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INTERVIEW

Japanese

テンテンコ

2017年01月号掲載

テンテンコ

Interviewer:秦 理絵

-どういうライヴをよく観に行ってたんですか?

クラブ系の音楽をやっているアーティストを観に行くようになりました。大阪でYPYっていうひとりユニットをやってる、日野浩志郎さんっていう人が好きなんですよ。ダンス・ミュージックなんですけど、音源がカセットテープなんです。その人がやってるカセットテープのレーベルの音源を掘ったり、幡ヶ谷にあるForestlimitによく遊びに行ったりしてますね。CARREとかDREAMPV$HERがむっちゃ好きで、私もその影響で変わったところもあって。ダンス寄りというか、さらにビートっぽくなったんです。

-ひとつ疑問に思ったのは、音源を掘って機材を揃えるタイプだから、自分で作曲をするのかと思いきや、『工業製品』では提供曲を歌う形ですよね?

クレジットを見るとそうなんですけど、「星の電車」(Track.4)とかのメロディは、実はほとんど私が書いているんです。「流氷のこども」(Track.7)も一緒に作ってますし、「くるま」(Track.1)も、もともとメロディがある曲のアレンジを違う人にやってもらった感じですね。

-じゃあ、スタンスとしては曲作りにも関わってる部分があるんですか?

そうですね。私が自分で作る音楽はノイズ・テクノとかになるんですけど、それはひとりでどんどん突き詰めていけるんですよ。でも一方で、歌を歌いたいっていう気持ちもあるんです。歌謡曲とかポップなものも好きだから。どっちも大事なものだし、選べない。で、その歌う方に関しては、正直ひとりでやるには大変だなって思ってて。私が一緒にやりたいなと思う人とやる方が広がるんじゃないかと思ったんです。

-今回、関わってくださった方はテンテンコさんが一緒にやりたいと思った人なわけですね? 「星の電車」のLOGIC SYSTEM松武秀樹さんとか錚々たるメンツですけども。

そうですね。それがTOY'S FACTORYに入った理由なのかなと思ってます。やっぱり自分だと頼みづらいというか(笑)。そういうところも繋いでもらえるんです。今回はやり切った方がいいと思ったんですよね。最初から(この人は)無理だろうとは思わないで、やりたいことをなんでも言ってみて、そこから判断していったんです。

-じゃあ、『工業製品』を作るうえでの出発点は、まずテンテンコさんが一緒にやりたいと思う人に声を掛けて、そのうえでポップな作品を目指すということ?

そうですね。作品全体としては曲ごとに作ってる人が違うのでバラバラなんですけど。むしろ、それがやりたかったことなんです。私、THE BEATLESのホワイト・アルバム(1968年リリースの10thアルバム『The Beatles』)がすごく好きで。バラバラだけど、聴いててすごく面白い。だから、そういうのをやりたいなと思ったんです。まだ私はみんなにそんなに知られてるわけでもないから、いまはひとつに決めたくなかったというか。いろんなものが好きだし、いろんな面があるっていうのをわかってほしくて、それで、あえてわかりづらくしたんです。

-とはいえ、作品全体にはちゃんと統一したムードがあるんですよね。

そこはやっぱり、一緒にやってくれた方がどこかしら繋がってたり、私が好きだっていうのが一貫してるからですよね。そこに統一感があるんだと思います。

-実際の制作はスムーズに進んだんですか? それとも大変でしたか?

大変でした。曲ごとに違う人と作ってるので。しかも違う世界観のものが同時に進んでいくので、頭の切り替えが結構大変だったんです。「星の電車」とか「流氷のこども」は、わりと自分の内面っぽい曲なんですけど、私はそういうのが苦手なんです。恥ずかしいから、あんまり自分の思ってることを歌いたくないんですよ。そういう歌詞を書く作業はキツかったんですけど、(七尾)旅人さんがやろうって言ってくれて。それと同時に、「次郎」(Track.3)とか「くるま」みたいな、自分がいる世界とは違う世界を書いた曲もあるんですね。それはすごく好きなんですけど、ふたつを同時にやってたのが――

-混乱しますよね。内面の曲で言うと、「星の電車」は、宮沢賢治の"銀河鉄道の夜"みたいな世界観だったり......。

あ、そうですね。"銀河鉄道の夜"は好きなんですよ。

-「流氷のこども」は氷の上にいる自分を"見つけ出してね"って歌ってる曲で、どこか空想の世界のようにも聴こえました。

だから結局、内面の歌も現実っぽくないようになってるんです。そういうところにちょっとだけ自分を投影してみたっていう感じですね。

-七尾旅人さんが作曲を手掛けた「流氷のこども」は幻想的なサウンドが素敵でした。

これは編曲のエズミ・モリさんっていう方が、私と旅人さんが最初にふたりで作った世界観を的確に汲み取ってくれたんです。最初はアコギで作ってたんですけど、私はやっぱり電子音を入れたいなと思ったので、エズミ・モリさんに協力してもらって。寒いけど疾走感がある感じ、風が刺さってくるイメージで作ってもらったんです。