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INTERVIEW

Japanese

秋山黄色

2019年02月号掲載

秋山黄色

Interviewer:高橋 美穂

僕、人見知りもすごくて暗いんですけど、録音中は爆笑していたりします(笑)


-でも、それがクセになる楽曲に昇華されているわけですから。だからこそ「やさぐれカイドー」も生まれたと思いますし。曲もさることながら、リズム隊が強烈ですよね。

ですよね。めっちゃピンポイントなんですけど、"どんなスネアの音が好きか"って話をしたことがあって、僕はそこで松下 敦(ZAZEN BOYS)さんの名前を出して。無機質なことをやっていても色も熱もあるような、独特なドラミングをされる方ですよね。

-その松下さんと、ベースのなかむらしょーこ(SMOKY & THE SUGAR GLIDER)さんと渡り合うのは、かなり緊張したんじゃないですか?

でも、レコーディングに来ることを知らなかったんです。行ったらいたので、言葉を失いましたね。松下さんから"おはようございます"って言われて、"おはようございますじゃないですけど"、みたいな(笑)。

-そのなかでこれだけの歌とギターを録るとは、精神力の強さがうかがえます。

最初は緊張していたんですけど、ふたりが音を出しているのを見て、楽しくなって。レコーディングって、家でやっていることの延長線上なので、そのレベルがいきなり上がって楽しかったんですよね。

-そもそも「やさぐれカイドー」ができたときは、手応えはあったんですか?

全然なかったですね。これ、友達とやるために作ったんです。シンプルって言われますけど、友達がこれしかできなかったからで(笑)。レコーディングでは、松下さんやしょーこさんに、"本当はこうしたかった"って伝えて、変えてもらったんですけど。

-あと、この曲に限らず、今作を聴いていて、いろんな音楽が好きな方なのかなって思ったんですが。

実はそんなにいろいろ聴いてはいないんです。ライヴもそんなに行かない方でしたし。引き出しが多いとか言っていただけますけど、それは試行回数が比べものにならないくらい多いからだと思います。DTMは無限にやり直しができるから、何千回もループしていいリフを作るので、ゼロからイチを作ることに関して、人と比較できないくらい試している自信はあります。そこがかなり楽しいところでもあるんですよね。僕、人見知りもすごくて暗いんですけど、録音中は爆笑していたりします(笑)。あと、最初は、友達に聴かせるために作っていたんですけど、いきなりいい曲を聴かせることも、ギャグとして面白いなって思うようになって。人に聴いてもらうことを意識するようになってから、ますます笑うようになりましたね。"これは売れるぞ!"、"これはまだ俺しかやってない"って。

-なるほどね。「猿上がりシティーポップ」は、すこぶるキャッチーでライヴ感があると思ったのですが、どんな成り立ちでできあがったんですか?

これは、すこぶるキャッチーでライヴ感がある曲を作ろうと思いました(笑)。

-私、してやられていますね(笑)。

(笑)ライヴ感は、そんなにライヴを観に行っていないので想像でしたけどね。僕、想像力が豊かなんだと思います。これ、僕はこうしたいって思ったことが一番伝わっている曲で、新しくはないんです。よくある曲だけど、真似できないんじゃないかな。

-たしかに、よくある要素がこれだけ盛り込まれている曲はないと思う。

邦楽の欲張りセットなんですよね。でも、キメは聴いたことがあるものだとダメだと思って。みんなと同じことを、みんなが真似できない角度でやるっていう。

-そして「ドロシー」は、いわゆるいい曲。

ありがとうございます。この曲も他の曲も、ほとんど即興で作っているんですけど、「ドロシー」はツイキャスで弾き語りをしていてできた曲なんです。

-最も印象的だったのは、最後の「とうこうのはて」でした。

これを俺が作る意味、今出す意味ってあると思って。誤解を恐れず言うと、僕はこういう人なんです。"借金まみれ"とか。「やさぐれカイドー」はセンスを感じる曲と言われていますけど、"こういうのもありまっせ"って。「やさぐれカイドー」みたいな曲だけだと、聴けない層が出てきてしまうんですよね。僕はいろんな人に聴いてほしいんで、こういう、パンクで、3コードで、高校生もできるような曲を作ったっていう。アルバムの最後に入れたのは、本当に狂っている人が狂ったパフォーマンスをすると引くので、"僕は普通の人だよ"というアピールをしたかったからなんですよね。

-音も含めて人間臭いですよね。

"俺"が見えるといいなって。"登校"ってみんなしなきゃいけないけど、みんな嫌がっているし。学校に行って決まったことをしないとこうなってしまうからって勉強したりすると思うんですけど、不登校の人も出ちゃったり。でも、僕は学校に行ってこんなことになっているし。いじめも経験していないですけど、引きこもりで借金まみれだし。なので、僕は"音と楽だけ盗み出した"って書いていますけど、学ぶんじゃなく、好きなことだけ盗むっていうスタンスで。登校の段階で悲観的になっていることはめちゃくちゃ損だと思うんです。学校って大したことないのに、9年間は行かなきゃダメですよね。学校に殺されるのはくだらないけれど、精神を病む施設でもあって。教師もそういうことを経験しているはずなのに、同じことが繰り返されている。登校を嫌な気持ちにさせない社会であってほしいというか。学校が嫌で当然っていうのもおかしいですよね。だから、マジになんなよ、って思います。

-秋山さんは"Hello my shoes"というタイトルの如く、これから一歩を踏み出すわけで。

そうですね。ここには5方向の曲が入っていて......本当は14くらい欲しいんですけど、"こういう方向性の曲が進化していくので、好きなものを聴いてください、僕はこれを履いていくので"って思いがあって。あと、前履いてた靴が汚かったので、買ってもらったっていう目線もあります(笑)。