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INTERVIEW

Japanese

キミトサイン

2015年10月号掲載

キミトサイン

Member:白石 ひでのり(Vo/Gt)

Interviewer:沖 さやこ

ソロ・ミュージシャンとして、そして4人組バンド、ニッポリヒトで活動してきた白石ひでのりが中心となり結成されたキミトサインが、2ndシングル『覚醒ミライ』を前作に続き愛媛のインディーズ・レーベル"MAD MAGAZINE RECORDS"からリリースする。白石が作詞作曲を手掛けた全4曲は、愛媛のご当地アイドルである"ひめキュンフルーツ缶"の同名シングルと、同じ楽曲を収録したという前代未聞のコラボレーション展開だ。その楽曲にはその当時その当時の白石の姿が刻み込まれ、このシングルは彼の5年間の軌跡とも言うべき作品になった。

-キミトサインは2012年10月に結成。白石さんはニッポリヒト(※ジャパハリネットの鹿島公行が中心となり結成したバンド)の一員としてもソロとしても活動されていましたが、またバンドを選んだ理由とは?

ニッポリヒトを組んで上京して3年活動して解散することになって。そのときに音楽を続けるのかやめるのか、半年くらい悩んでたんです。でもやっぱり歌いたいな......と思ったんですよね。ニッポリヒトはリーダーが作詞作曲をしていたので、僕はヴォーカルとして頑張っていたんですけど、バンドでソングライターをすることに挑戦してないなと思ったんですよね。だから"歌とソングライティングの両方に挑戦しよう"と思って組んだのがキミトサインなんです。ニッポリヒトの前はずっと弾き語りをやっていたんですけど、バンドを始めたらバンドの素晴らしさをすごく感じて。ソロや弾き語りはいつでもできるし、ニッポリヒトのギター(林大輔)も一緒にやると言ってくれたので、もう1回バンドでやりたいなと思ったんですよね。

-白石さんの思うバンドの良さとは?

僕が曲の大まかな部分を作るんですけど、それをスタジオに持っていって、メンバーに変えられちゃうのが楽しいんですよね。いいものになるのがすごく嬉しくて。ひとりだとそれがなかなかできないので、それがバンドの良さだと思います。現場でメンバーのみんなに"テキトーにやってみてよ"って任せて(笑)。

-キミトサインは東京で活動しつつも、レーベルが"MAD MAGAZINE RECORDS"(※愛媛県松山市のライヴハウス、松山サロンキティのレーベル)なので、地元の愛媛とは密接な関係にあると思います。

キミトサインを結成して、最初にデモCDを作ったんですよ。それをMAD MAGAZINEの伊賀社長に送ったら"うちでやるか?"と言われて。そこからですね。それから"ひめキュンフルーツ缶"のみなさんがキミトサインをカバーしてくれたりして。

-ひめキュンフルーツ缶はキミトサインだけでなくニッポリヒトの楽曲もカバーしていますよね。ご自身が歌う曲を10代を中心とした女の子たちが歌うというのは、いかがでしたか?

すごく新鮮でした。僕が作った曲も何曲か歌ってもらったんですけど、大人びた歌詞が多いので、年代によって歌詞の理解の仕方が違うと思うんですよね。純真無垢なひめキュンさんが歌うと、まっすぐ響いてきて。僕とはまったく違う理解の仕方で歌ってくれたので、ドロドロしなくていいなと思いましたね(笑)。

-はははは。白石さんはひめキュンフルーツ缶が昨年リリースしたアルバム『電撃プリンセス』に収録されている「君と描いた未来」を提供。今回のシングル『覚醒ミライ』はひめキュンフルーツ缶の同名シングルと収録曲が同じというコラボを果たしています。

「君と描いた未来」はもともとソロ用に作ってた曲で。僕は曲ができるたびに伊賀さんに送るんですけど、それで伊賀さんが"この曲、(ひめキュンフルーツ缶に)使っていいか?"と。それはひめキュンさん用に歌詞を少し変えました。今回はキミトサインの新曲を作り溜めてた中から伊賀さんが"ピンときた"と言ってくれた曲なんです。そのときに"同じ曲をひめキュンが歌ったらどう?"と提案していただいて。だからもともとコラボの話があったわけではなくて。

-そうだったんですね。キミトサインの楽曲をひめキュンが歌うというニュアンスに近く、ひめキュンとのコラボはあとからついてきたものだったと。

そうですね。だからこの4曲は、僕らのものもひめキュンさんのものも、ほとんど歌詞は同じなんです。でもアレンジはまったく違って、ひめキュンさんの方がラウドで、打ち込みも入ってるのでいろんな音が聴けると思います。構成も少しずつ違うし、Track.1「覚醒ミライ」も僕らの方がテンポが速かったりして、両方聴き比べると楽しい音源かなと思います。ひめキュンの楽曲制作やアレンジは井上(卓也)君と山下(智輝)君がしているんですけど、井上くんはニッポリヒトの初期のギタリストですごく信頼しているので、ひめキュンさんのバージョンのディレクションはおまかせでした。

-自分たちの新曲が、他アーティストの新曲にもなる。前代未聞で面白いですね。この4曲はキミトサインのシングルを作るおつもりでできた楽曲なのでしょうか?

いや、僕らは基本的に"次に何を作る"というのは決まってないので、曲ができたらひとまず伊賀さんに送るというスタイルを取っているんです。だから今回もシングル用というわけではなく、どんどん渡していたうちの4曲なんです。曲を送っていく中で伊賀さんから"こういう曲が足りないよ"とか"今の時代はこういう曲が必要なんだよ"とその都度アドバイスをいただいてるので、そのエッセンスを入れながら曲を書いていくという。僕らはバラードが多いので"アップテンポの曲を作ろうか"と言ってくれたりしますね。

-ああ、今回の4曲を聴いていて思ったんですけど、エモーショナルな楽曲も、ギター・ロック的なアプローチも、どの曲も泣いているようなイメージがあったので、4曲ともバラードを聴いているみたいだなと思ったんですよね。メロディがきれいなのも理由かもしれませんが。

あ、嬉しい。それは僕が弾き語り出身だからかもしれないです。だからアップテンポなものも頑張って作っていかないと、って(笑)。伊賀さんとは愛媛にいたころに関わったことはなかったんですけど、東京に来て、まさかMAD MAGAZINEにお世話になるとは思ってなかったんで......僕らを拾ってくれた人なんです。だからどうにかして恩返しをしたいなと思っていますね。"頑張ってるから応援したくなった"とも言ってくれたので、その気持ちにも応えたいなと思ってます。

-伊賀さんはすごく熱い方なんですね。私はキミトサインの音楽を聴いて、ものすごくまっすぐで青いと思ったんです。そういう想いが呼応してるのかもしれませんね。

僕は本当にウジウジウジウジしてるので(笑)。だから楽曲はちょっと背伸びをして、自分の指針になるようにも書いてるんです。"こうありたい"というか。結局答えはないんですけど......答えはないと言っちゃうと終わってしまうので"答えがないならどうする?"と思いながら書いてます。人に向かって"頑張れ!"とか言えるタイプじゃないから、"俺もわからないなりに頑張っていくから、一緒に頑張っていこうよ"というスタンスですね。"諦めるな"ではなくて"諦めないでいこうね、俺もわかんないけど"というか。

-そうですね。キミトサインの楽曲からは、白石さんのそういう気持ちがストレートに明確に伝わってきます。

自分の中で自分が行方不明になってしまう人が、僕だけでなく僕の周りにも多くて。僕も音楽をやっている理由は自己証明で、"なんで音楽やってるんだろう?"と思うときもあるし、苦しいことも多いんですけど......。自分のことを許してない、愛していない人はたくさんいるので"自分でいいんだよ"と言いたくて。そのことに27歳くらいのときに気づいて、まだなかなか自分に自信は持てないし、自分のことは許せないし、難しいんですけど。それをわかりやすい言葉を使いながら、伝えられたらと思いますね。