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INTERVIEW

Japanese

ROU

2019年06月号掲載

ROU

Interviewer:TAISHI IWAMI


固定観念を持たれてしまうソロ・アーティストの世界を、切り拓いていきたい


-この作品の歌詞や音から私が感じたのは、今の時代をどう強く生きていくかを問い掛け、引っ張っていく熱量です。

今は作品に関わってくれた人も含め、いろんなフィルターを通すことなく、自分たちがやりたいことをダイレクトに発信できる。でも、やれることの選択肢が多くて振れ幅は大きいから、その間で葛藤も生まれやすいと思うんです。時代に飲まれないようにとか、本当にやりたいことはなんなのかとか。僕自身もいろんな想いを経て今の音楽性に辿り着いたから、共感したことも抗ってきたことも素直に書こうと考えました。自分の中にある歪みがパワーになった、すごくロックなアルバムだと思います。

-聴いてとれる音も、ここまでの話も、限定してジャンルを指すものではないと思うのですが、なぜ"ロック"なんですか?

例えばPost Maloneって、トラックはメロウにフローしていくけど、リリックはものすごくパワーがあるじゃないですか。Billie Eilishなんて、"なんだあれは?"って初めは衝撃的でしたけど、超イケてるし世間にも認められてる。そういった音楽がどんどん前に出ていいし、出られる時代だと思うんです。言いたいことを言うのがロックで、それをヒップホップとかポップスが超えてきて、みたいな話のもうひとつ先。そこにあるパワーや熱を僕はロックだと言ってるんです。ブルースからの流れがあって、"こういうペンタとかこういうリフがあって終結させるのがロックだ"というのもあると思うんですけど、それも表現方法のひとつ。全部ひっくるめて今しかできないことを思いっきりやることなんですよね。

-だからサウンドの自由度が高い。例えば「フラッグ」は四つ打ちのキックがあってスネアは3拍目に入ってる。ロック・バンド出身だとスネアは2拍目と4拍目をベースに考えるから、王道ではないんですけど、そういう感覚はないですよね?

そうなんです。この曲のリズムに関しては、僕が作ったものがそのまま採用されたのかどうか、記憶が定かではないんですけど、リズムのパターンやBPMについて"考えられないようなことが出てくるからいいね"ってこの曲に限らず言われることがあるんです。でも、自分ではわかってない(笑)。

-だけど、めちゃくちゃではないんですよね。

僕はすごく感覚的に作っていくから自分の原型がどうだったとかあまり覚えてないし、変わったことをしてると言われてもピンとこない。でも数学的にというか、ちゃんと音楽として整頓されたものであることも大切だと思ってるんです。だから、理論に特化したアレンジャーの人と一緒に作りました。それも今回すごくやりたかったことのひとつ。ちゃんとバランスが取れてこそ、いつ聴いても新しくも古くもない、僕と仲間ならではの音楽になると思ったんで。

-「Hoodie」は、ROUさんの歌における感覚と理論的な構成が、絶妙なところでひしめき合っているように感じます。

「Hoodie」はフルで聴いてもらえるとすごく面白いと思います。僕も数学的なことに引っ張られてることもあるし、アレンジャーが僕の感覚のつじつまを合わせてくれたところもあるし、そこで独特のものが生まれたんじゃないかなと。

-「タイトル」はリフが生み出す腰の据わったグルーヴで引っ張る曲ですね。

リフものが好きなんですよね。実はもっと今回のEPにリフものを入れたかった。結局入れなかったんですけど(笑)。リフとは少しズレてきますが、ライヴで限られたコード間のなかでリハをせずにマイク・チェックだけして、"4コードとこれとこれとこれいきます"とか言って"せーの"で本番みたいなあの感じは、セッションに近い感じで、楽しいとか、緊張とか、そういうものが混じった面白い感覚があります。

-「This morning」では、後半からの重低音へのチャレンジや音の広がりが、すごく暑くて美しい。

最初はもっとキラキラしたシティ・ポップの走り的な感じだったんですけど、曲作り終盤にどんどん歪ませていったんです。一番バンドっぽくないサウンドの印象ですが、後半にかけてコーラス、歪みを増やしてパンチがある印象で終われるように意識しています。

-「セッション」はもろに縦ノリのロック。意外でした。

本当はもうちょっと違ったものになるイメージだったんですけど、そんな感じになっちゃいました。そういう意味では最も実験的な曲で、引き出しが増えたような気がします。またやるかはわからないですけど。

-では、この先やってみたいことは?

自分が真摯に向き合って作って歌えば、その時点でオリジナルだと思うんですが、言うは易し。今回は感覚的な部分を大切にしながら、理論的な部分でも基礎的なことがしっかりできて、そのオリジナルたるを獲得するのに必要なことを実感できたように思います。そのうえで、次はまたバンドかもしれないし、打ち込みかもしれないし、ギター1本でラップし出すかもしれない。とにかくやりたいことをまっすぐ突き詰めたいですね。

-すごく楽しみです。

ソロ・アーティストってひとりだし自由だし、なんでもできるじゃないですか。なのに固定観念みたいなものを持たれてる。僕の場合だと、俳優から出てきたこともあってか、単なる歌手なんじゃないのかとか。そこで、曲も作るしメンバーを集めてバンドもやるってことを、ひとりユニット名みたいなものを付けて示す感じもカッコいいと思うんですけど、もう先にソロのアーティスト名で名乗って活動してしまっていたし、今さら改名も大変なので、もうこのままでいくかみたいな感じです。

-ひとりだからなんでもできるにもかかわらず、固定観念を持たれやすいとおっしゃったことはすごくわかります。難しいですよね。イメージがひとりに向くわけですから。

そういうソロ・アーティストの世界を僕が切り拓いていきたいんです。ライヴも自信持ってやってるんで、この記事を読んでくれたみなさんは、まず1回足を運んでみてください。