったら(レコーディングでは)全然合わなかったりもするし、今回はいろんな発見がありましたね。

-自分たちのポリシー、美意識、方向性がしっかり定まっていてブレない、周りからの影響とかは関係なさそうに見えます。

noah:すごく定まっているほうのバンドではあると思います。それまでと違うことを結構やったつもりでも、そこまで離れてないってふうに言われてしまうときもあって。でも、やっぱり今回のアルバムの1曲目「dance in a dim....」なんかは、自分たちの中では、ずいぶん今までと違う曲という認識があります。きれいにまとまってなくて、いろんなところでいろんなことが、ハチャメチャに起こっていくようなイメージで。練り上げたようなものでもないっていうか......練り上げているんですけど、なんて説明するんですかね(笑)?

the k:いろんな要素が合体して。

noah:でも最初は、いろんなパーツがバラバラすぎて。

Sally:「dance in a dim....」に関しては、k(the k)さんが結構細かくフレーズまで全部指定してたじゃないですか。ギターとかに関しても。で、たぶんライヴやる前の時点では全然腑に落ちてなくて(笑)。いつもはリハをやるなかでもうちょっと馴染んでくるんですけれど、たしか全然馴染んでないのに無理矢理一回ライヴでやったんですよね。

the k:難解で最初はみんな理解しがたかったんじゃない(笑)? で、最終形になったときに、"おぉ~なるほどな"みたいな。実際にやってみたら馴染んできて、お客さんの反応聞いたら、"これアリじゃね?"って。

-kさんの頭の中に明確なイメージはあるんだけど、それを言葉に置き換えて伝えようとすると、なんか周りは腑に落ちていないというか。

the k:そうそうそうそう(笑)。でも、そこが楽しいっていうか。

-それがバンドでものを作っていく醍醐味ですよね。ほかの曲はどうだったんですか?

Sally:スタジオで普通にアイディア出し合いながら作っていった曲か、明確にどちらか(the kとnoah)にイメージがあって、それを具現化していくか、どっちかなんですよね。

-なるほど。今回アルバムのテーマとかコンセプトとか、こういうものにしようというものは?

noah:ないです。たぶん。

-自然と新曲が溜まっていったと。

Sally:で、ある程度溜まってきてそろそろ作りたいねって話をして、並べたときにこういう曲足りないよね、というのをあとから足して、揃えた感じです。

-特に今回のアルバムの制作時期に、前作と変わったところ、周りの変化でも、自分たち自身の変化でもいいですが、なんかありましたか?

noah:前回よりかなりいろんな意味で、やりやすさはありました。kさんもミックスが上手になったので。あと、今回は初めてに近いくらい、ほんとに自分ひとりでやった曲(「future song」)とかも入っているので、それをうまくひとつにまとめられたのが、僕は新鮮で面白かったです。kさんひとりでやってる曲(「by the window」)も入ってて。

-ほとんどひとりでやっている曲でも、バンドの曲としてちゃんと成立しうるって思いがあった?

noah:はい。

the k:もともとバンドでやってた曲なんですよ。で、そのアレンジでやろうかなって思ったんですけれど、何回聴いてもつまんなくて。アルバムのどの曲にもビートが乗ってるっていうのが嫌だったんです。いろんな方向性があってひとつのストーリーになっているのがいいなぁと思って。

noah:その曲もアルバム全体のひとつの物語の流れの一部分を作ったという感じなので、バンドの曲っていう意識がすごくあります。

-その"全体の流れ"は、曲がある程度揃ってきてから考えるわけですね。

noah:そうですね、今回はそうでした。

the k:1曲を作ったら、これとはまた違う感じの曲を被らないようにいっぱい作っていくんで、並べたらちょうどいいくらいの感じになると思います。

-例えば曲を作ってみて、これバンドには向かないなぁとか、そういうふうに判断することってあるんですか?

the k:あります、あります。

noah:例えば、歌モノすぎてつまんないなぁとか、1回だけライヴでやってボツになるとか。でも、なんかの拍子に別アレンジでやってみたら、あぁ意外といけたね、みたいなときもあります。

-歌モノすぎてつまんないってことは、必ずしもnoahさんのヴォーカルを中心として音楽を作っているわけではないという意識がある?

the k:最終的にはそうかもしれないですね。歌バンドだとは思っているんですが。今回はないんですけど、インストの曲とかもあったりするので、そこはそんなにこだわってはないです。

-例えば、これさえ守っていれば何をやってもバンドとして成り立つみたいな、そういうものって何かあります?

noah:結局カッコいいと思えるか思えないかしかないですね(笑)。

the k:まぁ、3人がいたらなんとなくこう――

Sally:明確な、これといったものはないですね。

-それぞれみなさん別のバンドやプロジェクトをやってますよね。でも101Aでしか求められないものがあるから、このバンドもやっているわけで。それはなんでしょう?

Sally:もちろん僕らにしかできないと思ってやってるわけですけど、それはあんまり言語化できないですね。

noah:前まではほかのバンドと比較して自信がなくなったりした時期もありましたけど、結局、ほかの人になれるわけでもないし、ほかの人も私にはなれないからいっかなって。この3人が集まって自分たちの好きなようにやっていれば、101Aらしくなるから。今までになかった音楽を作ってみたい、みたいな気持ちは結構あるんですけど。

the k:そうですね。新しい音楽とかをそんなに聴くほうじゃないんですけど、いろんな人からインスパイアされたり考え方に影響されたりはする。例えばJames Blakeのコンサートを観にいって、すっごく良かったんです。打ち込みとかも使ってないのに、エレクトロニック・バンドで、音もとても良くて、すごく感銘を受けて。この無音の感じがいいなとか、そういうのを音数少なくしてウチの曲に取り入れてみようかなー、とか。かなりベース音が入っているけれど、どうやって作っているのかなぁと思ってエフェクター探すとか(笑)。そういう曲を作りたいなぁと思ってやってたんですけど、結局そっちには全然いかなくて。最終的にこの中に入ってるんですけど、どの曲か忘れました(笑)。

noah:そっからきたのあるんだ!? 全然知らなかった(笑)。

Sally:こんな感じのを作りたいとか初めは言ってても、結局そうはならないよね。

the k:そういう新しいアイディアには常に敏感にはなっているんですけどね。「box」という曲は、MASSIVE ATTACKみたいな雰囲気で、そこにもっと低いベース入れたらカッコいいかなぁと思いながらやってみたんですけど、そういうものにはならなかった(笑)。

-それがバンドの個性というものですよね。そういう英国のちょっと鬱が入っているようなダークな音は、このバンドの特徴のひとつですね。

the k:そうですね。僕は基本的に好きです。

noah:僕も。全然なんにも考えてないけど、そう言われたらそうですねっていう感じですね。