Japanese
Who the Bitch
2018年04月号掲載
Member:ehi(Vo/Gt) Nao★(Vo/Ba)
Interviewer:山口 智男
-お話を聞きながら思ったんですけど、そういったいろいろなものを背景に持っているにもかかわらず、今回の7曲からはとても爽やかなものが感じられますよね。爽やかというか、バンド名に不釣り合いないくらい(笑)、清々しいものが。
ehi:そう言ってもらえると、嬉しいかも。
-悲しさみたいなものも、もちろんここにはあると思うんですけど、それが前面に出てこないというか――
ehi:そうです。すごい嬉しい。そこは卒業できた感があるんですよ。そこに固執してきた曲ってあったんです。例えば、代表曲として浸透していて、YouTubeにもアップしている「赤いレモンティー」(2011年リリースの1stフル・アルバム『Toys』収録曲)。今でもライヴではやりますけど、その曲は命のこととか、死のこととかを歌っていて、身内を亡くした悲しさをひきずっているっていうか、自分の書く歌詞がそこだけに向いちゃって、テーマがもうそれしかないみたいな重い時期がしばらくあって。でも、復活して、今回のミニ・アルバムに関しては、そこも背景にはあるけど、本当に清々しいというか、そこはパーンと抜けきった感じがあるんですよ。背負ってはいるんだけど、前を見ているって感じの作品ではあるんで、それがちゃんと伝わったんだと思います。
-そう割り切れたのは時間が解決したんですか。それともehiさんの中で気持ちを入れ替えたからなんですか?
ehi:プライドを捨てたからかもしれない。1曲目の「始まりの証」の歌詞にも書いているけど、いい意味で。
Nao★:(重い雰囲気が)徐々に抜けていっている感じはありましたよ。今回、作っている曲を聴かせてもらったとき、空が浮かんだり、海が浮かんだり、スコーンと抜ける景色が見える感じが多かったんです。
ehi:いろいろ捨てたかも(笑)。かっこつけることとか、もじもじしてた自分とか。亡くなった身内はミュージシャンだったんですけど、夢半ばで亡くなったところがあるから、それを背負ってやらなきゃって勝手に感じてたんですよ。そんなんもなくなった感じ? 今いる自分が前に進むために活動していきたいと思っているし、いろいろなものが削ぎ落とされていっている感じがしますね。逆に、今ここにいる私の等身大で歌いたい、伝えたいことが出せたんですよ。それは活動休止がきっかけだったかもしれない。プラスになっているのかもしれないです。1回ステージを離れることで、ふたりともステージに立つことの素晴らしさとか、歌えることの尊さとかがわかったし。だから、そこの1回1回がどれだけ神聖な場所で、時間でってことが活動休止したことで、改めて感じられた。そういうのもあるかもしれないですね。全部脱ぎ捨てて、ピュアな気持ちでステージに立てる。ピュアな気持ちで作れる。もちろん感謝もしながらですけど、スタートを切るのは、いつだっていいやんって思ってるし。自分に対する応援歌でもあるけど、年齢関係なしにいつだってみんなスタート切れるやんって。改めて自分にも言い聞かせたいってところもあるけど、そういうメッセージも含めて作っているところがあるから。今までのWho the Bitchがやっていたこととは、真逆のことをやろうとしているのかもしれないです。
-本当に、新しい始まりって気持ちなんですね。
ehi:常に始まりです(笑)。
-普段J-POPを聴いているリスナーにも間違いなく届く、こういう伸びやかな歌は、どんなバックグラウンドから生まれるものなんですか?
ehi:私、もとから歌モノ好きなんですよね、女性の。ピンでヴォーカリストやってきたし、ソロでもやってきたし、もともとバンド畑じゃないんです。影響を受けているという意味では、Björkとか、THE CRANBERRIESのDolores O'Riordan(Vo)とか、Carole Kingとか、浅川マキとか。アイドルも好きですしね。実は乃木坂46とHKT48に曲も書いているんですよ。Nao★ちゃんのバックグラウンドはまた全然違うと思うんですけど。
Nao★:私は逆にバンドで育ってきたんです。主にミクスチャーの時代のバンドを聴いてました。でも、歌モノも聴きますね。一番好きなのはBEASTIE BOYSですけど(笑)、切ない感じの歌が好きで、だからWEEZERも好きだし、ハモったりするバンドも好きなので、ehiちゃんも私もお互いに歌えるからハモリを考えるのも楽だし。昔はアホみたいって言ってましたけど、ehiちゃんは昔からちょっとせつないメロディを作る人だったから、そのメロディはずっと好きで、その感じは変わっていないと思います。
ehi:メロディ癖だね。
Nao★:それは全然変わってない。昔からその要素はあって、そのうえでアホみたいなことをやっていたところが変わっただけで。
-そういうメロディの良さだけでも勝負できると思うんですけど、それでもWho the Bitchには、今回の作品のようなラウドなサウンドが欠かせない?
ehi:そこはやっぱりライヴ・バンドですからね。ロックも好きですしね、言うても。ファズの音も、歪んだギターの音も好きだし、グランジ/オルタナが出だした時代に影響を受けているから、曲を作ったときにそのサウンドが出るっていうのはありますね。あとはサポートのMIZUEちゃんがわりとドスンと野太いドラムを叩いてくれるから、スタジオでそれを感じて、そういう曲を作ってみたというのもあるし。男前にいきたいんです(笑)。
-MIZUEさんのドラムがどしっとしているぶん、Nao★さんのベースもリズム・セクションではあるんだけど、メロディ楽器であることも意識していると思わせるフレーズが結構ありますね。
Nao★:今回は、プロデューサーとして入ってくれた小倉信二さんのアドバイスが結構大きかったんですよ。今までの作品とはちょっと変えて、もっと広がりがある感じにしようってことで、これまではルートばかり弾く感じだったんですけど、メロディやオブリ(オブリガート)を入れることを意識してみました。
-ギターは、また歪みが結構エグい感じで。
ehi:本当に歪んでいるのがやりたかったんです。私、MY BLOODY VALENTINEも好きで、小倉さんとは昔ユニットを組んでいたから、そういうことも含めわかってくれているだろうし、今回、プロデュースをお願いしたからこうなるだろうなって、そこはある程度予想していたんですけど、やっぱりアイディアとして出てきたのはファズだったっていう(笑)。私の師匠ですね。プロデュースをお願いするのは、『ミラクルファイト de GO! GO! GO!』(2009年リリースの2ndミニ・アルバム)以来、2度目なんですけど、アングラ芝居の劇中歌を作ったり、いろいろなことをやってきていたりして、いろいろな世界を見てきているから、引き出しが半端ないんですよ。
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