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INTERVIEW

Overseas

THE HEAVY

2016年04月号掲載

THE HEAVY

Member:Kelvin Swaby(Vo)

Interviewer:山元 翔一

-Kelvinはデビュー当時にも、"ブルースやR&Bをやろうと思ったことはなく、古い音楽のエッセンスを現代のアイディアや機材を使って時代をクロスするように心がけていた"とおっしゃっていましたよね。今もその精神は息づいていそうですね。

そうだね、そこは変わらないよ。あるジャンルの音楽を作ろうとすることはまずないし、アイディアとしてあったとしても、レコーディングの中で他のジャンルのスタイルを試したくなったりもする。ガレージ・パンクのようなサウンドを作ろうと思っていても、THE WAILERSみたいなレゲエ・スタイルでこれを演奏したらどうなるかを試してみたくなったりね。そうやって、他のジャンルに変化していくんだ。俺たちは本当に幅広い音楽を聴くし、好きなアーティストがたくさんいる。それをすべて要素として消化しているし、今でも常に自分たちが知らない50~70年代の音楽やアーティストを見つけることを意識している。何かいいものを見つけると、バンド内でシェアするようにしているんだよ。

-なるほど。あなたたちの音楽は、H&MのCMやクエンティン・タランティーノ監督の新作映画"ヘイトフル・エイト"の予告編映像に起用されたりと、映像作品との親和性の高さも大きな強みですよね。楽曲制作の際に、何か具体的な映像をイメージしたり、映像作品をモチーフとして活用することはあるのでしょうか?

"スパゲッティ・ウエスタン"(※イタリア製西部劇)に影響は受けているけど、具体的なものは特にはないよ。映像とは関係なく、今作のテーマは一般的なことで、傷ついたり、困難に立ち向かわなければいけない状況を経験しながらも、それを経て、平穏、希望が見えてくるっていうようなことがテーマだね。

-余談ではありますが......みなさんは映画好きでも知られていますが、タランティーノ監督の作品でお気に入りの映画はありますか?

やっぱり"パルプ・フィクション"(1994年公開)かな。あの映画内の対話のすべてがクレイジーだし、サウンドトラックもクレイジー。何かを超えてるんだよね。あの映画には、愛や悲しみ、クレイジーさ、コメディを含めたすべてが存在していると思うんだ。あとは、"イングロリアス・バスターズ"(2009年公開)。理由は"パルプ・フィクション"と同じだよ。ダークな部分もありながら、それを笑うことができる。そこがいいんだ。

-映像作品に限らず、今作の制作において何かインスパイアされたものや深く影響を受けたものはありましたか?

人生そのものさ。ときに、人生は映画のようになる。ここ4年で俺たちにもいろいろなことが起きたし、その出来事に対していろいろな感情が生まれ、それを経験してきた。俺たちは自分たちの人生に影響を受けているし、ときには打ちのめされそうになるけど、俺たちは押しつぶされずに起き上がる。それがそのまま音楽に映し出されているんだよ。

-今作は、前作から大きく作風が変わったということはないものの、サウンド面は格段にアップデートされているように感じました。今作の制作にあたって、もっとも重きを置いたのはどんなことですか?

今回は、ライヴ・ショーをそのまま表現したようなサウンドをレコーディングすることにフォーカスしたんだ。それはやったことがあるようで、実は今まで試したことがないことだった。だから、レコーディングをする前に何度もリハーサルをして、曲を熟知するようにしたんだよ。レコーディングしたものをあとから大幅にプロデュースするよりも、なるべくそのまま活かす方により重点を置いたんだよ。

-前作は"B級ホラー"がテーマとなった作品でしたよね。今作も統一感のある作品に仕上がっていますが、テーマ性というところでは何か具体的に意識したことはありますか?

俺たちの作品には、常にスパゲッティ・ウエスタンのフィーリングがある。具体的なテーマというわけではないけれど、スパゲッティ・ウエスタンに必ずヒーローと悪役が出てくるように、俺たちの音楽にも――例えばリズムの変化といった"邪魔"が入ったりするんだよ(笑)。ひと騒動あって、また平和が訪れる。前回もそうだったけど、そのあたりのフィーリングはこのアルバムにも活かされていると思うね。

-では楽曲についてですが、Track.1「Since You Been Gone」はムーディで情感溢れるサウンドで映画的とも言えそうですね。公開されているMVは、戯曲的な構成でとてもクールな映像作品だと感じました。楽曲としては歌詞でも描かれるように、別れた恋人を思う哀しい男の歌ですよね。

この曲は、害になる関係についての曲なんだ。恋愛関係や人間関係に限らず、人とドラッグの関係でもいい。自分にとって害になっているのにそれを楽しんでいて、どっぷりハマっている。それでその関係から距離を置くべきだったと気づいたときに、大きなショックを受けるんだ。すごく動揺するけど、その関係を終わらせることが必要だということはわかっている。そういう内容なんだ。