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INTERVIEW

Overseas

NOTHING BUT THIEVES

2015年10月号掲載

NOTHING BUT THIEVES

Member:Dom Craik(Gt)

Interviewer:山元 翔一

-いよいよアルバムについて質問しますね。Track.2「Ban All The Music」といったリフを主体としたパワフルな楽曲や、スタジアム・ロック然としたスケール感のあるTrack.4「Itch」、Track.9「Lover, Please Stay」やTrack.12「Tempt You (Evocatio)」といった音数を絞った繊細な楽曲など様々な楽曲が収録されていますね。多彩で何度も聴きたくなるアルバムですが、今作であなたたちは何を1番アピールしたかったのでしょうか?

そうだね......多彩な内容にするというのはもちろんあったね。このバンドを始めたときに描いた青写真は、何か独特なものをやろうということだった。そのバンドにとってうまくいくひとつの方法論にこだわりすぎると、アルバム1枚12曲だとして、似たような曲が12曲並んでしまうことになる。それはそれで素晴らしいし、バンドそれぞれのやり方があると思うけど、僕たちは常に変化し続けている、もっと聴きたいと思わせてくれるバンドが好きなんだ。同じ曲でも聴くたびに新しい発見があるようなね。そういう曲は第一印象よりもずっと深みがあったりする。NOTHING BUT THIEVESのサウンドって何だろうとみんなに思わせ続けることが、僕たちにとってはとても大切なことなんだ。僕たちも進化し続けられて、退屈しないしね。もし僕たちが10年後もこれを続けていられるくらいラッキーだったとしても飽きないだろうから。

-今作は本編に収録される12曲中6曲が既発曲ですが、作品を制作するにあたって何か明確なヴィジョンはありましたか?

EP『Graveyard Whistling』はNOTHING BUT THIEVESのサウンドを紹介するような形で出したんだ。初めて自分たちで曲を書いてレコーディングしたんだ。その出来に満足できたからリリースしたんだ。その時点にたどり着くまでに2年間曲作りをしていたから、結構時間がかかっている。まず曲の書き方を学ぶのがチャレンジだったし、2つ目にはサウンドの作り方を学ぶのも大変なことだったからね。自然にできることじゃないから、努力しないとできないんだ。そうやってできたEPだから、アルバムに最高の形で影響を与えているのは間違いないね。そこが基盤となってスタートできたから。最初のEPはご存知の通り「Graveyard Whistling」(Track.6)、「Emergency」(※今作未収録楽曲)、「Itch」、「Last Orders」(※今作未収録楽曲)が入っていた。「Last Orders」みたいなゆったりした曲があるかと思えば「Itch」みたいにアグレッシヴでアップ・テンポな曲もある。リフも強いしね。かと思えば「Graveyard Whistling」と「Emergency」はもっと優美で空気感がある。そんな感じで、最初に出したEP自体多様な内容だったんだ。それがアルバム作りの際に大きな基盤になったのはたしかだね。最初に作った作品の延長線上にあるのが今のアルバムなんだ。

-様々なテイストの楽曲が収録されていますが、ある種のまとまりは感じられますね。今作全体を通して共通するフィーリングや精神などはありますか?

今"cohesiveness(=まとまり)"って言葉使ったの、いいね。辞書引いたでしょ?(笑)

-言葉選びが間違ってましたかね。"unity(=一体感)"ですとか......

いや、"cohesiveness"でいいと思うよ。パーフェクトだよ(笑)! まず間違いなく言えるのは、歌詞的には全体をまとめる一本筋みたいなのが通っているということだね。といっても歌詞について語るのは、実はあまり好きじゃないんだ、聴く人それぞれの解釈に委ねたいって意図があるから。ただ、社会的な問題や、みんなが身近に感じられることを題材にしていることは言える。それからConorの声がとにかく個性的だから、全体をまとめてくれているというのが大きいね。あとは、バンドに5人いたら、そのうちの誰が欠けても違う音になるものだと思う。ひとりを抜き出して代わりの人を入れて、その代わりの人が抜けた人とまったく同じ演奏をしたとしても、どうしても同じ音にはならないんだ。NOTHING BUT THIEVESはこの5人が楽器を使って、自分たちで書いた曲を演奏しているからこそ出せる音を出しているんだと思うね。

-日本でもサブスクリプション型のサービスが始まり、楽曲単位で音楽を楽しむリスナーが増えつつあります。そういったリスナーに向けて、NOTHING BUT THIEVESの魅力が1番伝わると思う楽曲をあえて1曲だけ選ぶとしたら?

いい質問だね!と言いつつ、ひとつの曲で全部を要約するのはとても難しいけど、アルバムのTrack.1「Excuse Me」という曲があるんだ。僕たちが初めて書いた曲でね。EPを出す前の話だよ。書いてみて満足できた初めての曲なんだ。作りたいと思った理想の形でできた初めての曲。デモ音源の時点で、今アルバムに入っているのとほとんど違いはないんだ。「Excuse Me」はすぐに特定のムードを掴んで、最初の10秒を聴いたら独特の世界に行けるんだ。それってとても大切なことだよね。感情に訴えるものがないといけないわけだから。それがあれば、その曲の世界にグッと入り込むことができる。「Excuse Me」には僕たちが大切にしているダイナミクスもあるんだ。ハードとソフトの落差だけじゃなくて、ダークとライトの落差もある。僕たちはコントラストがあるのが好きだからね。ムーディなヴァースでテンションを徐々に上げていって、コーラスで大胆に解き放たれる。リフにはLED ZEPPELINとかそういうバンドの影響が見られる。そんな感じで、アルバムを最善の形で体現している曲だと思うんだよね。アルバム全体のムードを1曲で表しているというには1番相応しい曲だと思うよ。

-たしかにこの曲の流れを聴いていると、もっと聴きたくなりますよね。この曲を買ったファンはもう1曲、いやもっと買おうと思うのではないでしょうか。

そんなふうに言ってもらえて嬉しいよ。ありがとう!

-では、1stアルバムですでにしっかりした音楽性を確立しているNOTHING BUT THIEVESですが、最後にあなたたちの当面の目標と、このバンドで成し遂げたい野望について教えてください。

今、もっと若いころに客として行っていた会場で自分たちがプレイしているんだ。素晴らしいことだよね。今は観客側じゃなくてステージに立っているんだから! 今は僕たちの中にちょっとしたチェック・リストみたいなのがあって、"よしここはプレイしたぞ、今度は僕たちがビッグなバンドを見てきたエレクトリック・ボールルームでやれるようになりたい""ブッシュ・ホールでやりたい、ラウンドハウス(※すべてロンドンのクラブ)でやりたい"なんて考えているんだ。自分たちが大好きな曲作りを続けていけて、みんなにも引き続き楽しんでもらえて、僕たちのライヴを観たいとも思ってもらえれば、嬉しいなんてもんじゃないよね。来年もビッグなフェスに出たいし、また世界を旅したいと思うよ。みんなに僕たちの音楽を聴いてもらう機会を提供していけたらいいね。それで気に入ってもらえなかったら、それはそれでいいけど、その機会さえあれば素晴らしいことだと思う。

-アルバムも出ることですし、また日本にも来てもらいたいですね。

僕たちも同じ気持ちだよ! 来年くらいに行ければ嬉しいけどね。

-ありがとうございました! ぜひ再来日が実現することを願っています。

こちらこそ、楽しかったよ。それに、いろいろ嬉しいことを言ってくれて本当にありがとう! みんな、近いうちに会おう!