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LIVE REPORT

Japanese

101A

Skream! マガジン 2019年08月号掲載

2019.07.01 @池袋 手刀

Writer 小野島 大 Photo by 巣山映空

個性の強い3組が出演した"大・七月祭り"。それぞれに興味深いパフォーマンスだったが、今回は101Aの演奏に絞ってお届けする。101Aはすでに長いキャリアを持つ3人組だが、不勉強にも筆者が彼らのライヴを観たのはこれが初めて。今までスルーしていたのが悔やまれるほど素晴らしいライヴだった。

BOØWYの『LAST GIGS』が流れる店内が暗転し、COLDCUTのクールな名曲「Mr. Nichols」が鳴らされて、メンバーが登場。向かって右からドラムのSally、真ん中がベースのthe k、左にヴォーカル&ギターのnoahが位置する。フロント・ウーマンが左端にいるという変わった立ち位置だ。

Sallyが変則的なビートを叩き出し、「時の岸辺」が始まる。2011年のアルバム『4』に収録されたインストゥルメンタルだが、まるで中期KILLING JOKEがポスト・ロックを演奏しているような、緊迫した音像に一気に引き込まれた。転換中にややだらけていた店内は、101Aのダークでゴシックな世界にたちまち染められる。個性のはっきりした、やりたいことが明確な音楽と感じた。メンバーの力量も相当なものだ。特にSallyの手数の多いプレイがバンド全体を加速している感がある。機材トラブルで当初the kのベースが聴こえないというアクシデントはあったが、気にならない。

間髪を入れず「orchid」、そしてメドレーでプレイされた「sea」は、noahの繊細で、それでいて強靱な声が、ダイナミックでハードな演奏の音圧にたったひとりで戦っているような印象を受ける。この劇的な対照が101Aの大きな魅力と感じた。短髪を金色に染めたnoahは、小柄な身体を激しく動かしながら、重厚なフレーズを繰り出していく。

the kから10月1日の渋谷WWWワンマン("the day of 101A[dance in a dim....]")の告知と、それに合わせニュー・アルバムを制作中であることが告げられ、noahが消え入りそうな声で"新曲っぽいのをやります"と話して、まだタイトルの付いていない新曲がプレイされる。音数を減らしたミディアム・チューンで、noahのよく伸びる声が美しい。間髪を入れず演奏されるのは「Jane Doe」。身元不明の女性の仮名を指す言葉をタイトルに冠したこの曲は、アルバム『one day』に収められた曲だが、BAUHAUSがトリップ・ホップをやっているような陰鬱でディープなミドル・チューンで、一転して荒々しくシャウトするnoahのヴォーカルが魅力的。このあたりは大きな会場で、照明に凝った演出で観たいと思わせる。
長いフィードバック音に導かれ、次の「grief coast」、そしてこの日のクライマックスとなる「sex slave」へとなだれ込む。リズム・マシーンのクールなビート、明滅する電子音のループ、男声のサンプリング・ヴォイス、そしてnoahが時折"sex slave"と叫ぶだけのインストゥルメンタル・メンバーだが、ここでギタリスト、noahが爆発。激しくしなやかに身体をのたうたせながら、ディストーション・ノイズを叩きつけていく。執拗に絡みつくリズム・マシーンとフィードバック・ギターの反復は5分以上も続き、オーディエンスの感覚を麻痺させる。

合計35分という演奏はあっという間だった。3マン・イベントの2番目の出演でありながら、ライヴハウスの狭い空間は完全に漆黒の闇に沈むような別世界と化していたのである。CDを聴いて抱いていた、どちらかといえばクールで線の細いイメージはライヴではほぼ払拭された。この日は演奏時間が短かったこともあり、比較的激しい曲が中心のセットだったようだが、101Aには長いキャリアがあり、様々なタイプの曲がある。これで世界観を十分に作り込める大きな会場での長時間のワンマンなら、さらに期待が持てるだろう。新作ともども、10月1日は見逃せないライヴとなりそうだ。

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