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INTERVIEW

Japanese

キミトサイン

2015年10月号掲載

キミトサイン

Member:白石 ひでのり(Vo/Gt)

Interviewer:沖 さやこ

-Track.1「覚醒ミライ」を筆頭に"未来"を歌った楽曲が多いですが、それを歌いつつも白石さんが見ているのは"今"という印象がありました。

未来とか夢とか、すごく安易な言葉なんですけど......捉え方が様々だと思うんですよね。僕の思う未来というのは、5年後10年後の話や架空の話じゃないんです。夢と未来はどちらも見えないもので幻想的で、似てると思うんですね。未来に向かう自分、夢を見続ける自分......そのプロセスが絶対大事だと思っているので、"今"が大事なんです。そこは"未来"と"夢"に騙されて欲しくない。だから"未来に騙されるな"と"未来を信じよう"が表裏一体なんですよね。僕の好きな言葉に"どの道を選ぶかではなく、選んだ道でどう生きるか"というのがあるんですけど、僕にとっては、ちゃんと未来を選んで、そこに向かってどうしたいのかが重要なんです。選んだ意志に後悔のないように生きていけ、というふうに捉えてますね。

-白石さんは先にある未来が見えているのでしょうか?

これが全然見えてなくて(笑)。

-はははは。

弱いから見ないようにしてるのかな......というのもあって、そういうことを歌詞にすることもありますね。僕は"期待"という言葉が嫌いで、"希望"という言葉が好きなんです。僕は未来を描いちゃうと"こうなったらいいな"という期待をしてしまいそうなんですよね。だから"こうしていきたい"という希望を持って未来を描いていきたいなと自分を鼓舞してますね。未来を見据えて成功してる人もいるし、いろんなタイプがいると思うんですけど、俺はそういうタイプじゃないなー......見えないながらに葛藤しながら進んでいくタイプかなと思うんですよね。僕の根底はマイナス志向のネクラなので(笑)、それを打破するために音楽をしているな......と思います。自分の曲に背中を押されることもありますね。やっぱり自分に歌ってるんだなって。

-「覚醒ミライ」はキミトサインにしてみると、パンキッシュなエモの要素も結構強くて、Track.2「ワードレス」はピアノとメロディのソフトさと歪んだギターのバランスが作る切なさが、歌詞とリンクした楽曲だと思いました。

激しい曲がとにかく少ないので(笑)。"若い子やライヴに来てる子は激しいものが聴きたい人も多いし、バラードはいっぱいあるから、アップテンポを作った方がいいんじゃないの?"と伊賀さんから言われて。僕ももっとアップテンポの楽曲をやりたいので、メンバーに"かっこいいリフ入れて!"って無茶振りをして(笑)。これは今年作った曲です。「ワードレス」は2年くらい前に作った曲なんで、歌詞も当時思っていたことなんです。2年前の等身大の僕ですね。最初はバラードだったんですけど、アップテンポにしたいなと思って。ニッポリヒト時代にバラードの曲をアップテンポにしたらすごく良くなった経験があったので、それを今回やってみました。

-メンバーさんは白石さんの気持ちを汲んで音を作っていくというスタイルですか?

実際歌詞に重きを置いてないというメンバーもいるんです。でも歌詞を考えてプレイしてくれるメンバーもいるし。でもやっぱり、全員歌やメロディを支えてくれてるとは思っているし、全員"歌"を大切にしてくれるメンバーですね。うちのドラムは歌詞をしっかり読んで"ここはこうしたらどうですか?"と提案してくれたりもします。

-Track.3「僕がぼくであること」の"僕"と"ぼく"の違いとは?

あ、これは社長が"ひらがなにした方がいいんじゃない?"って(笑)。

-あ、そうだったんですか(笑)。私は"僕"が現在の自分で、"ぼく"が根源的且つ理想の自分なのかなと思ったのですが。

......すごいなあ、そんな解釈があるのか(笑)。僕は常に行方不明なので、"自分らしく"とか"あるがままに"とか、嫌いな言葉なんです。"白石君らしくすればいい"と言われても"俺らしくって何?"と思うんですよ。でもそこから逃げたらだめなので、"自分らしく"というのは自分を認めること、自分から逃げないこと、許すことなのかな......って。だからもともと"僕がぼくである"なんてすごく嫌いな聞きたくない言葉だけど、あえて使って。だからまだ"僕はぼくになれてない"んですよね。

-そうすると現在の"僕"が現在の"ぼく"であることを証明している最中なのかもしれないですね。

自分の曲に無理矢理起承転結をつけないようにはしてるし、わかんないものはわかんないと言っているんですけど、うつぶせというか、しゃがんだままの歌詞よりは、上向いて終われるような歌詞にはしようと思っていて。だから"背伸び"なんですよね。"わかんないけど、頑張ろうよ"って。人の目を気にして流されてしまうこともあるかもしれないけど、やっぱり流されちゃだめだなと思うから"流されちゃだめじゃない?"と思いながら書いているし。聴いてくれる人にも立ち上がって欲しいんです。

-聴いてくれる人のための歌詞でもある?

いや......この年齢になって、それが結果的に人のためになったらいいな、とは少し思うんですけど、自分が音楽をやっているのはやっぱり自己証明で。それで自分を許して認めて愛すということが、人を愛することだとも思うし、人を許せる、人を大切にできることだと思うんです。葛藤した自分、醜い自分をステージや歌詞や歌に出して、裸でみんなとぶつかって――それは普段わがままになれない自分のためでもあるんです。それをみんなが何か感じ取って、みんなのためになってくれたらいいなと思いますね。

-Track.4「青の少年」はすごく吹っ切れた空気のある曲ですね。この4曲の中でいい意味でわがままが出た曲だと思いました。

これは今だから書ける曲だと思います。もやもやを最後で打ち消せたというか......。"君に逢いたい"、だからそれでいいじゃん、他は関係ないじゃん、というのを本当の意味で言えたんです。何も考えてない"関係ねえ"じゃなくて、結構いろいろあったうえでの"関係ないよね"という曲だと思います。これが1番新しい曲なんです。できたときは"きた!"と思えましたね。

-では本当に白石さんが辿ってきた人生やそのときそのとき感じた想いがそのまま楽曲や歌詞に出ているんですね。「青の少年」には白石さんが答えを出して、ひとつの到達点を迎えたという成熟もあるけれど、すごく青さもあったので、それが"僕がぼくであること"という言葉にもリンクしていくような気がしました。

曲を作った順番が「僕がぼくであること」、「ワードレス」、「覚醒ミライ」、「青の少年」なんです(笑)。この4曲でトータル3年ですね......。おまけに「僕がぼくであること」のサビはニッポリヒトのときに作ったので、5年くらい前のものなんです。1番悶々としているときで......本当に恥ずかしいですね。THE迷子です(笑)。

-はははは。そんな迷子も"覚醒"を歌うことができて、ひとつの答えを掴むことができた。でもその答えが"青の少年"というのも、1周回った感じもあって。

変わってないなとも思います(笑)。ようやくちょっと人に言葉を言えるようになったな......と思うんです。できるだけいろんな人に届いて欲しいです。曲作りは止めずにコンスタントにやっているので、楽曲は私小説みたいで恥ずかしいんですけど(笑)、それしか書けないので。キミトサインの前はずっとセルフでやっていたんですけど、今は本当にいろんな人が携わってくれているんで、今は前よりも責任感が出てきて。ツアーを通して成長していけたら......と思いますね。今の5人で長く回ることが今までなかったので、楽しみです。