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INTERVIEW

Overseas

THE HEAVY

2016年04月号掲載

THE HEAVY

Member:Kelvin Swaby(Vo)

Interviewer:山元 翔一

前作『The Glorious Dead』収録の「Same Ol'」がペプシCMソングに起用され、お茶の間でもその認知度をグッと高めた、英国バース出身の4人組ロック・バンド、THE HEAVY。本稿のメイン・トピックとなる『Hurt & The Merciless』は、彼らが完成させた4年ぶり4作目となるアルバムだ。ブルースやR&Bの香りを纏ったヴィンテージ・サウンドと、ソウルフルなヴォーカルを軸としたモダンなロックンロール、という音楽性はそのままにより深みのあるサウンドを聴かせる今作。2016年版にアップデートされた独自のサウンドとその真髄たるバンド精神に迫るべく、Kelvin Swaby(Vo)にインタビューを敢行した。

-今作『Hurt & The Merciless』は日本でも大ヒットした3rdアルバム『The Glorious Dead』から約4年ぶりの新作となりますが、完成した手応えはいかがですか?

まるで子供が生まれたみたいな感じだよ。バースで曲作りやレコーディングをしていたときは、妊娠でもしているような気分だったよ。不便もあったし、赤ん坊がお腹の中で成長するにつれ痛みも伴ったけど、それを経て生まれてきた子供はすごく美しかった。ホント、アルバムを作るのは女性が妊娠して子供を産むのと似ているよ。ホルモンバランスが崩れたりしてさ(笑)。

-となれば産みの喜びも大きかったんでしょうね。この4年の間に、バンドを取り巻く状況や音楽シーンは大きく変わったように感じるのですが、当時はあなたたちと同様に、ALABAMA SHAKESやVINTAGE TROUBLEといったヴィンテージ・サウンドをモダンな感覚でプレイするアーティストが注目を集めましたよね。前作リリース時のことを改めて振り返ってどのように感じますか?

あまりシーンのことは気にかけていないんだ。当時は、とにかく自分たちがどんな音楽を作りたいのかを明確にして、それを作ることがすべてだった。自分自身がどんな曲を書きたいのか、それが俺たちにとっては大切なんだよ。4年経ってはいるけれど、それは変わらない。自分たちがどの方向性に進みたいのかを明確にしつつ、制作に取り組んだよ。今作では自分たちの思い描く音楽を形にすることが確実にできたと思うね。

-前作をリリースしたときの状況やリスナーの反応は覚えていますか?

『The Glorious Dead』がリリースされたときは、大きなコーラスと、みんなでシンガロングできる部分にみんな食いついていたと思う。俺たちの作品は、リリースするごとにパーソナリティが濃くなっていってるんだけど、それと共に反応も大きくなっているんだ。『The House That Dirt Built』(2009年リリースの2ndアルバム)には「How You Like Me Now?」のような曲があったし、『The Glorious Dead』には「What Makes A Good Man?」や「Same Ol'」のようなトラックが収録されているけど、新作にはそれ以上のモンスターがいる。リスナーが今回それをどう受け入れるか、どういう反応を示すかが楽しみだよ。

-では当時、どのようなアーティストや音楽が評価されていたかなどについてはいかがですか?

正直、そういうのはまったく気にしないんだよね。まるで、自分たちだけ泡の中にいるような感じ。俺たちは、作りたいときに作りたいものを作るだけなんだ。俺たち4人が好んで聴く音楽は、違いながらも似ているし、ひとりひとりがそれぞれのエナジーを音楽に送り込む。それを反映させたものを作るだけさ。俺たちには自分自身のスタイルがあるから、音楽の流行は追わない。だから、音楽シーンの変化に関しては、俺たちはよくわからないんだよね。そんな中で俺たちの音楽が取り上げられるのは、様々なジャンルが混ざっているからだと思う。そのとき話題になっているであろう要素も入ってはいるんだけど、それだけが前面にでている音楽ではない。あえて言えばそんな感じかな。

-もう少し踏み込んでお聞きしたいのですが、先ほども名前を挙げたALABAMA SHAKESは、昨年リリースした2ndアルバム『Sound & Color』でグラミー賞まで受賞しましたよね。個人的には、あなたたちの新作『Hurt & The Merciless』を聴いて、彼らの作品と同じように、伝統的な黒人音楽の精神やエッセンスを継承し、現代的に昇華している非常にパワフルな作品だという印象を受けました。

俺たちは70~80年代の世代だし、もちろんアメリカの音楽や映画、文化には影響を受けている。俺の家では親父がそういった音楽をかけていたしね。俺は50年代から80年代初期がアメリカの音楽文化の黄金期だと思っているんだ。映画もアートも、すべてが素晴らしかった。俺たちもその時期に影響されているし、今でもその時期の音楽を聴いたり映画を観たりする。そこはALABAMA SHAKESと似ている部分かもしれないね。彼らはアメリカ南部の出身だけど、俺たちの音楽にもアメリカ南部をメッカとする音楽の影響が見られる。例えば『The Glorious Dead』のゴスペル・ヴォーカルもそうだし、ジョージアには本当に素晴らしい音楽シーンがあるんだ。影響を受けずにはいられないほど美しくてね。俺たちの音楽の核はR&Bだから、決してゴスペルやブルースを作ろうとしているわけではないけど、その影響を自分たちの音楽にブレンドしているんだよ。

-THE HEAVYの音楽の核は、R&Bなんですね。

そうだな。60~70年代のリズム&ブルースから俺たちのバンドは始まったから。そこに、ロックやヒップホップといった他の要素を加えていったんだ。俺たちの音楽にルールは存在しないからね。