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INTERVIEW

Japanese

Use With Caution

2019年03月号掲載

Use With Caution

Member:ヨシスエ コージ(Vo/Gt)

Interviewer:渋江 典子

-『KING』を作る際は最初にテーマを掲げていたのでしょうか?

はい。湧き出てくるもので表現するのはやめようと思って。聞こえはいいけど、それは何もブラッシュアップできていないってことじゃないですか。あと、それができるのって本当に限られた人だと思うんですよ。逆にそういう人たちはブラッシュアップしたものを求められないし、僕はそっち側の人を目指しているわけではなくて、考え抜いた先のものを届けたいから。今回"KING"って偉そうなタイトルを付けたのも、"王道"っていうテーマを込めています。あと、ゆずこしょーが始動したころに発表した、僕が衝動人間だったときに書き下ろした「K」という楽曲があって。英語では発音しない"K"があって、アナグラムとか小説では存在しないものを"K"って呼ぶことが多いんですよ。"存在証明"がテーマだったからその曲のタイトルに"K"って付けたんですけど、その曲は今でも大事な曲で。今回の"KING"は、"王道"ってテーマと一緒に、「K」という物語はまだ続いているよって思いも込めて、その進行形(K+ING)でもあるんです。

-たくさんの意味が込められているんですね。ここまでお話を聞いてきて、きちんと考え抜いて意味を持たせているところが素晴らしいなと思います。

僕としては当然なことですね。僕は考えたり分析したりすることが好きなんですよ。なんで向き合ってくれるんだろう、とか考えることも多いです。求めてくれているものに応えたいので。そうやって作ったものに対する反応が大きければ大きいほど、自信にも繋がるんですよね。

-『KING』のリード曲はどの曲なんでしょうか?

「AI」という曲です。これからどんどんAIが進化していく時代じゃないですか。最近ついにマスタリングをするAIが出てきたんですよ。しかも普通なら何十万ってお金がかかるような作業なのに、1曲500円でできちゃう。AIはこれから、どんどんこういう衝撃を世の中に与えてくると思うんですよね。逆に人間は、決まった時間に起きて、決まった時間働いて......ってAIよりも機械的な生活を送っているんじゃないかなと思うようになって。システムが人間に、人間がシステムになっていく感じを表現したくて、皮肉たっぷりに書き上げた曲です。タイトルの"AI"は"愛"とも読めるから、機械と愛情っていう真逆のテーマを込めました。

-ヨシスエさんの皮肉たっぷりの歌詞は期待ができそうですね。

もうひどいっすよ(笑)。ダブル・リードの「モールス」とは対になってる曲なんです。「モールス」が光なら、「AI」は闇って感じ。作品の中でバランスを取りたかったから、僕にとって「AI」は絶対に必要な曲でした。実は当初、バンド内で一番意見が分かれたんですよ。"そもそも必要なのか?"みたいなレベルで。でもこの曲のメッセージをきちんと伝えたいって思いが強かったから、全員が納得できるまで話して決めて。歌詞も書いて削ってを繰り返して、しっかり言葉を吟味しながら書きました。あと、結構ロックなサウンドなのでライヴでも盛り上がると思います。

-光を表現した「モールス」は、すでにミュージック・ビデオが公開されています。これぞ青春、って映像が眩しかったです。

あのMVは、場所やキャストも全部僕が準備しました。脚本も僕が書いて。いや~、楽しかったですね! この楽曲は10代、というか自分の中にある感情の名前もまだわからないときの心の中を描きました。モールス信号って、人間が作り上げた電子メッセージの中で一番初歩的なものなんですよ。10代の不器用な感情を表現したいって思ったときに、携帯じゃダメだなって。あのころはモールス信号程度の伝え方しかできなかったから。でもちゃんと伝えたい想いはあるので、"それでも届け"って願いを込めてます。

-思春期って未完成な状態ですもんね。

そういう未完成な感じを表現したかったから、携帯みたいに完成していちゃダメだったんですよね。

-これはもともとあった楽曲だそうですね。

そうです。でもMVを作るにあたって、テーマに合わせて手直ししました。リアレンジというよりは再構築に近いくらい。この曲を作ったころが衝動的な書き方から変わった時期でもあったので、今改めて向き合ったことで曲が完成したと思います。

-"言い訳並べて、意味を歪めてさ"って歌詞を見たとき、学生時代ならではのとげとげしさが蘇ってきました。

学生時代って誰でもとがってるじゃないですか。全員が通る道だからこそ、その感情を歌いたくて。今20代でも30代でも、そのころの感情に対して何かしら響くことはあると思うんです。

-特にあのころの思い出は歳を重ねても色あせないんだろうなと思います。

僕は忘れたいですけどね(笑)。今の若い子たちにはいい青春を送ってほしいです。

-バラードの「Last dance」はいろんなシーンに置き換えられますよね。

はっきり言っちゃうと、これはセフレの曲なんです。浅野いにおさんの"うみべの女の子"っていうグズグズの青春を描いた作品があるんですけど、そのイメージで作りました。「モールス」が持ってる爽やかさとは真逆の、不完全燃焼をテーマにしています。もともと僕はバラードが得意で、このアルバムに入れるバラードも選択肢が結構あったんですけど、メッセージ性を考えたときに、今求められているのは生々しさかなと思ったんですよね。じゃあ、僕が作れる最大限の生々しさを描こうと。サウンドもグズグズしている印象を持たせたりして。

-たしかに、サビもあまり開けないですし。

開けないように、わざとたんまりさせました。でも"日常は続いていく"っていうことも伝えたかったので、進行自体は淡々としてます。

-歌詞が生々しすぎないから、共感の幅は広がるなと思います。

メッセージに重きを置いたとしても、やっぱりアートであるべきだと思うので、聴く人にとっての正解として鳴ってくれるように意識しましたね。

-「いないいないばぁっ!」は、曲名を見て再生してみたら、想像と違うサウンドだったので驚きました。

僕たちはもともとこういう音を鳴らしてるバンドなんです。BPM180くらいのゴリゴリのロック・バンドだったんですよ。でもこのアルバムは130くらいに抑えてます。このアルバムに今までやってきたことを昇華するときに、今までのキャラクターをBPM130くらいの曲に落とし込みたいなと思って。

-どこからこのメッセージが浮かんだのでしょうか?

これは唯一、あとから歌詞をつけていった曲なんです。メンバーが"こういうのも面白いんじゃない?"って曲を持ってきてくれて、いざ歌詞を書こうとしたときにパッとこの世界観が思い浮かんだって感じです。

-考え込んで、というよりは衝動的?

そうですね。どちらかというとアート寄りな感じ。2秒くらいでできました(笑)。"こう聞こえたから仕方ない"くらいの勢いで。まぁこの曲は下ネタしか言ってないんで、メッセージというよりは曲として楽しんでもらいたいですね。

-「のっぽ」はどんなふうにできた楽曲なんですか?

これは今のメンバーが揃ってくれたから生まれた曲です。僕は、サウンドと歌詞と同じくらいタイトルが大事だと思っていて。いつも先にタイトルを決めて、そのタイトルがキーになって世界観が広がることも多いんですよ。でも「のっぽ」は全部書き終えたあとに、"背伸びすんなよ"って思いを込めて"のっぽ"って名付けました。今まではタイトルが歌詞に登場するように作ってたんですけど、今回は珍しく出てこないんです。

-書き始めたときに、内容もざっくり決まっていたんですか?

うーん。まずAメロが浮かんで、そこから"何を伝えたいのか"を考えながら伝言ゲームみたいに言葉を繋げていくうちにサビまでできあがって。そしたら、"あ、疲れてんだ"って気がついたんですよね(笑)。僕は、才能とか努力って鉛筆の芯みたいなものだと思ってるんです。よりきれいなものを生み出すためには、その鉛筆を削らないといけなくて、削ったものは戻ってこない。削れば削るほど脆くなるし、尖れば尖るほど折れやすくなる。だから何か生み出す人たちって疲れている人が多いけど、"音を一番楽しむべき僕らが疲れてちゃダメじゃん"って思ったんです。頑張ってる人に対して"頑張りすぎなくていいんだよ"ってメッセージはなかなか言葉として伝えるのは難しいけど、歌だからこそ届けられると思ったのでそういう曲を書きました。

-社会に出て働く人もこの曲に救われるかもしれませんね。

日本人ってほんとに疲れすぎだと思いません? 同い年の友達に会っても、すごい老けてたりして。そういう人たちに届いたら嬉しいですね。......とかいろいろと偉そうに言いながらも、"僕もさ"って終わるんですけどね。

-対面で伝えるというよりは、隣で話を聞いてくれている感じがします。

そうですね。できる限り優しさを込めました。前作(『November call』)では、歌詞の中で話し言葉を使えなかったんですよ。どうしても無機質な表現になりがちというか。回りくどい言葉とか"この言葉ってどういう意味があるんだろう?"って考えてもらえるような表現が好きだったんです。でも今はもっとダイレクトに伝わりやすくブラッシュアップした言葉が求められている時代だってことに気づいたときに、今の感じに落ち着きました。2年前には絶対に書けなかったと思います。

-今作は逆に無機質な言葉の方が少ないですよね。

それは意識してます。今までは絵みたいに、"これを見ろ!"って感じだったんですけど、いつからか聴いてくれる人と感情のラリーがしたいなと思うようになりました。

-改めて『KING』はどんな作品になりましたか?

今の時代として求められている音楽に応えていきたくて、今の自分たちにできる最善を尽くしたつもりです。僕たち自身、バンドとしての成長を実感できているので、違う面というよりは、アップデートされた次のステップを感じてもらえたらいいなと思います。

-また、リリース当日の3月29日には下北沢LIVEHOLICにて今作のリリース・パーティー[Use With Caution presents"QUEEN"Album「KING」Release Party Supported by Skream!]を開催します。タイトルに"QUEEN"が含まれていますが、作品名と関連があるのでしょうか?

『KING』にまつわるイベントを3つ開催したいなと考えていて。去年の12月5日に開催した"JACK"ってイベントで『KING』のリリースを発表したんですけど、その第2弾が"QUEEN"です。今後"KING"も用意できたらなと思ってます。1曲ずつに込められた情報量がかなり多い、濃い作品になったからこそ、ライヴで観てほしいですね。この日に初お披露目になる曲もあると思いますし。

-では最後に、Use With Cautionとしてのヴィジョンを教えてください。

まだ言えないことがたくさんあるんですけど......わくわくすることが好きなので、"え、それやるの!?"ってみなさんを驚かせられるような活動をしていきたいです。びっくり箱みたいなバンドになりたい。やりたいことが幅広すぎて、バンドというよりもクリエイティヴ・チームって名乗った方がしっくりくるのかもしれないですね。内緒ごとが多いバンドですけど、目を離さないでほしいです!