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INTERVIEW

Japanese

postman

2019年04月号掲載

postman

Member:寺本 颯輝(Vo/Gt)

Interviewer:沖 さやこ

[ALEXANDROS]、BIGMAMAなどのアーティストを輩出してきた音楽レーベル"RX-RECORDS"より2018年4月に全国デビューを果たした、平均年齢20歳の名古屋発4ピース・バンド、postman。2枚目となるミニ・アルバム『Night bloomer』は、全国デビューを果たしたことで様々な人や土地、状況と出会ったこと、それによって見えてきた自分自身を投影させた、彩り豊かな作品に仕上がった。心の中にある思考がとめどなく溢れるような歌詞、その言葉を支えながら鮮やかに表現していく音色――生々しさとロマンが融合した新作について、ソングライターの寺本颯輝に訊く。

-小学生で前身バンドを結成しているとは、早熟だなと。

あははは。早熟......そうですね(笑)。

-おまけに少年野球チームの友人たちで結成されているんですよね。なぜ野球少年がバンドを?

もともと前衛3人(寺本、ギターの兼本恵太朗、ベースの岩崎圭汰)と前身バンドのドラムは、1年生のころから少年野球の練習のあとにお互いの家に遊びに行くくらい仲が良くて。俺は本気で野球選手になろうと思ってました。でも小5のときにBUMP OF CHICKENやRADWIMPSを聴いて、野球ひと筋だった自分がギターをやりたいと思うようになって、父親が押し入れにしまっていたギターで遊ぶようになったんです。メンバーが遊びに来たときにギターを見せびらかしたり、ライヴDVDを観て歌ったり踊ったりしていて――そのときにはもう漠然と自分は"ミュージシャンになりたい"と思っていて。それで俺がバンドを組もうと勝手に3人のパートを決めて(笑)。

-半ば強制的なバンド結成(笑)。

昔からよく4人で同じことして遊んでたんで、その流れのノリで"よし、やろう!"って感じでした。俺は小学生のころからオリジナル曲をこつこつと作っていて、中3でようやくそれが実を結んで、それをバンドでやり始めて。高1のときにもともといたドラムが抜けてしまって、いわたんばりん(Dr)を誘いました。いわたんばりんは1個上の先輩で、中学の学園祭とかでもドラムを叩いているのを見ていたので、"あの人を誘おう!"って感じだったんです。

-そんな流れでバンドを始めた兼本さんと岩崎さんが今もバンド・メンバーというのもなかなか稀有なことだなと。

俺の両親は音楽が大好きで、小さいころからライヴに連れて行ってくれたり、いっぱいCDがあったりするような家で、自分も保育園のころからカラオケでTHE YELLOW MONKEYの「バラ色の日々」を歌ってたり(笑)、おじさんがミュージシャンなので、もともと音楽一家みたいな感じなんですけど、岩崎はバンドを始めてからバンドの音楽を聴くようになったくらいなんです。いわたんばりんを誘ったのも、地元でドラムを叩ける人をいわたんばりん以外知らなかったからで。兼本と岩崎は偶然バンドの音楽が性に合っていて、唯一知っていたドラマーを誘ってこのメンバーで5年経って......そんな状況で集まった4人でバンドをやっているのは本当に奇跡的だなと思いますね。

-2014年8月にいわたんばりんさんが加入してpostmanを結成。バンド名から察するに、この時点ではもう"届ける"というコンセプトが決まっていたんですよね?

そうです。自発的に好きになったBUMP OF CHICKENやRADWIMPSが、手元に届くようなリアルな音楽という感覚があって。だから曲作りを始めた小学生のころから、歌詞を大事にしたい気持ちはずっと持っています。去年は初の全国流通盤(2018年リリースの1stミニ・アルバム『干天の慈雨』)をリリースしたことで、初めてライヴをしに行った土地がすごく多くて。そういう土地に僕らの音楽を聴いている人がいて、僕らの目の前で音に合わせて歌詞を口ずさんでくれている――それが人生で初めての経験で。届いていることを物理的にも感じられて嬉しかったですね。

-新作『Night bloomer』に関しても、歌詞カードの言葉数の多さからも"届けたい"という気持ちの強さが伝わってきます。今作はインディーズ・デビューをしてからの気持ちが色濃く反映されているのかなと思いました。

ストックしている曲はいくつかあったんです。でも2枚目を作ることが決まって、"もっとこういう曲を作りたいな"というイメージが明確に出てきて、どんどん新曲ができていって。「(A) throb」ができたとき、"夜を軸にしたアルバムにしたいな"と思ったんです。それで出てきたのが"Night bloomer"という言葉で。自分の作りたいイメージを表すうえでスッと腑に落ちた言葉だったんですよね。

-"Night bloomer"という言葉が出てきた背景とは?

夜というものにはどうしても暗いイメージがあると思うんです。でも自分には夜が性に合っているし、夜にひらめくことが多くて。それが"夜を越える"というイメージだったりもするんです。自分の夜がなかなか明けないから、それをコンセプトにしようかなと思っていたときに、いわたんばりんが"越えたくない夜もあるしね"と言っていて。

-いわたんばりんさん、なかなか詩人ですね。

その言葉に"なるほど!"と思ったんです。朝になってほしくない人もいるなと気づかされたし、夜の可能性は無限大だと感じられるようになった。ひとりで殻にこもる夜、人と接する夜、それぞれにまったく違う夜がある――そういうことを考えるのはとても人間的だし、必要なことだと思ったので、それを作品にできたことも嬉しいし、この意味をたくさんの人に理解してもらえたらと思いますね。「夜明けを待たずに」は2年くらい前から歌詞を書いていたんですけど、なかなかうまくいかなくて。でもこのアルバムを作っている最中に完成させることができたんです。

-『Night bloomer』の歌詞は、想いが溢れて止まらないという印象を受けました。特に「夜明けを待たずに」は、寺本さんが公式コメントで書いてらっしゃった"「夜明けを待たずに走り出す」/これが僕にとっての夜を越える方法"という思想が軸になっています。

最近"脳より心"という感覚がすごく強くて、それでできたのが「夜明けを待たずに」だと思います。このアルバムを作っている最中に"夜明けを待たずに"というワードが出てきて、それによって自分にとっての"夜を越える"はこういうことなんだな、と気づかされて自分の人生観が明確になりました。だから前のアルバムよりもっと視野が広くなったし、そのぶんもっと鋭くなったなとも思います。